売れない作家が売れる時
「売れない作家」が急に「売れる作家」になった瞬間、
という話をしてみたいと思います。
割合的には徐々に売れていく方や、あまり変動のない作家さんのほうが
多いとは思いますが、何年も作家をやってきて売れていない方が、
ある作品を境に急に売れていく時、というのは確かにあります。
例えば、ジャンルを変えた時。
これはBL作家さんなどでは結構あるので、
ご存じの方も多いかもしれませんね。
BL=ボーイズラブで力のある作家さんが、
一般文芸にいって大ヒット、というのは
少し前から一定の流れとしてありますね。
小説よりも、まずは漫画の流れが先にありましたが。
とはいえ、これはもともと力のある作家さんの話なので、
BLでもある一定の売り上げを上げている方たちになります。
全然売れない作家が大ヒットするには、
そこに「ハマった作品」というのがあります。
ハマる、というのは、「時流に乗った」ということです。
突然、作風が変わるわけではありません。
ただ、その人の作風と時流がぴたりと合った、ということです。
ビジネスでも同じかもしれませんが、売れるかどうかは、
やはり圧倒的に「時流に合うかどうか」、
「お客(読者)がいいと思うかどうか」なのです。
実力があるとか、個性がすごいとか、
世界観が誰にもまねできないとか、そういうわけではなく、
「売れる」要素というのは
最終的にはコレかなぁ~と思っています。
全然売れなくて干されていた作家さんを担当して、
バカ売れするシリーズを作ったことがあります。
なんか自慢みたいに聞こえたらすみませんが。
それ以来、各社で引っ張りだこになってしまった作家さんですが、
急に作風が変わったとか、突然すごく上手になった、
というわけではありません。
ただ、「見せ方」「売り方」を変えただけです。
もちろん、作家さんにも書き方を少し変えていただきましたが。
具体的に言うと、「売れる設定とキャラ」を、
わかりやすく打ち出し、その作家さんの個性を際立たせる、
ということをしました。
また、その作家さんが得意な「コメディ色」をより強く見せて、
タイトル、目次や章の展開にも、その色を強く打ち出しました。
あとは、表紙イラストに大人気の方を起用した、
というのも大きいかもしれません。
編集ができる限りの「その人の個性や売り」を
最大限にわかりやすく打ち出す、ということをしたので、
それが作家さんにとってもよかったのかな、と思います。
それと、作家にはある程度「私はこういう作風です」とか、
「私はこういう書き方なんです」という「自分」というものを
持っていたりするものですが、その作家さんはその時、
本当に崖っぷちだったので(笑)、なんでも編集の言う通りにした、
という面も大きいかもしれません。
「売れない作家」を「売れる作家」にすることができた、
というお話ですが、もちろん逆のようなパターンもあります。
「絶対にこの人は売れる」という作家を発掘し、
何作か出したのですが、あまりぱっとしませんでした。
「絶対に売れるはず」、その確信はあったのですが、
「私がやっているこのレーベルでは作風が合わない」
というのは、実は気付いていました。
その当時、私はフリーランスではなく、
1つの出版社でレーベルを受け持ち編集をしていたので、
レーベルとイメージが合わない、というのを解消するのは難しく、
そのままその作家さんとはお別れしました。
その後、その作家さんは別の出版社のレーベルで
大ヒットするシリーズをいくつも出すことになります。
相性というのは、やはりありますね。
それを痛感した出来事でした。
でも見る目はあったということで(笑)、
その作家さんが大ヒットを飛ばせたのは
本当によかったと思っています。
……とまぁ、売れたり売れなかったり、というのは
「時の運」「ご縁」みたいなところがあるよ、というお話でした。
さて、ご縁があればということで、
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