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沢尻エリカさんのドラマ➀

沢尻エリカさんの復帰にともなって、ドラマの再放送が始まった。


➀最初に見たのは、初主演の1リットルの涙

沢尻エリカさんの好演が話題となった。沢尻さんは、後にタイヨウのうたという難病がテーマのドラマに出演することになった時、また難病ものかと思ったと言っており、本当は難病ドラマの主演をしたくなかったのではないか。身障者の役も身障者のイメージが付くのはイヤだったろう。(身障者には悪いが健康な女の子だから仕方がない)そのことと薬物に手を染めたこととは関係あるのかもしれない。


➁ドラマの出来栄え

1リットルの涙という作品は、ドラマとしては出色の出来で、私も号泣した。その後、原作本を読み、映画のDVDも見た。感動した後、冷静になってみると、いくつか疑問点も出てきたので、それについて書いてみよう。


➂疑問点


この話は身体の自由がきかなくなる難病により、身障者となって20代でなくなった実話で、昭和末の人物の日記及び手紙とその人の母親の手記が出版され、さらに映画化やドラマ化されたものである。

ドラマには、実際には存在しなかった恋人が登場する。原作では、この登場人物は、同級生であるから、全くの架空の人物ではないが、リアルでは重要な人物ではなかった。作者の母親は娘にも恋愛をさせたかったと言っており、ドラマの製作者が母親の意向を汲んだという話が伝わっている。

だが、ドラマは他にもリアルとは異なっていて、主治医はドラマでは男性だが、原作では女性。父親はドラマでは豆腐屋で、いつも家にいるが、リアルではサラリーマンで家にいる時間は短い。

日記を読むと、父親のことは出てこない。日記は母親によって編集されたのだが、日記に父親のことが全く書かれていなかったとは思えない。

疑問点(1)なぜ母親は父親の記述を本にのせなかったのだろうか。


実際の父親は娘のお見舞いにはほとんど行っていないことが、母親の手記でわかる。母親は、そのことに不満を抱いていて、娘の本に父親を登場させなかったのかもしれない。娘の人柄を考えると、「お父さんは仕事で忙しいだろうから、お見舞いにこなくてもだいじょうぶ、お父さん、お仕事がんばってね、私もがんばるから」といった記述があったのではないか、と考えられる。

昭和の話なので、育児は母親の役目であり、この家庭は5人も子供がいたことを考慮すると、父親はそれだけ多く働いて稼がないといけなかったわけで、やむを得ないのだが、母親は、そう思っていなかったのかもしれない。この母親は働きながら、5人の子供を産み育てた人であり、自分も働きながら育児をしているのだから、夫もお見舞いくらいもう少し行って欲しかったと考えていた可能性はある。


疑問点(2)なぜ、がんばれたのか


本人は性格的にがんばるタイプだったようであるし、母親もそういう人だったとみられる。ただ母親の手記には、娘は努力すれば症状が良くなると信じていたという記述があるのだ。少なくとも初期のがんばりは良くなると信じていたことによって支えられていたという面があったのかもしれない。(もちろん、途中からは、良くならないと解っただろうが)


疑問点(3)尊厳死ではなかったのか

母親の手記には、食事ができなくなった場合、管を使うのはどうかと提案したら娘が拒否する話が出てくる。娘は衰弱と尿毒症でなくなったという情報もあるが、医師や本人、家族の間で合意の下、無理に延命しないようにしてしまった可能性もあるのではないか。




 ④障碍者施設

ドラマでは原作にある障碍者施設(原作本の言葉では障害者用の寮)に入る話は出てこない。病院に入院したままになるまでは家庭にいたことになっている。

ドラマの視聴者の反応は、温かい家庭など、周りの人々との交流の話が多いのだが、リアルでは父親はお見舞いに来ない、障碍者施設で厳しい言葉を投げつけられる(映画には出てくる)、友達は手紙しか送ってこなくなる(友達との手紙が書籍化されている)という状況で、昭和の障碍者の置かれた過酷な状況は、ドラマには描かれていない。



⑤テーマ


1リットルの涙という言葉は進学校から養護学校への転校が決まった時に出てくる。進学校と養護学校との落差は大きく、作者のショックが相当なものだったことが、この表現から察せられるのだが、ドラマでは、主人公はバスケットボールもしており、リアルでスポーツが苦手だった話が出てこない。勉強は得意でも運動は苦手だったことにすると、広く共感や同情が得られないと考えて、設定を変えたのであろう。


本は生前に出版されており、作者が早世することはテーマとなっていない。テーマは、普通以上の能力のあった人が普通のこともできなくなってしまうことにあったのだが、ドラマではテーマが違ってしまっている。



⑤現実と感動


本や映画はリアルを反映しているが、ドラマはフィクションの要素が強い。にもかかわらず、ドラマの方がファンが多いことで、現実を知るより感動したい人が多いことがわかる。

ドラマによって、病気や書籍が知られたのは良かったと思うが、世の中には泣きたい人や感動したい人が多く、現実を知りたい人は少ないことを改めて確認した次第である。  

否定的なことを書いてしまったが、原作の本、映画、ドラマとも良作なので、オススメの作品である。


お読みいただき、ありがとうございました


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