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参議院一票の格差、最高裁判決

昨年の参議院議員選挙に対する弁護士グループの訴訟に関し、最高裁の判決が下された。 


①なぜ合憲判決 


高裁は違憲状態の判決が8件、違憲が1件、合憲が7件で、合憲判決は少数だった。したがって、最高裁は逆転判決を下したということができる。


 参議院の一票の格差判決で逆転判決は珍しいことなのであるが、意外な印象は受けなかった。

  意外でなかった理由
(1)昨年の参議院議員選挙で格差是正の努力を少しだが、している
 僅か1箇所(埼玉選挙区)ではあるが、定数を増やして、格差が大きくならないようにした。

(2)前々回の判決では、最大格差が3.08倍で合憲判断だったが、今回は3.03倍だった

3回連続で合憲判断

次の参議院議員選挙の際、定数是正の努力を何も行なわないなら、違憲状態判決もあり得るだろう。だが、これまで参議院議員選挙については、最高裁の合憲判断が出てしまうと国会は、何もしなかったのである。次の選挙まで何もしないことは十分、予想される(すでに選挙制度改革協議会で話し合ったが結論が出なかった)ので、違憲状態判決が出るかもしれない。

②格差の大きな選挙区

これは2019年、現在は、格差が拡大

宮城や新潟は人口が200万台なのに、定数是正で2人を1人区にしたため、格差が大きな選挙区となった。いずれも人口減少地域なので、このまま放置すると、神奈川、東京の方が格差が大きくなる。そうなってから定数是正をするとよいかもしれない。宮城は参議院設立時には1人区で、その後、2人区となり、再び1人区に戻した。また2人区に戻すのも少しおかしい。


③海外との比較

(1)イタリア

選挙制度が日本と似た国をG7から探すとイタリアということになる。イタリアは上院下院とも小選挙区比例代表並立制なので、日本と似ている。ただ1票制で日本のように2票投票できない点は異なっている。イタリアも連邦制国家でなく、そのこともあって、上院は地域代表でない。一票の格差は2倍台で日本より小さい。イタリアは連邦制ではないが、県の上に州が置かれていて、州ごとに選挙を行っている。日本も格差を是正するには、都道府県単位より上位の単位で選挙をした方がよい。ただ衆議院でブロック単位の比例区選挙が実施されているため、重複を避ける工夫は必要だろう。

(2)フランス

フランスも連邦制でないが、憲法の規定により地域代表になっている。フランスの場合は、地方議員と下院議員の間接選挙が行われており、地方議員や選挙区の小さい下院議員が投票することで、上院は地域代表だということにしているらしい。下院議員は全国の代表の筈なので、下院議員が投票するのは変だと思うが、そういうことになっている。

だが、日本で間接選挙を実施するのは困難だろう。それには憲法改正が必要と見られ、まず成立しそうにない。イタリアでも上院の直接選挙を廃止する改憲をしようとしたが、国民投票で否決された。 


日本は、今のところ、制度の抜本改革は困難であり、最高裁が厳しい判決を出して、国会が改革に取り組まざるを得ないようにするしかない。現在の議員は、現在の制度で当選しているので、自主的に制度改革に取り組むことは期待できない。

お読みいただき、ありがとうございました。


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