「わたしだってHしたいです」

と、母が書いた文章を見つけたことがある。

199X年、私は中学生。
いつものようにピアノの練習をしようと、
居間で準備をはじめた。

そこで見つけたのは、
私の学校便りの裏にぎっしりと書かれた、
父へ当てた母からの手紙。

「わたしだってHしたいです」

「まるで、 自分に自信がありません……」

細かな内容は忘れてしまったが、
自分優先、自己中心的な父へあてた、
母の心の叫びだった。

「えええ？？？？？」

14歳くらいの私には結構な衝撃だった。

いつから？

てか、妹も一緒に寝てるのに
どこでする気？

お父さんは見たのかな？

夫婦仲やっぱり悪いんだな？

そもそも、
こんな子どもが見るところに
置くんじゃねぇ…

色々考えたが、
まだ小さな弟や妹の目につかないような
(でも必ず父が見るような)
ところに、そっと置いた。

その後、手紙がどうなったかはわからない。
気づいたら無くなってしまった。

あの叫びは、
くしゃくしゃにされて
捨てられてしまったんだろうか？

母の想いが実らなかったのは
その後の両親の様子から見てとれるけど。

「親だって人の子」

これを強く意識したのは、母の手紙だった。