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電灯の先っちょ

一人暮らしにあたり、
様々な物件を拝見したわけだが、
フッと心をくすぐられる瞬間がある。

電灯からつるんとぶら下がった紐、
あるいは
紐の先に取り付けられたパーツである。

ある時は
クネクネと紐先がゆがみ、
ある時は
先っぽだけクルクルと不器用に丸められ、
ある時は
きちっと付属パーツに収まり、
ある時は
もう10cmほど延長コードが取り付けられている。

そこで私は、
否応がなく想像してしまうのだ。

あぁ、
この部屋に寝そべりながら、
頑張って紐を強く引っ張っていたから
コードが歪んでしまったのかしら

とか、

面倒くさがりな人、あるいは
腰の悪いおじいさん、おばあさんだったから
毎回の動作が辛くて
紐を長くしたのかしら、

など。

前の居住者の生活感、
そこに暮らしていた痕跡なんて
ちゃんと探せばいくらでも見つかるが、

電灯の紐ほど
その人の暮らしを顕著に表しているものはないと思う。

私の部屋?

びっくりしてはいけない、
私が選んだアパートの
電灯の先っちょには、
細い三角形のクリップが付いている。

そうして今夜も、
わたしはベッドに横たわり、天井を見上げ、
前住居者の小さな存在感を感じて
床につくのだった。

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