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辿れども、辿れども(死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相/ドニ―・アイカー)

1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で起きた遭難事故。
登山チーム9名はテントから1キロ半も離れた場所で、
この世のものとは思えない凄惨な死に様で発見された。
(中略)
最終報告書は「未知の不可抗力によって」死亡と語るのみ――。

――あらすじより引用

”ディアトロフ峠事件”をご存知だろうか。


『死に山』のサブタイトル通り、氷点下の雪山で起こった”世界一不気味な遭難事故”である。


「不気味である」と称されているのは、主に以下の点である。

・衣服をろくにまとっていない(共通点①)
・靴を履いていない(共通点②)
・着衣から異常な濃度の放射線が検出される(共通点③)
・メンバー中3名は、頭蓋骨折などの重傷を負っている
・メンバー中1名は、舌を喪失している

「事実は小説より奇なり」と言われるが、この事故はその一つだろう。


そして、その「奇なり」の真相を解明しようと試みたのが『死に山』の著者ドニー・アイカーだ。


”ディアトロフ峠事件”の真相は、先に述べた「不気味である」点および「未知の不可抗力によって死亡」と事件の捜査を打ち切った点から、事件発生から50年以上経過した現在でも、多くの憶測がまるでハエのように湧き出ている。


しかし、ドニー・アイカーは長年”ディアトロフ峠事件”を調査している人物(および信頼における人物)を訪ねたり、危険を顧みず事件発生現場を訪れたり、そこで立てた仮説を専門機関に検証を依頼したりしている。彼は、あくまで客観的にこの事件を捉えようとした。


政府の陰謀、武装集団による襲撃、はたまたエイリアンによるもの……。”世界一不気味な遭難事故”にふさわしい根も葉もない説には目もくれず、彼は愚直なまでに真相を追いかけた。


もちろん、事件の目撃者が存在しない限り、真相が解明されることは永久にない。しかしドニー・アイカーは調査の末、有力な説を立てることに成功した。


(ちなみに、”ディアトロフ峠事件”の最新情報によると、「被害者らは雪崩によって死亡した」とロシア検察当局は発表しているが、本書では事件現場で雪崩が生じる可能性はほぼ皆無であると言及されている。)

「あなたが本当にやろうとしていたのは、目撃者のいない悲劇的な事件を、リバースエンジニアリングによって再現することだったんですね」

――p305より引用

その有力な説については、本書を最初から読み進めることで辿り着いてほしい。


もちろん、Wikipedia等で結論にショートカットすることは可能だが、ドニー・アイカー、そしてその協力者達の事件に対する熱量を確かめてほしいと思う。

12/23更新

死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相/ドニ―・アイカー(翻訳:安原 和見)(2018年)

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