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突然、勢いよく流れるものだから、

契約をしてきた。


新しい住まいの。


初期費用も支払った。


あとは、引っ越しの何日か前に、鍵をもらったり、大家から説明を受けたりするだけ。


今のアパートの退去とか、やらないといけないことは、まだあるけど。とにかく、大きなことが一つ終わった。


「大家さん、いい人ですよ」

「そうなんですね」

「お隣さんは、まあ、そんなに悪い人じゃないですよ」

「……」


という、一抹の不安が残るやりとりはあったものの、とにかく終わった。


帰りに、リサイクルショップに寄ると、手ごろなダイニングテーブルを見つけたので、購入する。


(できれば引っ越し後がいいけど、店が店なので、目ぼしいものはすぐになくなる。)


後日、処分予定のものが部屋からなくなってから、取りに行くことにする。


しばらく行っていなかった喫茶にも寄る。豆乳プリンを食べたパートナーは、とても幸せそうだった。


夕食は、パートナーが肉じゃがを作ってくれるというので、お言葉に甘えることにした。その間、ぼくは珈琲の生豆の選り分けをした。


夕食中、もろもろ話し合い、本の残り半分も、貸し倉庫に送ってしまうことにする。(すでに、保管している分もある。)ぼくらは、あまり体力がない。


義母の助言で、冷蔵庫と洗濯機だけは、業者に頼ることにする。


こんなところだろうか。これで、自分達だけで進める引っ越しは、多少は楽になるだろうか。楽な引っ越しはないことを前提として。


パートナーが先に風呂に入って、ひとりになったぼくは、しばらくぼんやりしていた。


あんなに、さっさと引っ越ししてしまいたいと、思っていたのに。


いや、今もそれは変わっていないのだけど。同時に、時間が次々に過ぎていくことに、恐れをなしている。


少しずつ進めていたことが、ここに来て、勢いづいてしまって(日にちが近付いてきたから、当然なのだけど)少し怖いのかもしれない。


まあ、順序立ててやるしかない。この、6年は住んだアパートから離れるために。


パートナーが来てから、いい思い出はある。でも、ここは、ぼくが散々苦しんできた場所でもある。苦しみも、憎しみも、染み付いている。


もう嫌だ。


睡眠薬と、頓服の抗不安薬を飲む。


ここまでしないと、不安が強いぼくは眠れない。


新しい住まいに落ち着いたら、楽になれるだろうか。


とにかく、一つ一つこなしていくしかない。


それだけだ。

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