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ぼくの足元は、水に浸かったまま

爪先に、触れる感触。


水に。


水中の線路に。


知っている感触は、しっかり脳に根付いているらしい。


夢の話。


少し前から、目が覚めてからも、感触がしっかり残っている夢を見る。


よく眠ってはいる、と思う。新しい家に住み始めてから、中途覚醒は減った。寝つきもよくなった。


現実で実際に触れたようなそれは、たぶん、眠りが浅いときだから、目が覚める寸前、なのだと思う。


(現実の5分が、夢の中では1時間だと体感することがある。らしい。)


それはさておき、そんなに、悪い夢じゃなかったな。


引っ越してから、さんざんなことが続いていたけど。


ようやく落ち着いて、夢も落ち着いたものになったのかもしれない。


以前住んでいたところから、何kmも離れていないけど。


ここは静かで、住宅は少し混み入っていて、あと、「ぼくを生んだ人達」は、この場所を知らない。引っ越したことすら。(義理の両親が、知らせていなければ。)


昨日は、県外まで(といっても、車で30分くらい)出かけた。パートナーと一緒に。


行ったことのない場所へ行った。


何度も行ったことのある場所へ行った。


はじめて会った人がいた。


何度も会った人もいた。


本をたくさん抱え込んで、帰ってきた。


自宅はまだ、慣れ親しんだ場所じゃない。


でも、よく眠れる。


ここから、バスで20分くらい揺られれば、少し前まで住んでいたアパートの近くまで行ける。


それほどの距離なのに、ここにいると、まったく違う世界に来たように感じる。


物理的な距離と、精神的な距離の、大きな開き。


荷ほどきが終わっていないこともあって、ほとんど家にいるから、まだ周辺の散策はできていない。


周りのことが、もっとわかるようになったら、この家をいとおしいと思えるようになるだろうか。


数日前に、珈琲豆の焙煎をした。


つまり、焙煎できる環境が整った。


昨日は、カラーボックスを追加して、珈琲を淹れるための器具を並べた。


これで、珈琲にまつわるものは、大体整った。


まだ、段ボール箱から取り出せていないものの方が、多すぎるけど。


でも、見慣れたもので、視界が埋まるのは、安心する。


今日は、一人で外へ出る。


一人で、見慣れた場所へ。


まあ、ボランティアだ。月に何度か参加している。引っ越してからは、はじめてだ。そういえば、利用者情報を変更しないといけない。住所を。


ほんの少しでも、色んな場所が遠くなったことに、寂しさを覚えている。


この寂しさにも、その内慣れるのかな。


ぼくの足元は、まだ水に浸かっている。

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