見出し画像

よくわからないけど、苦しいこともある。(今朝は、白湯)

なぜか、息が苦しかった。息も絶え絶え。というほどじゃないけど。冷えた空気のせいなのか。そこまで寒い気はしないんだけど。

――おはよう。

――おはよう、アルネ。

――今朝は、苦しそうね。

――なんでだろうね。

――なにかあったの?

――驚くことに、なにもない。

――起きたばかりで、体がびっくりしてるのかしら?

――そんなことある?

――少なくとも、君は。

――……まあ、起きれないほどじゃないよ。……うん、大丈夫。

――君の「大丈夫」は、大丈夫じゃないのよ。

――三桁は聞いたよ。……今朝はなにがいい?

――白湯。

――白湯でいいの?

――君、いつも飲んでるじゃない。

――まあ、そうだけど。

――あと、体を温めなさい。

――お気遣い、どうもありがとう。

ポットに水を注いで、火にかける。まあ、電子レンジでもできるけど。せっかくだから。それに、こっちの方がおいしいし。むらなく、温かく仕上がる。たぶん、今のぼくに必要なもの。

――はい、どうぞ。

――……うん、おいしいね。

――うん……うん。

――白湯がおいしいのは、いいことなんだよ。

――あー……なんだっけ。体の不調がわかるとか?

――まあ、そんな感じ。君は、おいしい?

――おいしいけど……なんか、いつもより鉄っぽい気がする。

――よくないわ。

――よくないんだ。なんだろ、貧血なのかな。

――そこまでは、わからないけど。

――……。

――でも、不調なんでしょ。苦しそうだもの。

――まあ、うん。貧血なのは、いつものことだけど。それとは、別のことなのかな。

――心当たりは?

――ない……とは言いきれないけど。でも、ないよ。もしくは、ありすぎて見当もつかない。

――君は、きっと後者ね。

――ぐうの音も出ない。

――疲れてるんじゃないの。

――んん、まあ、疲れてるよいつも。

――疲れてるのに、ごはんちゃんと食べないから。

――食べてるよ最近は……たぶん。

――食べてる人は、貧血にならないよ。

――人による……と言いたいところだけど、まあ、ぼくはそうです。はい。

――今日は、眠ったらどう?

――眠ったら眠ったで、疲れるんだよな。なぜか。

――安らぎのための睡眠じゃないの?

――そうであってほしかった。

――じゃあ、

――何?

――次は、コーヒーを淹れて。

――まだ飲むの?

――白湯は、温まるためだもの。……苦しさはどう?

――……さっきよりは。

――じゃあ、淹れてくれる?

――はいはい。

喋っている方が、苦しいはずだけど。まあ、相手はアルネだから。落ち着くこともあるんだろう。ぼくは礼の意味も込めて、コーヒー豆を挽き始めた。

この記事が参加している募集

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 「サポートしたい」と思っていただけたら、うれしいです。 いただいたサポートは、サンプルロースター(焙煎機)の購入資金に充てる予定です。