ぼくの1日は、伸び縮みする
強風だった。
らしい。
注意報が出ていた。
らしい。
この辺りは、常に強風なので、よくわからない。
風が強いと、安心する。
他には、何も聞こえなくて。
誰かが来るはずもなくて。
守られているみたいで。
寝不足だったせいかもしれない。
過食、までは言わないけれど、少々胃につめ込みすぎた。おおよそ、朝食にふさわしくない菓子とか。気持ち悪くなるまで。
まだ12時を回っていないか、もしくは、いたのか。ぼくは眠った。
夢を見たかどうか、覚えていない。見たんだろうとは、思うけど。
目を覚ますと、蒸し暑くて、気持ち悪さが戻っていた。
強風とはいえ、少しだけ窓を開ける。水を飲む。
頭が、ふらふらしている。15時を過ぎていた。
1階に下りると、生豆(珈琲)を選り分ける準備が整っていた。
一眠りする前に、ぼくがしておいたのだけど、まだ覚醒しきっていないのか、少し驚く。
水分を過剰なくらい摂りながら、手を動かす。
集中するから、より頭がふらふらする。
小さなプリンを食べて、残りを片付ける。
長すぎた昼寝から覚めたとき特有のだるさを、足に感じる。
ローソンまで、無印良品のコットンを買いに行く。
途中で、雨がぱらつく。
帰ってきて、窓際に干してある洗濯物が目にする。
朝、ぼくが干したもの……。
そんなこと、したっけ。
ぼくの1日は、長くなったり短くなったりする。
伸び縮みする生活の中で、ぼくはより、色んなことを忘れやすくなる。
薬の副作用も、あるとはいえ。だんだん忘れていって、あとには何が残るんだろう。
日が暮れても、蒸し暑さが居残っていた。ので、クーラーを点けてみる。
低すぎない温度設定でも、結構冷たく、寒暖差で、咳が止まらなくなる。
すぐに消すと、つかのまの涼しさもすぐに失われ、咳だけがなかなか止まない。
暗くなってから、引っ越してからはじめて、蝋燭に火を点けた。
カーテンを閉めているとはいえ、以前住んでいた場所より、周辺の明かりが少ない。ので、小さな火が、より大きく見える、気がする。
咳をするときに、顔をそらしても、火は少しだけ揺らぐ。
30分くらいで溶けきる、短い蝋燭。
新しい棚。
買いおきの蝋燭。
新旧が混ざる、家の中。
同じ音楽ばかり、流れている。
ぼくは、この家になじんだのだろうか。
わからない。
わからないけど。
今日は、外へ出る。
雨さえ降らなければ。
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