なぜか、近ごろふいに思い出すものがある。
レンジでチンしたフォンダンショコラ。
たしか、祖母の葬儀だった。
(もしくは、祖父だったのかもしれない。)
葬儀場で、火葬が終わるのを待っている間。
たしか、仕出しの弁当が用意される前。
ロビー? でソファに体を沈ませているところに。
「なにか食べる?」と言われた。
(だれに言われたのかは、覚えているけど、忘れたことにしている。)
こういうところのメニューは、割高だ。
ぼくは、フォンダンショコラにした。
フォークを入れなくても、それが既製品であることは、なんとなくわかった。
(だれもが利用するわけじゃないそこに、一から手作りしたものがあるはずがない。)
レンジを使ったにしても熱すぎて、食感もぽそぽそして、おいしくなかった。
のを、ずっと忘れていたのに、ここしばらく、ときどき思い出すのだった。
アルネも、小さく首をかしげた。
ぼくにしか見えない、ぼくだけの女の子。