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狂いそうな朝の話

(夕)食後薬を、飲み忘れた。


そのことに気付いたのは、朝になってからだった。


ぼくは、朝の内に、その日飲む薬を用意する。だから、気付けた。


食前薬は飲んだ。


睡眠薬も飲んだ。


食後薬も、飲んだつもりだった。


飲み忘れ、という事実は、思うよりぼくを苛んでいった。


夕食後の薬は、ぼくが服用している薬の中でも、治療で重要なものが集まっている。


1日も欠かさない方がいい、という薬もあったのに。


飲み忘れ分を、今すぐ飲んだ方がいいのか、夜まで待った方がいいのか、ぼくにはわからなかった。


確認しないと、早く。


薬局の開店時間は、9時。


ぼくは、じっと待った。


時間になって、電話をした。


担当の薬剤師がいなかった。


他の薬剤師でもよかったんだろうけど、そのときのぼくは、適当な言葉を投げかけられたら、爆発してしまいそうだった。


20分後に出勤してくるというので、それまで待った。そして、また電話をかけた。


結論は、担当医に訊いた方がいい、だった。


飲み忘れの扱いは、医師によって違うから、と。


ぼくは、電話を切るまでに、落胆を隠せなかった。


すぐに、クリニックの方に電話をした。


本当は、あまりしたくない。昔、色々あったから。受診予約も、いつもパートナーに任せている。


でも、不安には勝てない。受付の看護師は、担当医に確認したら、また折り返し連絡するとのことだった。


クリニックは開いたばかりだったから、すぐに連絡が来るとは思っていなかった。


ぼくはもう、確認なんてどうでもよくなった。限界だった。


ネットで、少し調べてみた。


JA(なんでJA?)のサイトで、8時間以上間が空いていれば問題ない、という記述があった。


どうせ、次に飲むのは、夜遅くになる。8時間どころか、10時間以上は空く。


ぼくは、折り返しを待たずに、飲んだ。


その後、さらに10分か15分後に、クリニックから連絡が来た。


担当医じゃなく、看護師だった。朝は飲まずに、夜まで待つように、という指示だった。


ぼくは、


ありがとうございます、遅すぎるので、もう飲みました、と言っておいてください。


そう、吐き捨てるように言って、電話を切った。


電話口の看護師が、え、と言ったのが聞こえた。


もう、どうでもよかった。


どうせ、なにがあっても、自己責任だ。


ぼくの頭が、おかしいことに、変わりはないんだから。


やっと一段落ついて、朝食を食べる気になった。


ベーコンエッグトーストにしようと思ったけど、ベーコンが切れていた。
代わりに、ウィンナーを使った。


食パンは、最後の1枚だった。


おいしかった。

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