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現実をぼかす、薬の効能

日記なのに、日記らしいことを書いていない。今まで、書いたことがあったんだろうか。この日記は、朝起きたときに書いている。日記らしくするなら、昨日について書けばいい。でも、ぼくにはそれができない。半日前のことも、なかなか思い出せないぼくだ。それに思い出しても、それが本当に起こった出来事なのか自信がない。ぼくの記憶は、夢と混ざることがある。


日々は、同じことのくり返し。と感じるのは、ぼくが忘れやすいから? 何をしてもすぐに忘れて、また同じことをくり返してしまうから? 忘れやすいなら、くり返していること自体、忘れているはずなんだけど。よくわからない。ぼくは、頭の調子が悪い。薬のせい? それとも、元から? それを考えると、悲しくなる。


ぼくの頭はおかしい。のは、再三言われていることなので、もはやどうでもいいんだけど。こんなにも忘れやすいのは、薬のせいだ。少しずつ減らしているのに。完全に飲むのを止めないと、だめなんだろうか。それは、いつになるんだろうか。大丈夫だ。通院の頻度も減ったし、その度に薬も。だから。ぼくはぼくを安心させようとする。


わけもなく寂しくなる。誰かとわかりあえることは、一生ないこと。親しい人はいるけど、わかりあえることを前提として付き合っていない。「私はあなたのことを理解している」「あなたとなら、わかりあえる気がする」そんな人達を、ぼくは軒並み嫌いになった。わかりあえる? わざわざことばにする人とは、わかりあえるはずがないよ。今まで、どれだけ騙されたことか。もう止めてほしい。寂しさが募るだけだから。


頭が悪くて、他人が嫌いで、一人が好きで、なのに寂しがり。バカみたいだ。薬は、そんな現実もぼかしてくれる。些細なことも覚えていられなくなる。そんな条件と引き換えに。薬を飲まなくなれば、否応なしに現実と向き合うことになる。そのとき、ぼくはどうなるんだろう。


数年前、薬を飲んでいなかった当時に、誰も味方がおらず孤軍奮闘していた時期に、戻ってしまうんだろうか。いや、いや。あの頃から、ずいぶん環境は変わったんだ。そんなはずはない。でも。何もかもあいまいにしていたことで、生きていけたぼく。ピントのずれた世界が、明瞭になったとき。ぼくは。

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