【本23】企業参謀②

「制約条件に制約されるな」
理想的な姿を共通の認識事項とする。
できないことを考えるよりも、どんな可能性が考えられるか、を考える。

評論家的にならない。
本質的問題解決のプロセスに沿って、問題点をしぼっていく。
日々の仕事の中でも、とても役に立つ考え方です。

☆本の内容☆

○製品・市場戦略

どんな会社にとっても多角化は、ほかの3つの象限での可能性を究極的に追求し、それでもなお、企業目的からの、どうしても多角化しなければならないというニーズがある場合にのみ行うべき非常に高投資・高リスクの製品・市場であることを知るべき。
*製品・市場戦略の策定には、7つのステップを踏むのが賢明。
ステップ1  市場性の動的把握
市場のサイズと成長性を知ること。
ユーザーの購買動機調査を行い、当該製品の購入に際して並列的に考えたもの(代替品たりうるもの)を合わせ考える。
自社製品を購入する決定的要因を分析し、この要因に影響を及ぼすような販売方法や製品開発をしなくてはならない。
この場合には同業他社は競争相手ではないことだってありうる。
第1ステップでは市場の動向を総括的に知り、かつ注目すべき傾向を抽出する。
ステップ2  内部経済の分析
内部経済=会社の内部における当該製品の持つ経済的重要性の分析。
具体的に用いられる尺度は、プロセス産業、単一製品、多数製品などによって異なる。
(例)5つの型式を有するひとつの製品系列についてのいくつかの分析例。
①売上高
②全社にしめる割合
③限界利益
④型式別限界利益
⑤損益分岐点
⑥ROCEに対する感度
⑦付加価値
⑧ボトルネック解消の損得

①〜④これらそれぞれについて絶対値および傾向値が「なぜそうなるのか?」という問いに対して、明確に答えられなくてはならない。
⑤正しい固・変分解をやるために、過去の経理資料の統計処理が必要となることが多い。
⑥ROCEに対する感度分析は、もっと分析が進まないことには振り幅の正しい把握ができない。
⑦現断面だけでなく、傾向値を知る必要がある。
⑧希少資源の分析で、まず市場において販売量がまだ増やせるだけの販売力を持っているような場合、あるいは生産設備そのものに余裕のある場合、増産のためのボトルネックはどこかということをつきとめ、これを緩和した場合の経済的トレードオフを定量化する作業である。

どの尺度で分析するかは、企業によっても違うだろうし、どんな産業かによっても違うと思う。
一社員では、どんな指標でどんな分析がされているかを知る機会はほぼない。
興味を持って聞いてみてもいいだろうし、自分なりに自分の会社の内部経済分析をしてみるのも面白いかもしれません。

ステップ3  競合状態の把握
「なぜ現状のようなシェアになっているのか」ということを理解することによって、将来のシェアマップに大きな影響を与えていこうという作業を行う。
(例)①トータルシェアの動き
②地域別シェア
③型式別シェア
④強さ・弱さの比較
⑤生産能力
ステップ4  自社の強さ・弱さの把握
これまでのステップによって、当該製品市場はどのような方向に動いているか、競合他社はなシェアを増やしているかなどのKFSについての総括的把握ができた。
さらにKFSに対する確認の意味で、購買の意思決定に対する分析をしておく。
・セールスマンやユーザーにインタビューする必要がある。
・擬似的な定量化をするか項目ごとに短い文章で結論を書き出す整理方法が有効。
ステップ5  改善機会の抽出・評価
前ステップで改善すべき分野について、有益な項目が抽出されても、その効果のほどについて損得計算をしておく必要がある。
ステップ6  改善計画作成・実施
ステップ7  モニターおよび必要な軌道修正
実施計画の立案と、フォローの段階。
軌道修正も恥と思わずに、昔の仮定に誤りがあれば直ちにプログラムの訂正を行うべきである。

○戦略的思考を阻害するもの

「何ができるか?」という考え方ではなしに、「何が出来ないか?」という拘束条件の方を先に考えてしまわざる状態は、問題解決における致命的な誤り。

『できないこと』からは『できないための言い訳』しか出てこない。
『できること』からは『何がネックとなるか』を現実的に確認し、改善していくための検討ができる。
自分自身も『できない言い訳』を並べていないか、気をつけてみよう。
言い訳が出ていると気付いたら、『できることはなにか』を考えてみよう。

〇参謀五戒

戒1  「イフ」という言葉に対する反応的恐れを捨てよ。
代替案を探る時には「What If…?」という設問の仕方をする。
「もし状況がこうなったら、どのように考え、行動し、反応したら良いか」
日本人がこういったものの考え方が不得手なのは「解答がすでに存在していることに慣れきってしまっている」ためではないか。

解答がすでに存在していることに慣れきってしまっている、というのはとてもよく分かります。
考え方が固定されてしまっているこの頭をいかに柔らかくするか。
いろんな人の考え方に触れ、受け入れてみる。
自分の考えに合体させて新しいものを生み出すことを意識する。

戒2  完全主義を捨てよ
「相手よりもほんの1枚上をゆく市場戦略を、タイミングよく実施することが勝利のカギである。」
総合的に判断するのに、細かなことが気になりすぎてしまう場合には、その細かなことを明瞭に言葉で表現し、それらの白黒を仮に逆にしてみるのがよい。
そして、こうした仮想的な状態においても大筋に影響がなければ、大局的な判断を果敢に行うべき。
戒3  KFSについては徹底的に挑戦せよ。
戒2において完全主義をすてることのできた方々には、次に、ふたたび完全かつ徹底した仕事をやるよう勧める。
物事にはその結果に影響を与える主要因というのが必ずいくつか存在する。
これをKFS(key Factors for success)と呼ぶ。
戦略的思考家とは、みずからの担当する職務(役職、業種、業務)において、つねにKFSはなんであるかという認識を忘れない人。
完璧なまでのKFS追求のみが、我が方に利益をもたらすことになる。
思考という作業に大きな方向づけを与えてくれるもの。

キーとなるものを常に意識しておくこと。
これは戦略でなくても、自分自身においても大事なことですね。
自分が目指していることのキーとなるものは何か。
そのキーに向かって、修正が必要なら、柔軟に修正を加えていくこと。

戒4  制約条件に制約されるな
戦略立案において、まず第1に「あれもダメ、これもダメ」と考え、次に「じゃあ残るのは何だ?」という考え方をしたら、まず現状打破はできない。
「今何も出来ないと思うに至った制約事項とは具体的に何か」
「これらの制約条件がいっさいないとしたらどんな可能性が出てくるか」

という質問から、理想的な姿が認識されれば従来制約条件となっていたことが理想を達成するための障害物として把握される。
今度は障害物をどのようにして除けば良いかということを集中的に考えられるし、組織の中で、障害物が共通の認識事項となった場合には、ベクトル合わせが可能となる。
戒5  記憶に頼らず分析を。
「分析力」と「概念を作り出す力」

制約条件に制約されないこと。
制約条件があるからこその改善アイデアを楽しむ。
という考え方でいられたら、仕事がもっと楽しくなりそう。

○戦略的思考グループの形成

企業には戦略的問題解決者のグループが必要である。
問題の解決ではなく、評論家の集団になり下がってしまった今日のスタッフ部門に単に取って代わるだけでなく、組織の最高意思決定者のための真の戦略参謀である。

○あとがき

個人またはごく少数の人間が、その個々の責任において物事を考え、立案し、実行していく。
困難な大山を登るには周到かつ具体的な計画と、それを具現する意志の力がなくてはならない。
戦略的思考グループは、組織の中にあって、外部にあるようなきわめて客観性と独自性の強いトップレベルの参謀グループである。
単にスタッフ的に作動するだけでなく、企業の命運を左右するものだというトップの精神をもち、企業体の頭脳中枢として戦略的行動方針を策定し、それをラインへ実行させる独特の力を持つ。


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