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中年サラリーマン的 居酒屋の楽しみ方

電車の窓の端々を彩った
桜の季節が過ぎた。

紺色スーツのニューカマーたちが、
通勤ラッシュに、いよいよ参戦してくる。
二人並んで歩く、
パンパンのカバンをかついだまんまで。
それもまあいい。
都会の通勤流儀を理解していないだけだから。

これからは毎朝、
歯磨きのチューブをひねり出した回数だけ
少しずつ少しずつ
正しいサラリーマンになってくれることだろう。

日本のサラリーマンに必要なもの
そんなものは「居酒屋」にきまっている。

歓迎会、送別会、壮行会や反省会、
忘・新年会に・・・単なる飲み会。

時には大勢で、時には取引先と、
時には上司と、時には先輩と、
「居酒屋」はコミュニケーションの拠点となる。

下世話な話題、人事のウワサ話、人生相談・・・。
酔いにまかせて、本音がポロリ、ポロリ。

会社に入って3年目の冬
気の合う仲間が4人が集まった。

さすがの金曜日、どの店をのぞいても満員御礼。
確保できたのは、渋めの「居酒屋」の長テーブル。

スグ隣には、父親と同年くらいサラリーマン3人組。
焼酎のお湯割りとコップ酒で腰を据えている。

乾杯は生ビールから
近況トークで「久しぶり」の時間を埋めると
さっそく次は、コスパ重視の麦焼酎に変更した。
ボトルが3本目に突入したころには
上司や会社の不満話、今の仕事の愚痴で終わらず
転職したヤツらの話で盛り上がる。

帰り支度をはじめだしたお隣さんたち
中でも一番年長と思われる、おじさんサラリーマン
4人の肩をポンポンと叩いて
「俺たちもいろいろあるけど、君らも大変だね」と。

少しヒートアップして、声のトーンが高すぎたのか?
「うるさくて、スイマセンでした」と反省する4人。
「いやいや」とオジサンの笑顔。

先の二人を追って、立ち去るおじさん。
すれ違いに来た、店の大将が
注文していない麦焼酎を一本、テーブルに置いた。

さっきのお客さんだよって、大将。
もう出口寸前のおじさんサラリーマンの背中に
4人全員、起立して「先輩、ありがとうございますっ!」

ベージュのステンカラーコートの背中は、
振り向きもせず、右手をあげて去りました。

なんと、カッコイー。

実は、50歳を超えたあたりから
わたし・・・コレ、やってます。
将来ある若者たちに、3千円のボトルでエールを送る。
だって、あんなに感謝されるんだもん。クセになります。

だから、とにかく日本には
「居酒屋」が必要だってことです。


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