あかねのはな

真名書き散らしたり。

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マガジン

  • 茜花日記

    大学生活のちょっとした記録。 画像は道路に落ちていたバナナ。

最近の記事

「愛されて育ったんだね」  善良な人には見えぬナイフを渡す

    • 《特急にお乗り換えください》  無視して鈍行に沈む 窓に春雨

      • 私は結婚しない。子どもも産まない。 自分の名字も名乗れない、もしもの時、パートナーから逃げることもできない、そんな国で結婚なんて恐ろしいこと、とうていできない。そんな恐ろしい思いを、子どもにさせたくない。

        • 生温い絶望

          今日は本当に気持ちのいい日だった。 晴れていて、気温もちょうどよくて、風もなく、しみじみ春が来たという感じがした。 サークルの自主練習会に、10時に行くと連絡していたのに、二度寝、三度寝してしまい、起きたのは12時を過ぎていた。春眠、暁を覚えずとは言い古された表現だけど、それにしたって寝すぎだ。 昼ごはんだか朝ごはんだか分からないうどんを食べて、14時くらいに家を出た。自転車で御池大橋を渡って、川端通りを鴨川沿いに上がると、かすかに汗ばんだ。桜は満開で、地元の人らしき老夫婦や

        「愛されて育ったんだね」  善良な人には見えぬナイフを渡す

        • 《特急にお乗り換えください》  無視して鈍行に沈む 窓に春雨

        • 私は結婚しない。子どもも産まない。 自分の名字も名乗れない、もしもの時、パートナーから逃げることもできない、そんな国で結婚なんて恐ろしいこと、とうていできない。そんな恐ろしい思いを、子どもにさせたくない。

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        • 茜花日記
          4本

        記事

          あらびあ語譚

          がたん、と重たい音がした。安っぽいコーヒーの匂いが漂ってくる。埃の混じったような、頭痛を想起させる匂い。大学の匂い。 ちらりと左を覗くと、上回生の男子がホワイトボードを眺めながら缶コーヒーを机に置いたところだった。ホワイトボードには、先生の流麗な筆致でアラビア語が綴られている。文学部にはお金がないのか、ホワイトボードマーカーすら満足に補充されていない。薄い筆跡を見つめながら、読めないな、と思った。そもそも何の話をしているのか分かっていない。一瞬一瞬の話は理解できるけど、先生が

          あらびあ語譚

          阪急に乗り換えようとしたらJRに乗りかけた。

          好きは順接の感情、嫌いは逆接の感情。 人気者に対して嫌いって感情を抱くときだけ、自分はその人と対等になれる。時には上に立つことができる。 なんて、そんなの劣等感の醜い産物だ。今のどうしょうもない自分では逆立ちしたって敵わない彼の人に、どうにかして勝とうとした結果が、かえって弱さを露わにする。敵う必要なんてないし、敵う敵わないの話でもない。 だけど、手も足も出ない存在の人間に対して唯一言えることが好き嫌いだとしたら。「あなたは凄い。だから好き」なのか、「あなたは凄い。だけど嫌い

          阪急に乗り換えようとしたらJRに乗りかけた。

          監獄生活

          決められた時間に間に合うように、朝起きて、諸々の身支度をして、電車に乗って、乗換駅を気にしながらうつらうつらして、数分の乗換時間で駅の端から端まで走って、息せき切って乗り込んで、それを毎日、毎朝、毎朝。回生が上がっても、卒業して就職しても、何十年も続く。続けないといけない。退職したら?そもそも私たちの世代は退職して悠々暮らすなんてことが出来そうにないけれど、たとえそれが出来たとしても五十年先の話だ。五十年なんて永遠だ。 好きな時間に寝て、好きな時間に起きて、そういうことが出来

          2011年頃、タイの村で

          6歳くらいの時に行った、タイの村にある父親の知り合いの家で、同年代の娘さんにパソコンでドラゴンボールを見せてもらった記憶がある。私が日本人だったからだろうな。ドラゴンボールって本当に凄い。 でも残念ながら全く興味を持てなかった私は、ドラゴンボールを読みも見もしないまま19歳になって、今日、作者の訃報に接した。 名前すら覚えていない彼女はそれを知っただろうか。10年以上前、せっかく見せたのに興味を示さなかった、失礼な日本人の女の子がいたことは覚えているだろうか。 あなたのお陰で

          2011年頃、タイの村で

          田んぼ、田んぼ、脱法

          YouTubeショートを眺めていたら、小学生のとき住んでいた町の隣の隣の町にある風俗街の紹介動画が流れてきた。住んでいたころは聞いたことがなかったので、最初は別の町だと思っていた。だけど特徴的な地名だし、何より動画冒頭の衛星写真からのクローズアップから分かる位置情報からして明らかにその町だった。 私が住んでいたところよりは都会だったが、相対的な意味でさえ都会というのが憚られるような片田舎である。そんな場所に大阪や神戸で見た夜の店よりも更にアレな店が並んでいたなんて、何だか時空

          田んぼ、田んぼ、脱法

          カエルさん、またはカエルくん。お好きにどうぞ。

          プロフィール画像を設定してみた。カエルさん。特に種類は決めてないけど、色味からすると多分アマガエル。 カエルなら基本的に好きだけど、ガマガエルは手に乗せた時のずっしりとした重みが何とも言えずいい。アマガエルは硝子細工のようで綺麗。ウシガエルの大きさもガマガエルと似ていてお気に入り。そもそもガマガエルとウシガエルの判別に自信がない。水族館にいるヤドクガエルも芸術的だけど毒が怖い。 カエルの肉は鶏に似ていて美味しいと言うけど食べたことはない。いつか食べてみたい。例外はあれど、愛情

          カエルさん、またはカエルくん。お好きにどうぞ。

          いらん自意識

          何だかみんな海外に行っているような気がする。台湾だとか韓国とかなら分かるのだけど、この円安のご時世に西欧に行っている人は別の階層の人間のように感じる。 「みんな」は言いすぎだし、実際数少ない大学の友人は全員春休み中は国内にいる予定だから、私が特殊なわけでもない。 でも、語学留学でフィリピンに行っていた別の友達が「フィリピンは比較的安いから」と言っていたのを思い出すと、彼女と私の見ている世界は平行にずれているのだなあと感じる。フィリピンにだって私は行けない。 高校は普通の公立で

          いらん自意識

          今日の1限はいつもより人が少なかった。教室に入ってきた先生は、クリスマスのこんな朝から、どうもありがとうございます、というようなことを言った。わざわざそんなこと言わんでいいのにな、と思った。

          今日の1限はいつもより人が少なかった。教室に入ってきた先生は、クリスマスのこんな朝から、どうもありがとうございます、というようなことを言った。わざわざそんなこと言わんでいいのにな、と思った。

          【掌編】英雄に捧ぐ

          ユウ老人の友人だったカイは、六十年前、侵攻してきた敵軍に撃たれて死んだ。 友好同盟を結んでいたはずのその国は、突如侵攻方向を変え、二人の住む国境沿いの町を襲った。二人が十七歳のときだった。 その朝、カイはいつものように新聞配達をしていて、そして、地平線の向こう、こちらに向かって進軍してくるその国の軍隊を見つけた。 カイは自転車を必死に走らせ、奇襲を知らせて回った。だが、当時二国間の友好関係は国を挙げて宣伝されていたから、それを信じる者はほとんどいなかった。それでも、幾人

          【掌編】英雄に捧ぐ