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自分史上最高に無気力。コロナ禍の妊娠記録。

「もしもコロナ禍じゃなかったら、もう少しましなマタニティライフを送れてたのかな。」

そんな声がふと頭をよぎる現在、私は妊娠9ヶ月。ようやく産休に入り、何事もなければ後1ヶ月ほどで家族が一人増える予定だ。

示し合わせたかのように、この一年で私の周りも出産ラッシュだった。友人から微笑ましい出産報告を貰うたびに、私は「お疲れ様」を必ずつけるようになった。これまでは「おめでとう」止まりだったのだが、自分が妊娠というものを経験してから、ママパパにはそう声を掛けざるを得なくなった。もちろん幸せを感じる場面も多々あったが、身体・メンタル共に大変なことが多い。

ましてや今のこのコロナ禍。肺がお腹のベビに圧迫されているこの身体で肺炎に侵されること自体恐怖だし、何の心配もなく外に出て伸び伸びとリフレッシュできないのが何より辛い(現在進行形)。気分転換する術が限られているから意欲が湧かず、気分が落ちていく…

まぁ、すごくポジティブに捉えると、近代史上類を見ないパンデミックの中で命を授かり乗り越えたというのは、試練であると同時に、何ものにも代え難い経験であるはず。そんな貴重な経験を、感情を、オキシトシンと一緒に消え去らないように、備忘録として書いておきたいと思う。

・2021年6月〜 第一子妊娠中
・都内在住、27歳 OL(IT企業勤務)
・夫婦共働き
 旦那:8割 在宅勤務
 私:100% 在宅勤務


【妊娠初期】 身体に追いつかない気持ち

「はい、妊娠してますね」

これまで何十人、いや、何百人にこの言葉をかけてきたのだろうか。
1、2週間ほど微熱っぽい感じが続き、生理が来なかったことから市販の検査薬を試したところ陽性反応が出ていたので、わかっていた診断結果ではあったが、正常妊娠とのことで心の中の雲が切れて晴れ間が見えた。

色々と記事を漁ってみたところ、妊娠初期は流産のリスクが高くデリケートな時期なため、自分の身体を適度に労わりつつ仕事がしたかったことと、私の会社は平均年齢が低く上司との距離も近かったので、妊娠が発覚した時点で直属の上司には懐妊の旨を伝えておくことにした。

それからというもの、心がどこか浮ついていて仕事が手につかない。コロナがなく出社していればそんなことなかったはずなのだが、在宅勤務だったからなおのこと気が散った。たった数ミリの細胞ちゃんが愛おしくて。

今の会社には2年ほど前に転職してきた。畑違いの業界からの転職ということもあり最初の1年は苦労したが、2年経った今、業界特性と会社の規模故に早くも中堅層的な扱いをしてもらっており、周りからの信頼の積み上げもようやく出てきているかなというタイミングでの妊娠発覚。

これからもう一段レベルの高い案件にアサインしてもらいレベルアップしたかったという仕事人間としての自分と、数年前に手帳に秘かに書いていた計画通り、適齢期での妊娠に喜ぶ女性としての自分。二人が仲良く手を繋いでいてくれるはずもなく、すごく複雑な心境に陥ることも多々あった。

そんな不安定な私の心を差し置いて、待った無しに次々と訪れる身体の変化。食べつわり、吐きつわり、頭痛、異常な眠気。

幸い在宅勤務中のため、長いミーティングの時は途中カメラをオフにして食べつわり対策の為におにぎりをこっそり頬張ったり、OJTで見ている後輩とは比較的体調が良い日中にコミュニケーションをとり、終礼は夕方早いタイミングにずらしてもらったりして乗り切った。

仕事で精一杯。徐々に家事ができなくなっていった私を支えようと頑張ってしまった完璧主義の旦那氏。私が気持ち悪い〜とベッドで寝ていると、ある日いきなり隣にきて、「僕ももうしんどい、無理だよ。全てに対してやる気が起きないんだ。」と一言。ネットの検索履歴には "バーンアウト" という言葉が並んでいた。

思い返せば、妊娠が発覚してからコロナを気遣ってろくに友達と飲みにも行かず、休日に二人の趣味だった旅行すら行けず、家では慣れない家事をし、悪阻で心の折れそうな妻を励ます毎日… ああ、自分もしんどいけど、旦那もしんどかったんだと、旦那を思わず抱きしめて泣いた。


【妊娠中期】 脳裏にチラつく休符記号

悪阻も徐々に落ち着き、一般的には体調が落ち着くとされる妊娠中期(いわゆる安定期)。その "一般論" こそがこの時期の自分を苦しめることになる。

確かに悪阻は落ち着いて来た。胎動も感じるようになり、より一層お腹の赤ちゃんが愛おしくなった。…がそれと引き換えに襲って来たのは謎のめまい、耳鳴り、ふらつき。

19週の時、コロナのワクチンの2回目を接種することに決めた。mRNAワクチンに対する恐怖心は実はあまりなかったのだが、副反応で高熱が出た場合、あかちゃんは耐えられるのかが不安だった。接種を決心するまでの間にも色々と葛藤があったのだが、情報収集の末、自分の納得いく形・タイミングで接種に至った。

怖かったのはその接種後の帰宅途中。久々に普段行かない場所に出て来れた高揚感もあり、いつもより長めに周辺をぐるぐる歩いていたところ、その帰りに起立性低血圧で失神してぶっ倒れてしまった。悪阻から解放されて、もっと歩けると思っていたのに。

その2日から、今度は約2ヶ月ほど、ふわふわめまいと耳鳴りに悩まされた。耳鼻科に行ったところ、妊娠による血流・ホルモンバランスの変化が大きそうなので漢方で様子見しましょうとのこと。私はもともと軽度の難聴持ちだったので、妊娠で身体の弱い部分に症状が出てしまったのだろうと。

結果、妊娠後期に入って妊娠状態に身体が慣れたのか症状は治ったのだが、終わりの見えない不快な症状に毎日不安だった。ワクチンのせいなんじゃないか、実は妊娠起因ではなく別の病気が隠れているのではないか、聴力が今以上に落ちたらどうしよう… 色々考えてしまい、検索魔になっていた。

そんな中、会社ではモチベーションが落ちる事件が発生。ほぼ同時期に中途入社して来た同僚(男性)の昇格である。そりゃ、半年後にぽっかりいなくなる人間よりは、やる気もあって体力に自信があって継続的に働ける人が選ばれるのはごもっともなのに…。

周りからも「アップデートの激しい業界だし、どうせ一旦お休みに入るから、無理して新しいことを覚えたり、チャレンジしなくて良いんじゃない?」とか「残業せずに早く上がってね」とか、全然悪気はなくむしろ気を遣って言われることが増え、何だかそのあたりから、頑張っていたピンと張り続けていた糸が切れてしまった気がする。まだ産休に入るまでにやれることは色々あるのに、どうもこの先訪れるブランクを意識してしまう。

難しいよね。素直に甘えれば良いのに、頑張りたい自分が邪魔をする。


【妊娠後期】 メンタル的に1番キツかったかも

無気力との本当の勝負は、産休に入ってからだった。平常時よりは仕事量をセーブしていたとは言え今まで毎日働いていたのに、急にやることがない。

それこそコロナ前は、子供が生まれたら行けないようなおしゃれなカフェに行ったり、赤ちゃんグッズ専門店に行ってベビー用品を買いそろえたり、しばらく会えなくなるであろう友達とランチに行ったり、色々できたはずなのだが、なんせオミクロンとやらの到来でそれができない。

妊娠後期にコロナにかかると重症化リスクが高いとか、出産直前にかかると有無を言わさず帝王切開だとか、分娩を受け入れてもらえる産院を一から探さないといけないとか。そんな中、旦那の職場でも感染者が出始め、毎日テレビで感染者数を見ながら、すごく怯えていた。そして、メディアに煽られ不安を感じている自分に思わずため息。

外に出れないと自然とテレビやネットを見る時間が長くなる。 "強制的にやらされる" ことがないと、自分の身体の変化が異常に気になってしまう。無駄に心配事が増えて疲れ果てていった。

対面で誰かとコミュニケーションが取れないって、私みたいな人からエネルギーもらうタイプの人間には合ってない環境だった。産休に入って時間は山ほどあるはずなのに、何もする気が起きないなんて想定外。


メンタルを立て直すためにやっていたこと

そんな救いようのない状況の中でも、自分でもびっくりするくらい気分が一気にぱーっと晴れた瞬間が何度かあった。思い返すと、下記を意図的に行ってみた瞬間だった気がする。

  1. 完璧を求めすぎない
    妊娠期間中は身体を第一優先。お腹が張ってきたら中断して横になって休むこと。この時期は、物事が計画通りにいかないのが当たり前。

  2. 無理のない程度に小さな目標を立てる
    計画を立てるとワクワクしてくる。コロナで外に出れないなら、家の中やオンライン上でできることを考えてみてはどうだろうか。
    我が家の例)夫婦のインスタグラム開設、韓国語勉強

  3. 夫婦間でありがとうを毎日欠かさない
    皿洗い、郵便受けのチェック、お茶を一杯入れてくれた、どんな小さなことでもいい。パートナーが家庭の為に、私の為にしてくれたアクションにはその場で必ず感謝と敬意を示す。ありがとうと言われて、嬉しくない人はいない。家の中にほっこりあったかい空気が生まれる。

  4. 産後の楽しみを具体的に計画する
    我が家は二人とも大の海外旅行好き。子供が産まれてすぐには行けないだろうとうなだれていたところ、旦那がクルーズ船の旅なら無理なく子供と一緒に海外旅行を実現できそうだという情報を仕入れてきてくれた。調べてみたら意外とリーズナブルな豪華客船の旅。産後の楽しみが決まってからというもの、俄然今の辛い時期を乗り越えようという活力が湧き上がってきた。

  5. 日常を楽しむ工夫をする
    料理、掃除、Netflix視聴…いつも同じことの繰り返しにうんざりしがちだったが、料理(+インスタでの発信)、掃除(+掃除中にだけ好きな音楽を聴き放題というルール決め)、Netflix視聴(+言語/カルチャー勉強)など、プラスアルファで自分なりに付加価値をつけてみることで前向きになれた。

  6. パートナー以外の人と積極的にコミュニケーションをとるようにする
    いつも旦那とばかり話していたら、どんなに仲良くても息が詰まる瞬間が出てくる。リモートでもチャットでもいいから、とにかく友達と、家族と話す。旦那に嫉妬されない程度にね。

無気力が襲ってきたら、放置せずにこれらをすかさず実践するのだ。


最後に

先日、妊婦関連のネットニュースを何気なくみていたら「なんでこの時期に妊娠したのか分からない」「今妊娠している人は、コロナが蔓延していて大変な状況であることに納得して妊娠したわけだから、多少辛いことがあっても我慢して当然だよね」という、何とも心無いコメントを目にした。

いろんな事情があって、いろんな条件が重なって、成すべくしてこのタイミングで授かったに決まってる。だからこそ、どうか全世界の妊婦さんが、自信を持って楽しくマタニティライフを送れますように。

P.S. こちらが妊娠してから開設してみたインスタグラムアカウントです。日常の発見やクスッと笑いをおすそ分けできたら嬉しいです☺︎


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