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麒麟がくるレビュー・2軍       その19「信長を暗殺せよ」だって、光秀

私の単なる思いつきで、今年82歳になるじーちゃん(日本人。日本在住)と12歳になる息子・エル(日本人とスペイン人のハーフ。スペイン在住)にNHK大河ドラマ『麒麟がくる』のレビューをお願いしている。
じーちゃんもエルもよそ見をしないでちゃんとドラマを観るように。

エルがこの2軍レビューをチェックし始めた

なんだか妙なことになってきた。
エルがnoteのこのレビューを自分でチェックしている。
実は、彼は日本語を喋るのは問題ないが、読み書きがあまりできない。
だから私は安心してフリーダムに記事を書いていたのだよ。ははは。
そしたら、エルは記事をグーグルで英語に翻訳して読み始めた。
まじか。

「よっしゃ。どれどれ」
エルの横に坐って「英語バージョンの2軍」を読んでみたら、どえらいことになっていた。
酷い。酷いわ-。
ま、私は元の原稿を書いた本人だから、英文の雰囲気で自分の記事のどの部分なのかがなんとなくわかるが、ほぼ文章も、文法も、意味も崩壊している。
まるで暗号。
英語のネイティブの話者が読んだら意味不明は間違いない。
主語をすっ飛ばしたりだの、言葉遣いが荒いだの、原文がこんなかんじだから、まじめな文章よりも翻訳しにくいのか。
しかし、たまーに意味の通じる翻訳文も混ざっていることもある。

あれ、まてよ。
ふと思う。
膨大な意味不明の分脈と内容の中にある一握りのキラリと光る正確な文章。
混沌と秩序の交錯に翻弄される私にときどき見える光や虹。
どこか他で似たような体験をしていなかっただろうか?
あ。

じーちゃんだ!

そうか。
このデタラメな翻訳文は、私が毎回悩まされるじーちゃんの謎コメントを彷彿とさせる。
こんなところに英語版のじーちゃんがいたとは。
英語の2軍レビューを読んで楽しげに笑っているエルがいます、ここに。
もうそれの作者は私ではない。

光秀と義龍の別れの場面はドラマに必要ない

第19話を視聴した多くの方は、明智光秀と斎藤義龍の別れにじーんときたのではないだろうか。
少なくとも私は、これまで義龍(当時の名は高政)の悪口を言った自分を反省しましたね。

しかし、そんな感動場面に全く動じない男がここにいた・・・。
ご想像通り、じーちゃんである。
彼は、19話の一番の場面について全くコメントしないのだ。
しびれを切らした私は、
「光秀と義龍の対面シーンで感動しなかった?」
とじーちゃんに誘導尋問した。
すると彼はけろりと、
「あの光秀と義龍の場面は全く必要ないのう」
と言い放ったのである。
「2年後に死ぬような男と話しても光秀には意味は無い。無駄じゃ」
ひ。
なんて酷い言い方。
でも、「意味が無い」という言葉の意味がよくわからなかったので、何度もじーちゃんに確認した。

彼が言いたかったことはこうだ。
例えば義龍が光秀に
・越前での仕官の仕方のヒントを教える
・信長の弱点を教えて光秀を有利にする
・斎藤道三のものすごい秘密(どんなん?)をバラす
・帰蝶に謝りたい、と光秀に伝言する

など(これらはほんの例です)有益な情報を提供するための対面なら意味があったのだという。
「やっぱオレに仕官しない?」
と誘った余命2年の義龍が、光秀に拒否されたことなど話題にする価値がない、のだ。
「最後に2年後に死ぬと言われたら、それまでの会話の意味がなーんもないのう」
せせら笑うじーちゃん。
全く酷い老人である。
義龍は目に涙を溜めていたのに。
じーちゃんの人でなし!

現実的なエル、計算高いじーちゃん

上記のじーちゃんのコメントに動揺してしまった私だが、いくつか興味を惹かれたコメントがあったので、記しておきたい。

エル
・信長のお母さんは信長を「大切なものを壊す」って言ったよね。言っておきますけど、毒を持ってきたのは信勝が先だからね!
・牢人? 光秀はもうサムライじゃないのか。でも、学校の先生は良い仕事だよ。そういうスキルがあれば仕事に困ることはないからね。もう、それでいいじゃん。(←なかなか現実的
・義龍はregret(リグレット/後悔)してたね。わかるよー。で、2年後に死ぬの? それ、光秀とか義龍はあの時知ってたの?(←知らへんよ)
じーちゃん
・信長なら信長をずっと追いかけてドラマを進行してほしい。場面が切り替わったら、ちょっと(わしが)わけが分からなくなる。いろんな人の説明はいいから、主人公の信長の話を迷わずに追って行けばいいと思う。監督も脚本家も迷う必要はない。あ、主人公は信長じゃなかったか・・・。
・朝倉義景が牢人の光秀に将軍への使者を頼んだのが変だと思うたか? はっはっは。それが義景の作戦じゃ。何か事件に巻き込まれた時に、部外者に頼んでおけば、義景は知らん顔して切り捨てることが出来るからのう。(←ドラマの見方が非情になってきた老人
・それにしても、光秀は会う人会う人から大事にされて、うまくいくのう。誰にも好かれることのないわしとはえらい違いじゃ。(←なぜか弱気
・今回の話しの中で印象に残った場面は・・・今回ばかりは全くないのう。(←絶対に光秀と義龍の場面だとは言わない)

おわりに

いかがだっただろうか。
じーちゃんもエルもなんだか変な感じに成長している気がしている。
2人を純粋素直な大河ドラマファン・歴史ファンに育成しようとしている私だが、ちょっと方向がずれてきたか。
もしもこの2軍レビューがドラマ全体を通して無事に終わったなら、私はきっとスゴ腕の羊飼いになれるに違いない。