見出し画像

映談#02 | アフガニスタン・子供の情景・武器とノート


アフガニスタン情勢が毎日報道されるなか、今日ご紹介したいのは若き映画監督が作製した子供の情景

撮り方はドキュメンタリー風なので壮大な中東の風景を見せてくれるわけでもない。少女が淡々と苦難を乗り越えていく姿を描く。

国際情勢に翻弄される国で信仰とは、教育とは、格差とはを問いただす作品。


1.あらすじ


舞台はアフガニスタンのバーミヤン。2001年、イスラム教偶像崇拝禁止の規定に背くとして歴史的な仏像が破壊された場所。

荒涼とした大地で暮らす少女が「学校にいきたい」と、卵を売りながらノートを買い、遥か遠くの学校を目指す。

そうしたなかで、タリバンの真似事をする少年たちの「処刑ごっこ」に巻き込まれ、大切なノートは蹂躙されてしまう。

大人たちが作った戦争のある世界で翻弄される子供達、それでも教育を求め力強く前に踏み出す少女の物語。

画像1


2.監督


監督はイランを代表する映画監督モフセン・マフマルバフの娘ハナ・マフマルバフ。18歳の時、父のレポートからインスピレーションを受けて作った長編デビュー作。

長い紛争が続くなかタリバンの仏像爆破予告があり、さまざまな国際交渉がされたが結果的に爆破され、国際社会から痛烈な批判を受けた。


その当時の父モフセン監督の表明文

私はヘラートの町の外れで、2万人もの男女や子供が、飢えで死んでいくのを目の当たりにした。彼らはもはや歩く気力もなく、皆が地面に倒れて、ただ死を待つだけだった。この大量死の原因は、アフガニスタンの最近の旱魃(かんばつ)である。同じ日に、国連の難民高等弁務官である日本人女性(緒方貞子)もこの2万人のもとを訪れ、世界は彼らの為に手を尽くすと約束した。3ヵ月後、この女性がアフガニスタンで餓死に直面している人々の数は、100万人だと言うのを私は聞いた。
 ついに私は、仏像は、誰が破壊したのでもないという結論に達した。仏像は、恥辱の為に崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人々に対し、世界がここまで無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないと知って砕けたのだ。


レポートのタイトルは
アフガニスタンの仏像は破壊されたのではなく恥辱のあまり崩れ落ちた

映画のペルシャ語の原題も「仏像は恥辱のあまり崩れ落ちた」、フランス語では「ノート」

この映画では比喩としてノートが重要な意味を持っている。アフガニスタン文化はいろいろな人の手に渡ってみるみる破壊された。ソ連が来て、タリバンが来て、アメリカが来て、またタリバン。


3.バーミヤンの仏像


画像2



バーミヤンは中国史でいうところ6世紀『西遊記』の中で三蔵法師が旅の途中で訪れる場所。記録によると仏像は金色に輝き、宝飾で美しく彩られていたという。シルクロード上にあり、かつては東洋と中東の十字路として栄えたんだろう。


4.アフガニスタンの現在


情勢がまた急激に変わっていて戦場カメラマンの渡部陽一さんがTwitterで毎日更新している。


こちらは日本の研究者による声明。


5.予告



ただイスラム原理主義やタリバンを批判する部分にだけ共感しても意味はない。

餓死か闘うかの2択を迫られたときに私は前者を選ばない。

80年前、超大国に勝てると戦争を始めたこの国の集団狂気のように、アーリア人は誇り高いはずだという思想がヒットラーを産んだように、少年たちがタリバンに成長する経緯から問題を捉えていかねばならない。




老荘思想、中国哲学の研究費、作品制作にあてさせていただきます!よろしくおねがいいたします◎