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雑文

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主に読書感想文を載せています。ネタバレしない内容を心がけてますが、気にする人は避けてください。批評ではなく、感想文です。
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2017年12月の記事一覧

岸本佐知子編訳 『変愛小説集Ⅰ』

★★★☆☆

 2008年刊行。2014年に文庫化されているオムニバス本。恋愛ではなく〝変〟愛という似て非なるところが岸本佐知子風味です。収録されている作家もニコルソン・ベイカー、ジュディ・バドニッツと岸本佐知子が翻訳している方がちらほら。

 シリアスなものから掌編的なもの、小話風といろいろなテイストが味わえます。とはいえ、ストレートな恋愛小説はありません。七色の球種を備えているけど、直球は投げ

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ジュディ・バドニッツ 『イースターエッグに降る雪』

★★☆☆☆

 ジュディ・バドニッツの長篇処女作。通算二冊目の作品。訳者は木村ふみえ。1999年刊行。翻訳版は2002年。

 祖母、母、娘、孫と四世代にわたるサーガというところが、トンミ・キンヌネンの『四人の交差点』を思い出しました。とはいえ、テイストはかなりちがいます(寒そうなところは似ていますけど)。

 前半部分の祖母イラーナが寒村から亡命してアメリカに行くまでと、子供が産まれ、孫が産まれ

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岸本佐知子 『気になる部分』/『ねにもつタイプ』/『なんらかの事情』

★★★☆☆

 翻訳者である岸本佐知子のエッセイ集。それぞれ2000年、2007年、2012年発刊。俗に言う岸本佐知子三部作です(言わないですね)。
 どれから読んでも同じテイスト、まるで金太郎アメのようです。タイトルが7文字なのはこだわりなのでしょうか? リズム?

 はたしてこれをエッセイと呼んでいいのか、いささか迷います。なんというか、自由すぎる……。
 ふつうはエッセイというと、作者の身辺

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ジュディ・バドニッツ 『空中スキップ』

★★★★☆

 1998年発刊のジュディ・バドニッツの処女作。翻訳版は2007年。岸本佐知子訳。23の短篇が収録されています。
 一つひとつが短めですが、ショートショートやサドン・フィクションとも毛色が違う摩訶不思議な短篇集です。

 3作目の『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』と比べると、良くも悪くも瑞々しさと軽さを感じさせる本作。良い点としては、さらりと読めるところでしょう。悪いところは、いささ

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ジュディ・バドニッツ 『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』

★★★★★

 2005年発表の三作目となる短篇集。翻訳版は2015年刊行。訳者は岸本佐知子。
 なんとも奇妙な味わいのする小説で、岸本佐知子が好きそうです、実に。

 絵本を思わせる寓意性に富んだ話、夢のように奇妙な状況、その反面、現実に準拠した展開と、独自の世界観をもった作家です。
 不穏な空気が漂いつつも恐怖というわかりやすい形には決して着地しない、寓話的ではあるけれど、寓話ではない(教訓を

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