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大反響、医療AIシンポジウム。新たなプロジェクトチーム(ヘルスタPT)立ち上げへ

1月11日、厚生労働省として初めてとなる医療分野におけるAIの利活用をテーマにしたシンポジウムを開催しました。産官学のトップクラスの登壇者にご協力頂き、会場・オンライン合わせて500人以上が参加、Youtubeでは8000回(1月末現在、アーカイブはこちらから)以上再生されるなど大きな反響を頂きました。政務官として企画段階から関わってきたこの重要なイベントの意義とハイライトをご紹介します。

今回はポスターも生成AIで作成!

AI新時代におけるヘルスケア✖️AIの可能性
<開会のことば>https://youtu.be/2rZ19OCUCkA

2021年11月のChatGPTのローンチ以来、世界はAIの新たな可能性をめぐる熱狂に包まれています。大規模言語モデルの登場により、人工知能は新たに「ことば」を獲得し、今までは想像もできなかった大量のデータをもとに、「キカイが無限にコンテンツを作り出す時代」(安宅和人・慶應大学教授)が到来しました。

特にAI利活用による巨大なポテンシャルを秘めていると注目されているのが医療や介護などのヘルスケア分野です。我が国の医療データは世界有数の量と質を誇ります。国民皆保険の公的医療・介護制度とそれを支える高度な医療技術、そして国民の健康に対する意識の高さが生んだこのデータこそ、日本の競争力の源泉としてAIの利活用を一層加速させる原動力となり得ます。創薬に、診断に、医療機器に、健康管理に。その可能性は無限です。

医療行政の分野でも積極的にAIの利活用が進んでいます。先日視察に訪れた社会保険診療報酬支払基金では、全国の医療機関から提出される10億通以上の診療報酬明細の仕分けに人工知能「ReCAI(Receipt Clustering using AI=リカイ)」を導入。目視検査の枚数を劇的に減らすと共に、審査の精度を引き上げ医療財政の健全化にも貢献しています。このような具体的な成果を通じて、AIの有用性を肌で感じることができ、医療界におけるAIの可能性の一端を垣間見ることができました。

シンポジウムの議論を踏まえ「ヘルスタPT」の立ち上げへ

今回のシンポジウムの有益な議論を、一日の満足で終わらせるのはいかにも勿体無い。そんな思いも込めて、2024年2月5日より厚労省にて「ヘルスケア・スタートアップ振興・支援策検討に関するプロジェクトチーム」(略してヘルスタPT)を立ち上げます。私が政務官としてチームリーダーとなり、「医療DX・AI」「バイオ・再生」「医療機器・メドテク・SaMD」「介護テック」の4つの分野を中心に、ヘルスケア分野におけるスタートアップを強力に支援し、イノベーションを促進する様々な施策を具体的に検討して参ります。

どなたでもご意見や政策提言を投稿頂ける「ヘルスタ・アイディア・ボックス」(仮称)も同時に開設する予定ですので、多くの皆さまの声もお待ちしています。

初めての試みにも関わらず、粘り強く企画を練り上げイベントを成功に導いて頂いた厚生労働省の皆さま、ご登壇頂いた講師の先生方、そのほかお世話になった大勢の皆さまに心から感謝申し上げます。

以下、当日の各プレゼンテーションの資料とポイントです。

基調講演①:医療におけるAIの普及とその影響について(村山教授)

医療従事者の負担軽減の観点からAI等を活用した医療サービスの開発・活用が必要。他方、AIを利活用したSaMDが保険償還されるかどうかの予測可能性が低く、AMED等国費が投入されて開発された製品が現場で利用できない状況がある。このため、以下の三点を提言する。
 ・国税を投入したAIプログラム医療機器の出口戦略をPMDA及び厚生労働省が連携して協議すべき。
 ・AIプログラム医療機器の開発に対する財政的支援及び医療機関での導入促進策を検討する。
 ・AIプログラム医療機器開発のための個人情報保護のルールの明確化と適切な規制緩和を図るべき。


基調講演②:生成AIの進展と保健医療における活用可能性(松尾教授)

分野特化型LLMであれば我が国でも勝ち筋はある。短期的にはLLMが有する弱点や個人情報保護のために必要なデータ削除機能などもパッケージとして備えたLLMシステムとしての開発が急務。

また、世界的にもLLMの利活用は市場が兆円規模で大きい。医療、金融、製造の3分野が主体となることが考えられることから、我が国において医療分野におけるLLMの開発・利活用に注力すべき。


厚生労働省によるAI関連の施策の紹介(大臣官房厚生科学課)


パネルディスカッション①:AIを用いた医療従事者働き方改革・医療DXの実現(中村先生、宇賀神先生、大山先生、横山先生)

・医療分野でAI社会実装を目指すには、セキュリティ・正確性・透明性を確保し、信頼を得ることが必要。(中村理事長)

・医療データホルダーのパターンを整理した上での議論が必要ではないか。(オプトインデータ、次世代医療基盤法の認定事業者による匿名加工医療情報、PHR等)。データ集約も大事だが、PHR等の分散型データの活用のための課題解決に取り組んでいく必要もあるのではないか。(宇賀神先生)

・規制面で、AI事業者のライセンス制・許認可制についても、いずれ議論が必要ではないか。また、セキュリティの在り方と、データセットの持ち方について、議論するタイミングに来ているのではないか。(大山先生)

・AI技術革新により発生するリスクの洗い出しが肝要。ガバナンスの観点から、現場の危険・不安をいち早く察知することが肝要。(横山先生)


パネルディスカッション②:AIを用いたヘルスケアイノベーションの推進(医薬品・医療機器)(中野先生、沖山先生、浜本先生、池森先生)

・今後、診療報酬でAI独特の価値(痛みの軽減や精度向上)への加算されることに期待。国民皆保険制度の下で、どのようにAI製品を評価するか、議論が必要。(沖山先生、池森先生)

・医療データ利活用について、医療現場、実務者視点で分かりやすい個人情報取扱いガイドラインが必要。そして、これをたたき台に幅広い視点から、日本の医療データ利活用システムについて議論を重ね、精緻化していくことが必要。また、患者さんのベネフィットを最大化するシステム構築が肝要。(浜本先生)

・製薬業界としては、1患者のヘルスデータのタイムコースを、正確に把握できるようになっていることが重要。(池森先生)

・医療教育の中で、AIを必修とすべき時期も近づいてきているように思う。政府で支援いただけると幸い。(沖山先生)


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