見出し画像

ダイバーシティってなんだっけ?~ミトコンドリアDNA狂想曲~/ヨソモノ、ヨコスカ。#07

どうも、横須賀歴5年目になった新参市民です。
先日、家の契約を更新したので、引き続き市民歴を深めるつもりでいるのです、が。が、が、が。

今回のタイトルを見て「ああ、あれね」とピンとくる人もいれば、何のことやら?と思う方もいるでしょう。

何のことやら派のために、こちらをどうぞ。

女性のDNAに……怨念?

去る2023年6月、横須賀市議会において市長が「女性蔑視」にあたる発言をした、ということがニュースになりました。
その発言のひとつが先の「女性のDNAに怨念」なんです。

※追加で動画も貼っておくので、概要はそちらでご確認ください。
それか「怨念 横須賀」で検索!(夏ですね)

……なんでしょうね、これ(遠い目)。
童磨(鬼滅ね)、「どうした、どうした?」って市長に聞いてあげて。

政治家による「女性蔑視発言」。
いまパッと思いつく例だと「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」(東京五輪の組織委員会/BY 森元首相・83歳)とか。
あんまり慣れたくないですが、今さら驚かないくらいごまんとあります。

※こちらの「政治家うっかり失言TIMELINE~ジェンダー編」を読んで、めくるめく「女性蔑視発言」の世界をご堪能ください。

失言に王道があるのかは分かりませんが、女性に対する失言で多いのって「今って令和でしたよね?」みたいな、昭和は永遠に不滅ですケース(中には明治すら香る発言も)の印象がありますが、我らが横須賀の場合はまさかまさかの「ミトコンドリアDNA」

独自路線がすぎます。

横須賀市は、「音楽・スポーツ・エンタメ・サブカル」の発信に力を入れている街。

DNA=市内に練習場のある横浜DeNAベイスターズ(スポーツ)と引っかけた?それとも、細胞に刻まれる記憶や想い(SF・サブカル)アピール?

違うってわかってますが、少しあがいてみました。

このニュースが出て以降、市外在住の友人・知人らに「横須賀、ミトコンドリア(笑)」「私のDNAにもこの発言刻んどくわ(怒)」などなど、失笑&お叱りの言葉をいただいたことは市民としていちおう記しておきます。

*****

さて、市長悪!市政悪!みたいなことを書くために連休中のキーボードを叩いているわけじゃないんです。

正直、今は残念×1000乗くらいの気持ちですよ。
がしかし! この悪目立ちをチャンスとして活かす道もあるんじゃないか、と思って。

人口減少のトップランナーである横須賀市が、「やっちまった」ことをうやむやにしないで受け止めて、最終的に自他ともに認める「人権・ダイバーシティ先進地域」に変わっていったら、めちゃくちゃカッコいいんです。

どうせ何を言っても、やってもムダだと希望を持ちにくい時代。
失敗を糧にして、さらに良い結果を生み出す姿を見せて、そっちをニュースに取り上げてもらいたいじゃないですか。

理想論だと笑われるかもですが、すでにこの街、素地を持っているから思うことで。

だって横須賀市、「誰も一人にさせないまち」というモットー掲げて、ダイバーシティへの取り組みをすでに着々と進めてきてます。

たとえば、シングルマザーの貧困が長年問題になっているこの国で、「ひとり親家庭への支援」は比較的手厚い自治体だと思うし、国単位では議論の途中である「子どもの権利」についても、「子どもの権利を守る条例」「いじめ等の対策に関する条例」などを市単位で制定する決断もしてる。もちろん「パートナーシップ宣誓証明制度」の導入も。

児童虐待の相談が過去最多になったとか、まだ道のりの途中だとは思いつつも、人権に取り組もうとしているんだな、と受け取ってました。

さらに2022年、市が「人権・ダイバーシティ推進課」を市長直属の組織に改編したと知ったときは、「ここ重要視してますので」という意思表明なんだろうな、と解釈していた。の・で・す・が。

だからこそ今回感じるこのギャップ。(五・七・五)

「根強く残る女性への差別を今の世代で何としても解決していかなければならない」という思いが本筋、というならば、今回の一件はダイバーシティにより深く向き合う絶好の機会にしないと、今までの取り組みの評価すら揺らいでもったいない。

※2023/7/20追記
児童虐待の相談件数が過去最多になった、という記述に関して、SNSで下記のコメントをいただきました。
現在の記述だと「まだ児童虐待が減っていない」かのような印象を与える面がありますが、ご指摘の通り、自治体の取り組みが前向きに作用した結果として相談件数が増えている、という見方もできると感じ、ご指摘のコメント内容と共に追記させていただきます。

著者SNSのコメントより引用

*****

今回あちこちの見出しに踊った「ミトコンドリアDNA」発言ですが、善し悪しで言えば「悪し」だけど、千歩譲って女性の苦しみが続いていることを比喩的に言おうとして大失敗した、って感じかなあ、とも想像します。

ただ「女性の恨みの反動形成で男女共同参画が出てきた」は、スルーするわけにはいかないヤツ。

そもそも論、「男女共同参画」は誰もが性別にとらわれない形で個性や能力を発揮していこう、という目線のもとに進んでいるはずで、その前提にはステレオタイプな性のイメージを勝手に当てはめないようにしようね、個人の違いを尊重しようね、っていう考えがある。女性の地位向上は狙いのひとつではあるけど、そこがゴールではなくって、ステレオタイプな性別分業によって生まれる男性の生きづらさも解消しようとしているものです。

当たり前に稼ぎ手扱いされるプレッシャーに苦しんでいる人がいるかもしれません。競争が嫌いなのに勝った負けたの感覚を求められてツラい人もいるかもしれません。当然、バリバリ働きたい、勝負したい!っていう人がいたっていいんですが、そう思わない人に対して「男としてどうなの?」みたいな価値観を持ち込まず、各々の個性に合った選択ができる社会を目指しているわけです。

※その中には男性・女性という二つの枠組みの中に性を押し込めない、という考えも含まれています。

横須賀市が打ち出している第6次横須賀市男女共同参画プラン読んでみてもそこはきっちり押さえてあるのに、なぜ「女性の恨みの反動形成」なんて言葉が出てきたのか。

特に「女性蔑視」というテーマは、冷静な意見交換だけに留まらず、SNSの攻撃の対象になりやすいなど「荒れる」傾向が見られる時代。
「根強く残る女性への差別を今の世代で何としても解決」するため、ぜひ要らぬ誤解を生まない表現をお願いしたいものです。

*****

モヤったことをもうひとつ。
個人的に最も「ぬおー!」と思ったのは、先の市長発言に対する見解を求められた市長室長(人権・ダイバーシティ推進課は市長室にあるので、その長的な人のはず)の返答でした。

※このやり取りについては、見解を求めたご本人である横須賀市議会議員の方のブログ(下記リンク)に書き起こしがありました。

※書き起こしのある記事
【差別発言そのものなので本当にダメだと思うんですが部局としてどう対応するんでしょうか?と問うたら、井上市長室長から「逆に私の方はすごくいい話だったという意見も聞いております」と返ってきたミトコンドリアの続きの件】(2023年6月14日 環境教育常任委員会)

横須賀市議会議員・加藤ゆうすけ氏ブログより引用

ざっくりダイジェスト
Q.議員:差別発言そのものだと思うが、部局としてどんな対応を?
A.長:(差別発言という意見は)議員が聞いた話だと思うが、私のほうはいい話だったという意見も聞いてる。捉え方は人によりそれぞれ。

「捉え方は人ぞれぞれ」!
この世の全員の意見が一致しない限り使える汎用性の高いフレーズです。

書き起こしによると、この後「差別のない社会を作らなきゃいけないという思いは揺るぎない」という方向に話は向かっていくのですが。
差別って「差別してやるぜ!」という明確な意思のもとに行われるものだけじゃなく、むしろ無意識とか、場合によっては善意のもとに行われることもある、という性質。

そこで「差別意識があった・なかった」って話になっちゃうと「受け止め方は人それぞれ」が持ち込まれやすい側面がありますが、現状まばゆいほどクリアなのは男女共同参画」の間違った理解に基づく発言だ、という点。

思いや意図の話も周知が必要かもですが、まずはそもそもの質問である「部局としてどんな対応をするのか」、さらに求めると「市の考えるダイバーシティと照らし合わせてNGなのか否か」 については答えられたのではないか、というモヤモヤが残ります。

今回の件に関する考察記事が出ていました。
そこには、横須賀市議会の議員39人のうち女性議員は5人と、2割に満たないことに触れ、「集団の同質性が高く『ウチ』と『ソト』が分けられていない」「発言の問題性にそもそも気づいていないのかも」 とあります。

異議を表明した議員もいたけど少数=多くは異議を表明しなかった(意地悪な書き方ですが)。
気づいてなかったのか。問題ないと思って言わないのか。
気づいていたけど言わないのか。気づいていたけど言えないのか。

今頃ですが、この一連のミトコンドリア騒動の発端は「女性に選ばれるまち」について議会で話す中で起こったことです。
というのも、横須賀市は出産の中心的な年齢とされる25~39歳の女性人口が絶賛減少中だから。

横須賀市人口ビジョンより引用

「どうすれば若い女性が住んでくれる街になるか」と8割が男性の市議会で話し合うなかで、女性蔑視の失言が飛び出してるというこの状況。

父は仕事、母は専業主夫モデルをデフォルトで見て育った私みたいなミドルエイジでも新型の地獄みたいって思うのに、今どきの若い女性が「そんな横須賀に住みたい!」と思うかなあ。

*****

パンドラの箱からいろんなものが吹き出しまくってる感満載ですが、箱の中には最後に希望も残っているのがこのストーリー。

今回における希望は、この一連の発言を問題視し、横須賀市に抗議を行ったり、署名を集めたりしたのが、市にゆかりのある30歳未満の若者有志らだった、ということではないか、とヨソモノは感じました。

横須賀市のこと「どうでもいい」と思ってたら何もしないだろうに、こんなめちゃくちゃ手間や労力がかかるだろうことを経て、わざわざ「意識を変えましょう」と投げかけてくれている。
この少子高齢化の時代に、地方自治体をより良く、と自ら動く若い世代がいるって(言われる側は耳が痛いかもですが)頼もしいことに映ります。

ただでさえ日本のジェンダー観は移り変わっている途中。
もし未来をつくる世代の「今のカンカク」に耳を傾けることができたら、この失敗例(言い切ってすみません)もムダでは終わらないのでは?

*****

ニュース報道が出ていた6月、こんなツイートをしました。

今後の進化に対する期待は捨てていませんし、今回のことを残念に思っている現場の方たちだっているはずだ、って思いで応援しているので、どうかここはひとつ!

この騒動が、横須賀が自他ともに認める「人権・ダイバーシティの街」となるためのいい分水嶺になることを勝手に願っています。

※特定の政党や団体との関わりはございません。
※これまでの横須賀暮らしのあれこれはこちらから。


この記事が参加している募集

多様性を考える

最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さんからの「スキ」やサポートががとてもはげみになります!