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発音とは

ソプラノ歌手とか、オペラ歌手とか言われたことがありますが、自分は単なる歌手。歌い手でもいい。キラキラしたことに興味がないんだなあ、と自覚しなおすこの頃。

フィンランドでの声楽の先生の勉強には、発音も含まれます。
フィンランドでは、さまざまな言語を歌うのが普通。フィンランド語の声楽作品も豊富にあります。さらにドイツ語、イタリア語、スウェーデン語、英語、フランス語、ラテン語など、初心者であってもプログラムがたっぷりあります。スウェーデン語はフィンランドの公的な言語であり、フィンランド話者も学校で学ぶ、ということで、それを歌うのも普通と言えるのでしょうか。有名なシベリウスもスウェーデン語圏の方でした。おそらく日本の声楽科より、多いでしょう。英語だとミュージカルという事もあります。他の北欧、ノルウエイやデンマークの作品もあるので、さらっと学びました。スウェーデン語の発音をクリアしていれば、なんとかなります。

そういう環境で、私自身は、スウェーデン語のものに人生で初めて挑戦。苦戦したけど気に入った!ドイツ語ものは日本で歌って以来、なんちゃってっぽかったので、がっつり復習。新鮮でした。細かい講義はなかったものの、発音記号を目にすることは普通でした。紙の資料として手元にあります。

日本の大学の声楽科にいたときに、学生としてドイツ語のものは、まったく歌いませんでした。ただ、四芸祭で毎年「第九」の合唱に参加したことで、少しドイツ語に触れることができました。外国語の「発音」のコツ、って、あるんだなあ、と思いました。ドイツ語の発音はフィンランド語に通用するものもあります。ドイツ語の発音は同様に、スウェーデン語に共通するものもあります。

発音の習得は、時間がかかる、と思いましたが、「言ってりゃなんとかなる」面もありそうです。できるだけ最初から実際の発音に近いことが大切ですが、結局は体が覚えこむ事なので繰り返しも大切です。

フランス物は長く歌ってきましたし、慣れ親しんだ言語なので楽勝、とずっと思っていました。が、口の中の様子がちょっと違うと、歌う声も出にくいのです。ある日気がついて、治しました。「直す」というより「治す」でした。これぞ人生の大間違い。本当は日本にいるときに治してあったらよかったんだけど、しかたありません。

以上は、歌にまつわる私的なエピソードですが、外国語習得時にも発音は着いて回ります。フランスでは、話し言葉のメロディアスなところをさくっと把握して、文法は個性的としてもよく話す人もいるし、言葉の系列が近いスペイン語系の人は、メロディや間違いそっちのけでとにかく話す、と言う人もいました。最初に通った語学学校での、古ーい想い出です。歌の人は耳がいいから早くうまくなる、という友人もいたのですが、どうでしょうか・・・
当時は特におしゃべりでもないし、きちんとした発音を把握したいと思っていたので、その学校にいる間には、さほど上達しませんでした。フィンランドでももどかしい、似たような思いはしていますが、まあ、コロナ期間で面と向かって友達と会って話せなかった2年間のせいにしておきたい気持ちが一杯です。

フィンランド語での会話は、フランス語よりは日本語寄りに自由な気がします。あうんの呼吸とまでは行かない物の、なんとなくわかってもらえる率は、フランス語圏より高そうです。相手に通じなくて「わからない」と言われるときの、フランスの「はあ?何言っとんの?」と言う気配、見下されるような、からかわれるような気配を、あまり感じないところが楽です。フィンランドだと、「わからない」はわからないから、わからない、正直なだけなので、卑屈になる必要がない、と思っています。考えようによっては、はっきり「言ってくれる」し、表情があまり変わらないというフィンランド人の「わからない」はフランスの「まず顔をしかめる」わからない、よりは気が楽です。(真実は不明です)

で、発音と言うタイトルでした。フィンランド人がフランス歌曲を歌うのはむつかしい、らしいです。鼻母音があるからかもしれませんが、それはたったの4つ。他に、子音、母音のバラエティが多いから、難しいと思うのかもしれません。といっても、難しいというより、「時間がかかる」だけだと私は思います。
ただし、あまりに耳慣れない音のせいか、なかなか上達しなかったケースは実際にありましたが・・・これは、仕方ないと思います。自分の為にも言ってます。

フィンランド語の発音については、母語によって、発音しにくく感じることが人それぞれなんだろうな、と最近思います。長母音が苦手、と言う人がいたり、小さい「ッ」が入るタイプの撥音がうまくいかない、というのは、日本人には少ないケースだと思います。フランス人とイタリア人はHを発音しないので、それが努力するところ。日本人はウムラウト付が苦手だったりしますが、第九をドイツ語でうたっていれば、ウムラウト、はわりとあっさりクリアできます。

アアルトとカタカナで書かれていると私は「あー」と発音できず、「ああ」になりがちです。目で見る文字と発音との結びつきってつよいのかもしれない、と思うこの頃。フィンランド語は字の勉強がほとんど不要で、文法のバラエティが多いのが面白い所です。

書き文字を声に出して読めばよい、発音されたものを書けばだいたい正解、という、日本語に比べたらずっとお得なフィンランド語。発音の種類も、英語と比べたらうんと少ないのです。(英語って発音の種類が多くて難しいのに・・・)発音は、相手とコミュニケーションをとる道具で、文法よりも大切なのではないか、なんてことも、ときに思います。
何か気楽な習得法はないものでしょうか。

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