見出し画像

サステナブルな都市計画・デザインとは?

こんにちは。
スウェーデンからベルギーにもどり、ロックダウン中のブリュッセルにて、大学院の最後の学期を過ごしています。
全ての授業を無事に取り終わり、残すところは修士論文のみになりました。

これまでに学んできたことを日本語で言葉に起こすことができていなかったのですが、アウトプットしていきます。まずは自分のテーマである「サステナビリティx都市」について考えを整理したいとおもいます。


そもそも、サステナビリティとは?

少し長めの前置きになりますが、まず「サステナビリティ」というコンセプトについて。

同コンセプトは、1987年に国際会議で提唱された「持続可能な開発ーSustainable Development」に関する次の定義が出発点となっています。


「将来世代の機会を損失させることなく、現代人のニーズをも満たす開発」


国連が2030年までの達成を掲げている「持続可能な開発目標(SDGs)」がビジネスや全国自治体の政策に広がるなど、耳にする機会も増えてきた単語だと思います。

レジ袋や使い捨て容器の使用を減らす、海外産よりも生産者の顔が見える地元産の野菜を選ぶなど、環境や社会にとってより良い暮らしをすることを「サステナブルな暮らし方」と表現することも増え、一般生活者の私たちにも身近な存在になってきました。

私は「サステナビリティ」について、基本的には画期的なコンセプトだと思っています。環境や誰かを犠牲にする、現在の持続可能ではない社会経済の問題を認識し、より良い方向に社会を持っていく世界的な流れを作っているからです。

また、サステナビリティには複数の軸(環境・社会・経済など)があり、幅広い社会課題を取り上げることができる、包容力のあるコンセプトです。そのため、ビジネスや都市計画、農業や飲食業などのさまざまな分野で応用が効くのですが、その一方、どこの誰によって、どのような目的で使われるかによって異なる影響を生むため、批判的な視点を必要とするコンセプトでもあります。

中でも、いわゆる「グリーンウォッシュ」と呼ばれる使い方は問題です。課題を根本解決せずに新たな問題を生み出すような解決策が、サステナブルとうたわれていることがしばしばあります。

たとえば、使い捨てレジ袋の問題。素材をプラスチック製から紙製に切り替えても、袋が使い捨て用にデザインされている以上、品質が悪いので繰り返し使うことはできず、ごみの量を減らせません。素材が石油から木材に移行することで、今度は森林資源に負担をかけてしまいます。ここでは素材が問題なのではなく、使い捨てという資源を無駄に使うスタイル自体が問題で、これにアプローチしていく解決策こそがサステナブルといえます。


「サステナビリティx都市」

都市計画・デザインの分野では、サステナビリティというコンセプトを「都市ーUrban」という文脈で解釈した「持続可能な都市開発ーSustainable Urban Development」がさまざまな方面で注目を集めています。

都市にある課題をサステナビリティの観点からとらえ、最新のニーズに合わせた都市計画・デザインによって持続可能な都市へ移行していく、そんな取り組みが「持続可能な都市開発」というコンセプトの元、地元の文脈に合わせて実践されています。北米やヨーロッパでは、サステナビリティの浸透がおそらく日本よりも早く進んでいるので、まちづくりの分野でも事例が豊富で、自治体の政策レベルでも優先されています。

「持続可能な都市開発」では、具体的には次のような都市計画・デザインの解決方法が含まれます。

・より高い環境基準を満たした建物 (green buildings)
・社会的孤独や環境負荷を考慮した共同の家づくり(Cohousing)
・居住空間とオフィス、パブリックスペースを混ぜた土地の効率的な利用 (mixed-use developments)
・車よりもCO2の排出が少ない移動方法:徒歩、自転車、公共交通機関への転換(walkability, green mobility)
・誰もが使いやすい公共空間=パブリックスペース(inclusive public space)
・都市農業、屋上菜園、ベランダ菜園などでフードマイレージを減らす(Urban farming)
・コンポスト、リユース・リサイクルの仕組みの確率(circular economy)
・都市計画に街のユーザーである市民の参加を促す(Citizen participation)


画像2

自転車通勤が盛んなストックホルムの街並み。


まちづくりでもサステナビリティが注目されている理由


この動きがまちづくり界隈で進んでいるのには、トップダウンとボトムアップの両方が影響しています。

トップダウンでは、先に触れた国連が推進している「持続可能な開発目標(SDGs)」の17つの目標のうち、都市計画・デザインに直接的に関わってくる「11. 住み続けられるまちづくりをーSustainable cities and communities」が含まれていることがあげられます。

UNDPの目標11のウェブページによると、世界人口の半分以上が都市部で暮らしていて、今後も都市への移住が加速していると見込まれています。そのため、都市を舞台にサステナビリティを推進することが政策の優先課題にあがっているのです。特にEUでは、国連のアジェンダと呼応して政策を進めているところがあるので、資金調達がしやすいという動機も大きいとおもいます。

他の目標の達成についても、まちづくりを通して貢献することができます。

10. 格差をなくす:公営住宅を増やして低所得世帯への家賃の負担を下げる、公共交通機関の運賃を無料にして全ての人が使えるようにする、など
15. 陸の豊かさも守ろう:樹木を街中に増やしてさまざまな生き物のすみかを増やす、陸の利用に負担の大きい肉食を減らすために菜食を街中のキャンペーンで推進する、など


ボトムアップでは、緑が多くて空気がきれいな街に住みたい、子どもや女性も安心して出歩ける街が欲しい、宗教や文化の違いを抱擁するオープンな街にしたい、といった街の変革を求める市民の声が高まり、アクションをとる個人や市民団体が広がってきていることがあげられます。

ベルギーでは、街の緑化やサステナブルなビジネスを支援することを掲げる緑の党系が、市議会選挙で投票を集めています。直近の自治体選挙では緑の党が第一党になり、サステナビリティが政策立案で重要視され、サステナブルな基準を満たす市民プロジェクトに予算がおりやすくなっています。

画像3

ストックホルムは大都市にもかかわらず、湖や森などの自然がたくさん残っている。


文系脳のわたしが「持続可能な都市開発」に近づこうと思った動機


私はこの「持続可能な都市開発」をテーマに、2019年夏からブリュッセルとストックホルムの大学院で多くの学問分野にまたがりながら、ヨーロッパの事例を中心に勉強してきました。

建築や都市計画を勉強したバックグラウンドなど全くない文系のわたしがこのテーマに興味をもった動機は、とても問題が大きくて関わり方が分かりづらい環境や社会問題も、まちづくりというレンズを通せば、より身近に理解でき、多くの人と関わりながらプロジェクトをやっていけるのではとおもったからです。ベルギーに移住したいというのも動機でしたが、このテーマで勉強することにして良かったです。

ブリュッセルの大学院は「都市研究ーUrban Studies」といってより広いテーマで授業を扱っています(詳しいカリキュラムはこちら)。社会学、政治経済学、建築・都市デザインといった幅広い学問から都市で起きている現象を見つめ、その解決策を探りました。

ストックホルムには交換留学で行ったのですが、そこでは「持続可能な都市計画・デザインーSustainable Urban Planning and Design」に特化したマスターでした(詳しいカリキュラムはこちら)。今後も住み続けられる街・コミュニティに貢献するためのさまざまなツールやコンセプトに触れ、その土地に合ったストラテジーや解決策をデザインするグループワークを行い、持続可能な都市開発への理解を深められました。

卒業するために必須の論文では、このテーマを掘り下げ、ストックホルムとブリュッセルの事例比較をするのが目標です。

ブリュッセルの大学院に入るまでの道のりはこちらの記事にまとめたので、興味ある方は参考にどうぞ!(2018年の情報なのでやや古いですが)

同テーマに関心ある方、日本やヨーロッパ、その他の地域で活動している方、ぜひ情報交換しましょう!:)  

調査依頼などありましたら、ぜひお声がけいただけるとうれしいです。

画像1

自転車、歩行者が優先されている街づくりのオランダ・アムステルダムにて。昨年、ヨーロッパでコロナが流行り出す前にぎりセーフで行ってきた。

私の発信が、何かの役に立てたら嬉しいな。「心の声に耳を傾け、自然体で生きていく。」よりナチュラルで自分らしい暮らしに興味のある方に、今後も日々発見したことを共有していきたいと思います!