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三谷 晶子
2016年7月11日 23:04
鉄骨が浮かび上がる高い天井、丸く輝く大きなミラーボール。プラスチックカップに入ったべたつく甘い酒に真夜中どこからともなく現れる人、また人。初めてクラブに行ったのは中学生、13歳の時だ。もうすぐクローズを迎える芝浦GOLDは、当時早い時間ならばエントランスフリーで、その頃クラブのIDチェックはまだ厳しくなかったから私はラストまで毎日のように通い詰めた。閉店までの一週間、毎日通い詰めれば友達が
2016年7月6日 21:49
「心を踏みにじられるってよく言うよね。踏みにじられ続けたらどうなると思う? 砂になるの」風が吹く度に舞い散り、どんなにこぶしを握り締めても指の隙間から零れ落ちていく砂をそれでも集めた。もう手のひらには何も残ってなくて、だから地面に這いつくばって、指を唾液で濡らし、一粒でも指にくっつけば、まだある、私にはまだあるから、と。愛している、が、愛していた、になる瞬間を初めて知った。惨めさにも沸点が
2016年7月4日 20:43
背もたれに持たれて深く座ると私では足が届かないソファは完全に男のためのもので、そういったソファがあるのは、大抵は夜の店で、その男は、赤にシルバーのラインが入ったジャージを着てサングラスをかけて、左腕が包帯で釣られていた。私は紫のニットのワンピースを着て、網タイツを履いて、そりゃあもう見るからに夜の女で、座る時にハンカチを膝の上に置くのがいつの間にかデフォルトになっていて、水割りは手元を見なくて
2016年7月3日 00:02
初めて自分に怒りを覚えた日を私は明確に覚えている。その男の子は、大上くん、という名前だった。小学校の入学式当日。南の窓から差し込む日差しで埃が舞うさまが見える教室で、私は初めて出会う人種に会った。浅黒い肌、こぼれ落ちそうにおおきな瞳。くっきりとした輪郭を持つ唇や、小さな鼻ですらどこか他の子とは違った。私の隣にいた彼は、肩をすぼめ、けして誰とも目を合わせないように机に目を落としていた。周