見出し画像

学会で「弱いつながり」を初披露してきた

このnoteの音声ver.はこちら。前半はお酒の話。

9月17日(土)、18日(日)にNPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワークが主催する学会参加のため名古屋に行ってきました。

 僕は「在宅医療における多職種の断絶について考える」というテーマのシンポジウムのパネリストとして登壇させていただきました。このシンポジウムは宮崎詩子さんが企画して下さったのですが、詩子さんとはもう10年くらいのお付き合いになるかなー。
 
面白かったのは、座長がシンポジウムの紹介の時に、宮崎詩子さんが飲み友達を集めて企画したシンポジウムですと紹介されていたんです。仰る通り、詩子さんとは飲み友達でもあります笑。
 
一緒に登壇させていただいたのは、株式会社Smile Space 代表取締役の小川順也くん(以前、生き別れの弟と言われていました笑)、おくりびとアカデミー 代表取締役社長の木村光希さん、座長に医療法人すずらん会 たろうクリニック院長の内田直樹さん、そして、株式会社テレノイドケア 代表取締役の宮崎詩子さんでした。

それぞれが、それぞれの立場での断絶についての話をした上で、パネルディスカッションを行いました。詩子さんは、市民の立場でご自身の家族の介護の経験から感じた断絶を、順也くんはパーキンソン病に関わる中での社会保障制度の狭間という視点から断絶を、木村さんは納棺師、葬儀を行う中で、医療や介護が終わった後の断絶という視点から、僕は訪問看護ステーションや居宅介護支援事業、カフェを行う中で感じている、医療や福祉と地域の断絶について話をしました。
 
主催のNPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワークさんの定款を1日目の懇親会が終わってからちゃんと読んだのですが、コンセプトがとても素敵です。なんで読もうと思ったのかというと、懇親会で理事長さんが興味深い話をされていたんです。
 
地域医療研究会とNPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワークという2つの団体があって、それらを合併をして設立された団体なんですね。その際に懸念していたことがあると理事長さんが仰っていて、それは「医師が会員に多くなってしまうこと」と。
 
NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワークは地域共生社会を目指すことを掲げていて、その実現には医療だけではなく、地域住民も一緒にということを政府も謳っています。そこを考えた上で、人のバランスも考えて運営されているんだなと感じました。
 
この規模で市民を入れて一緒に活動するという団体はなかなかないですよね。学会の雰囲気はよくある医療系の学会と違ってラフに参加できるような雰囲気でしたが、運営や発表などは、もちろんきちんとしています。
 
僕自身はというと、例に漏れず短パンで参加させていただきました笑。たまに、チクっと言われることもありますが、今回は受け容れてくださっている雰囲気でしたよ。
 
さて、学会の内容ですが、9月17日、18日と現地開催でしたが、10月1日からはオンデマンド配信があって、まだ申し込めますので、良かったら皆さん視聴して下さいね。
 
シンポジウムの話はこの後にしようと思うんですけど、プログラムには面白いセッションがたくさんありました。医療系のセッションに限らず、ジェンダーに関わる部分だったりとか社会学者の上野千鶴子さんや斉藤幸平さんが登壇されたりと、多岐にわたる分野をテーマに議論がされていました。
 
では、僕が登壇した「在宅医療における多職種の断絶について考える」について話をしましょう。僕は「商店街がつなぐ住民との距離を痛感した訪問看護ステーション事業で得た学びとは」というテーマで話をしました。タイトルにある通り、今回のシンポジウムでは僕の研究である「弱いつながり」の初披露です。

また、断絶はかなりなパワーワードだと思うので、ネガティブに聞こえてしまう方って結構いると思うんです。だから、パネルディスカッションを行う上で、僕が考える断絶を予め伝え、会場の皆さんにも問いを投げておいた方が良いなと思いました。
 
僕からは「そもそも断絶って悪いことなんでしょうか」「つながりは良いことなのでしょうか」という問いを投げました。ずっとつながっていたら辛くなることってあると思うんです。時には断絶も必要かもしれない。
 
医療や福祉に関わる皆さんが「つながり」をどのように使ってるのかなって、昔から疑問に思ってて。つながりを距離として考えるのか、深度なのか、親密さなのか、時間なのか。僕が思うに、多分そこまで考えてないと思っています。

そこで僕はつながり方についての話をした訳ですが、僕らは「たまれ」はヒトモノコトが出会うきっかけづくりの場であると言っています。

例えば、こういう取り組みを良く耳にしませんか?
 
医療者が病院ではなく、まちで住民とつながりをつくるベくカフェを開く。そこに医療者がいて相談に来てもらうっていうやり方をしているところは多いと思います。僕はこれでは人は集まらないと思っています。もし集まったとしても、本音で話をしてくれる人はおそらく少ない。医師や看護師などの医療や福祉の専門職が、まちでも専門職として関わってしまうと本音で語ってくれないということが、僕の研究の中で分かったことです。
 
このように、自分たちが求める答えを直接的に狙うような取り組みってなかなか難しいと感じています。僕らはこういうコミュニケーション設計はしていなくて、シンポジウムでは、その前の出会いのための「種まき」や「きっかけづくり」が大事だよねって話をしました。
 
例えば、フラットスタンドはいろんな物が置いてあって、めちゃくちゃ雑多なんですよね。でもこの中にいろんなものが仕掛けられてるんです。本だったら、医療やジェンダーやアートなどのいろんな分野の本を置いています。他にもいろんなモノを置いていて、来てくださった方がどんなモノコトに興味を持つのかなーという意味でさまざまな仕掛けをしているんですね。

コーヒーを飲みながら、本を見ている人がいるとしましょう。僕らはここで話し掛けることはしないんです。どんなことに興味があるのかなーって見るだけ。もちろん、声をかけてくださったらお話をさせていただくんですが、そのまま話さずにお店を出ていくこともあります。
 
フラットスタンドの目的としては、病院や施設以外のまちの中で、医療や福祉のことをフラッと相談に来れることですが、僕らは医療や福祉の専門職ということは謳っていません。関係をつくっていく中で、医療や福祉の話題が出てくれば、実は僕らは専門職でして…って話をしています。
 
このように医療や福祉の文脈以外のところで、出会いのきっかけづくりをつくるようなコミュニケーションのつくり方を心がけています。僕のシンポジウムではこのようなきっかけづくりの話を「弱いつながり」をテーマにさせてもらいました。
 
終わってからさまざまな質問をいただいたり、名刺交換をさせてもらったりと、面白がってくださった方は多かったのかなと思います。
 
学会のテーマに地域共生社会が掲げられていたので、他のシンポジウムでも「つながり」の話をさせている方が多かったんですね。ただ、あなたにとって「つながり」をどのように考えるのか、というところまで話をされている方はいませんでした。
 
「つながり」大事だよね、つなぐことが大事だよね、繋がっていくことが大事だよね、連携することが大事だよねという話は多く出ていましたが、僕はどのような意味で大事と考えるのか、ということを知りたかったですね。
 
医療業界では「つながり」はまだまだプラスティックワード、形骸化したワードとして使われているんだと改めて感じました。僕自身の研究についても、引き続き医療の中でやっていくことで、医療や福祉の専門職が「つながり」について深く考えるようになるんだろうなと思いました。
 
来月は仙台で日本ホスピス・在宅ケア研究会に参加しプレゼンもさせていただきます。その時も今回と同じような「つながり」の話をするんですが、医療系のところで「つながり」について話をして議論を深めていくことが僕の役割かなーと今回の学会で感じるようになりました。


長くなっちゃったので、今日はこのくらいにしておきます。
学会に関してはもっと話をしたいことがあるので、また別の機会にしたいと思います。
 
繰り返しになりますがンデマンド配信は10月1日からです。皆さんにはぜひ聴いて頂ければと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします!
 
ではまたー。


たまれオープンデイの申し込みはこちら(9月24日(日)10:30-)

かすやが共同代表理事を務めるCancerXの昭和大学リカレントカレッジの申し込みはこちら(9月15日締切)




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?