カミュになりたい。

神経質なほどに手を洗ってアルコール消毒しているので、手荒れが酷い。カサカサしているし、たまに血が滲んでいる。数回使って放置していたハンドクリームに助けられている。これが無くなったら、ちょっと良いやつを買っちゃおうかな。

荒れているのは手だけじゃなくて、心も大分ガサガサだ。新型コロナウイルスにあらゆるものを奪われた。小生は公演が飛んだりしていないのでまだマシな方だけど。でも、観劇の予定はいくつか飛んだし、友達や同世代の公演もほぼ無くなったし、やばい額の負債を抱えている知り合いもいるし。4月中の稽古も無くなったし。本番、やれるかな。演劇のことを考えると心が重くなる。ダークプリズン煉獄のおかげでちょっとは元気になれたけど(こうして書くと全然意味わからんな)。
本当は人を殺してでも演劇をやりたいのだけど、そもそも命がなければ演劇はできないし、もどかしい。先行きが不透明すぎて年間スケジュールが立てられない。少なくとも年始に想定していたスケジュールは絶対無理だ。小生は本業が学生だからいいけど、演劇で食べている人達はもっと大変なんだろう。
大学も今月末まで始業が延びた。本当に開校するのだろうか。休校延長が声高に叫ばれているけど(そして国内の感染状況を省みると妥当だとは思うけど)、正直単位がやばいので大学が始まってくれないと困る。ゼミは演劇の実習なので、直接会わないと話にならないし。ゼミが一番心配だ。夏休みの合宿楽しみだったけど無理かもなあとか、先輩の卒業公演だけはなんとか開催してほしいなあとか、いろいろ不安でしかたがない。ゼミや大学に限ったことではないけど、そんなに簡単に教育を諦めていいのだろうか。何とか教育の場が続けばいいのだけど。

情報を得たいからTwitterばかり見ているけど、同時に鋭くてどす黒い言葉も沢山摂取してしまって落ち込む。
確かに愚かな行動をする人もいるけれど、人殺し呼ばわりして袋叩きにしなくてもいいじゃないか。支援を求める声に「皆大変なんだ、ずるい、我慢しろ」って、いやあなたも苦しいと声を上げて良いんだよ。皆平等に納税してるんだから。政権批判をすると左翼って、右翼とか左翼とかいう問題じゃなくないか? 自分の命がかかっているのに。
今のギスギスした雰囲気は新型コロナウイルスが原因というより、もともと人間に備わっている醜い部分が新型コロナウイルスをきっかけとして露呈しただけにすぎないと思う。

優生思想についてよく考えるようになった。何となくだけど、現政権と日本社会は優生思想に基づいて動いているような気がしていた。それを今、もっと肌感覚で感じる。
政府の経済政策は感染が終息した後のことばかりで、感染が拡大するなかで失われる命や生活のことは考えていないように思う。パンデミックを生き抜いた人のみ助けるというか。補償や給付金が一切無いわけではないけど(にしたって貸与が多い、借金かよ)、どうもアクセスしづらい。本当に助けが必要な人ほど、情報に辿り着けないのに。大々的に広報しないのは、消極的な弱者の切り捨てだと思う。「情弱乙」で済ませるのって、問題の本質を履き違えてないか?
外出自粛は絶対に必要だし、休校も必要だと思うけど、家に居場所がない人たちはどうしたらいいのだろう。DVとか、虐待とか、どうやって逃げたらいいのだろう。悲しいけどこの世には親から愛されない子供がいるし、暴力に支配された家庭もある。ワンオペ育児は? 高齢者の介護は? 家がない人は? 弱者が見逃されている。
自己責任論が怖い。人の数だけ生活があって、世界の見方も変わって、いくら想像力を働かせても追いつかない。決まった正しさなんてないのに、「自己責任」という言葉で切り取っていいのだろうか。「自業自得」「ざまあみろ」なんて、小生は言えない。個人的な感情として抱いてしまうのは理解できるし、「こんな奴のために自分の命を危険に晒して治療する価値はない」という医療従事者の方にはちょっと共感できてしまったけど。

昨年の夏に『窮鼠たちのメメント・モリ』という戯曲を書いた。カミュの「ペスト」をモチーフにした、神と流行病の話だ。「ペスト」では気高い人間が描かれているし、カミュは立派な人だけど、現代人にはとてもじゃないけど無理だよなと思って小生は最悪を描いた。はずだったのだけど、現実は想定していた最悪を軽々と飛び越えてきた。小生は劇作家としてまだまだ甘かったなと思ったし、本当に勘弁してくれよという気持ちでもある。
小生は「国」という概念はナンセンスだと思っているし、主語が大きい人間は大嫌いなのだけど、グズグズの政治や攻撃的な言葉や最悪のインターネット大喜利を見続けている最近は自分が日本人であることが嫌になっている。本当にナンセンスな感情だ。地球上の何処に行ったって人間は醜いことに変わりはないのに。

メンタルが瀕死だ。高齢者家庭の実家には怖くて帰省できないので、名古屋の狭いワンルームで約1ヶ月ひとりぼっちだ。恋人が近くに住んでいるけど、相変わらず出張ばかり。部屋でずっと寝ている。集中力が著しく落ちていて、何をするのも続かない。せっかく本も漫画も沢山買ったのに。沢山映画見ようと思っているのに。酒と煙草で何とか生きている。このままだとまたブロンに手を出しそう(良い子の皆は検索しちゃ駄目です)。
でも誰かのために行動している人もいるし、小生の周りはそういう人の方が多いから、その人達のことを忘れちゃ駄目だ。正直「私が好きな人間以外全員燃やす」という気持ちだけど、燃やした人間だって誰かの好きな人だから。それに、怒りは正しく使わなきゃ。小生は現代のカミュになるぞ。
とにかく冷静に。そして平穏に。メイク配信とかオンライン飲み会で心の栄養を補給しつつ、作品をインプットしたい。そして、人間の生活のためにちゃんと怒っていきたい。正しく、冷静に、怒る。戯曲も書かなきゃだな、小生は自称・怒りの作家なので。
小生はまだ人間を諦めたくないし文化芸術も演劇も諦めたくない。不条理に慣れちゃだめだ。カミュもそう言ってた。

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