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  4-⑰ 安寧の光

 サーフスポットでもあり、Tシャツアートで有名な入野海岸近くの民宿では、たくさんのお接待を受けた。
 鰹のタタキ、鮭とキノコのおろし蒸し
、豚の生姜焼き、仏手柑の味噌和え••• 75歳のお母さんの手料理は、彼の疲れきった身体に活力を与えるのに充分であった。5〜6人は入れるであろう、広い湯船で疲れを癒し、望遠鏡で輝く星々を眺めながら、眠りに就いた。

 出立する彼に手渡されたのは、おにぎり、唐揚げ、コロッケ、卵焼き、きんぴら•••心尽くしのお弁当であった。

 お母さんは手を振り続けた。
彼は何度も振り返りながら、手を振り返した。

 歩けども、歩けども、満開の桜の花が舞い、キラキラと輝きを放っていた。

 まるで、花行脚のようであった。


 彼は目を奪われていた。
空が金色に染まり、海と溶け合っていた
。沈みゆく太陽を飲み込まんとする雄大な海•••その美しい光景を目に焼き付け、やがて彼は歩き出した。

 見覚えのある灯台が近づいた来た。
白亜の灯台が、暗闇の中を1人歩く彼を導くかのように、明滅を繰り返していた。

 そのすぐ側に建つ札所には6度来たことがあった。
 彼女の両親の墓参りに5度、そして•••昨年11月中旬の、彼女の四十九日法要。

 巡礼中の彼は、その日確かにそのお寺の山門を潜った。そして•••彼らとすれ違ったのだった。

 背中を向けた彼の目から溢れ出したものがあった。


 住職は、彼のこれまでの労苦を労い、庫裡へと案内した。

 目の前には稲荷寿司と卵焼きとすまし汁、そして住職自慢の高級茶が並べられた。彼女自慢の稲荷寿司を一口食べた住職がそのレシピを所望し、彼女が教えを授けたという、2人はいわゆる料理においては、師弟関係にあったのだ。

 2人は言葉を発することなく、黙々と料理を口に運んでいる。
 思いは言葉を超えるのだろう。
住職は彼を信じていた。この心の修行を通し、より一層の強さを身に付け、元の世界に舞い戻ることを。
 そして、彼の仲間達もまた、彼を信じていた。

 住職は、彼の仲間達からたくさんの手紙を預かっていた。
 今はまだその時ではない。
その時が来るまで静かに見守ろう•••今はただ、無言で、彼の背中を押すだけなのだ。

 彼は桜の大木のすぐそばにあるお墓を見つめていた。
 やがて、桜の花びらで彩られたお墓を丁寧に清め、何かに問い掛けるかのように手を合わせた。

 姿を変え現れた、天国からの使者であろうか•••真白の蝶が3羽、ふわりふわりと風に揺られながら、彼の周りを飛び回っていた。
 彼が空を見上げたその時、1羽の蝶が彼の肩に止まった。

 安寧の光が、彼の背を照らしていた。


 手を伸ばせば届きそうな丸い月が、天空の頂上で眩いばかりの輝きを放っている。
 また、明日から歩まねばならない。
彼の心の修行の旅は、まだ終わってはいないのだ。

 彼は再び体を横たえて、静かに目を閉じた。

天国からの使者⁉︎

 PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥲🥹次回配信は2月14日水曜日午前8時です。心の修行に励む翔馬を待っているサラブレッド達が、仲間達がいる。翔馬を思いながら、前へ前へと進む。競馬は止まらない!早く戻ってこい、大空翔馬!

 あと少しで、北への馬巡り旅🐴🐴
14日から20日まで、様々な牧場に顔を出します👀📣大切な知人の紹介で、日本人では初めて、その牧場に招待されるという栄誉を授かりました😊🥹紹介してくださったMOさん、受け入れてくださるP様
、本当に有り難うございます。🍷ワイン持って行きますね😊

 約8ヶ月ぶりの乗馬•••緊張するなあ😅
何とか呼吸合わせなきゃね😅😅

 元道産子(18まで札幌在住でした)、寒さが苦手😅東京にいるのに霜焼けなってるし😢寒さ、大丈夫かなあ🥺🤭

 落馬しないように、🤧風邪🤧引かないように頑張ります🔥💪皆様もご自愛の程を‼︎

 それではまたお会いしましょう!!

         AKIRARIKA


競馬学校創設以来初めて、JRA史上初の調教助手からの騎手誕生🐣🎊坂口智康さん!
栗東の調教師の坂口師と同姓同名だけど、血縁関係は無しとのこと😅
ハードル界もこれから益々盛り上がるのではないでしょうか!応援しなきゃ📣📣
やっと届いた海岸の砂浜を走るあの子🤭🤭
それにしてもよく書けてるなあ👏👏


    それではまた〜👋👋


         AKIRARIKA

 この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇