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'95 till Infinity 156

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【 第9章 : Unfolded Nothing-⑤ 】

「怒ってないのか?」

そう聞いた俺に、カイロは首を振って苦笑いを打ち消し、馬鹿なことを言うなと眼で答える。

「そりゃ、俺だって怒ったさ。これで怒らない奴なんてどこにもいないよ。誰よりも信じていたはずの親友が自分の彼女と寝てるんだよ。そんなの怒らない訳ないよ。

あの頃はいつかパースに帰ったら、絶対にぶっ殺してやるって思ってたし、今だって、今日だってそのことを考えて何回か怒りを殺すのが大変だったよ。

けどさ、もう10年も経ってるんだよ。10年っていえばさ、人を殺したってそろそろ出て来る頃だよ。初犯で中での行いがよければ、6、7年ってとこかな。

そう考えると怒る訳にもいかないよね。親友の彼女と寝るってのはとんでもないことだよ。許されることじゃないのかもしれない。けど、それが人の命を奪うことよりも重罪だと俺には思えないんだ。

それにさ、エマを殺したのは俺なんだ。その俺がお前を非難することはできないよ。本当に悪いのは俺なんだ。その俺が人様を責める権利なんてどこにもない。結局はそういうことなんだ。」

「けど、お前が彼女を殺した訳じゃない。自分でそう言ったじゃねぇか?」

そう絞り出した俺のセリフにカイロは肩をすくめて、ゆっくりと答える。

「いや、殺したさ。そして、これは俺が一生背負っていかなければいけない十字架なんだ。直接的であれ、間接的であれ、エマを俺が殺したのは俺だ。

そして、これは俺が一生、自分に刻んで生きていかないといけないものなんだ。自分でも言っていることが矛盾していることはわかっているよ。

けどさ、人生なんて矛盾の塊なんだよ。それが俺たちが生きていくということなんだ」

そう言って、カイロは新しい煙草に火を点ける。


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