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映画評論11「護られなかった者たちへ」

久しぶりの映画評論です。
新型コロナでまたも公開が延期になっていた作品です。

作品情報

護られなかった者たちへ:2021/10/1 公開
視聴日:2021/10/24

監督: 瀬々敬久
脚本:林民夫、瀬々敬久
出演: 佐藤健、阿部寛、清原果耶、林遣都、永山瑛太、緒形直人、吉岡秀隆、倍賞美津子

ストーリー

東日本大震災から9年が経った宮城県の都市部で、被害者の全身を縛った状態で放置して餓死させる連続殺人事件が起こる。容疑者として捜査線上に浮かんだのは、放火と傷害事件を起こし、刑期を終えて出所したばかりの利根(佐藤健)。被害者二人からある共通項を見つけ出した宮城県警の刑事・笘篠(阿部寛)は、それをもとに利根を追い詰めていく。やがて、被害者たちが餓死させられることになった驚くべき事件の真相が明らかになる。

生活保護という制度を深く描いた社会派ミステリー作品です。

感想

職業柄、生活保護受給者とは普通の人たちよりも多く関わっていますが、少なくとも僕が経験してきた医療の現場では、財産を持った人の受給や、働ける健康な若者の受給など、適切とは言えない受給の現場を見ることが圧倒的に多かったです。

本作でも描かれているように、国の世話にはなりたくないという人が一定数いるのでしょうが、それは僕からは見えていない世界でした。

それぞれが、どの割合で存在しているのかはわかりませんが、結局は個々の人の問題であり、また少数だから切り捨てていいというわけでもないわけで、制度全体を考えることと、個々の人たちへのアプローチの両方が必要になってくるのだと思います。

しかし、生活困窮者を助けるべき国、日本の力がどんどん弱まっているということは、残念ながら事実です。
一人当たりのGDPの世界における日本の順位は徐々に下がってきていますし、一般の人たちの体感としても、世界の中での日本の位置が下がってきていることを感じる場面が多くなってきているのではないでしょうか。

つまり、すべての人を十分に助けるだけの力は、この国にはないということです。

貧困とは?

また、貧困とは単にお金がないということではないと思います。
困窮者にいくらお金を与えても、すぐにまた困窮者に戻ってしまうことは、何となくイメージできるのではないでしょうか。

途上国にいくらODAで資金を投じても、一過性で根本的な改善は得られないことと同じ構図なのだと思います。

もっと根本的な部分として、お金の使い方、稼ぎ方、
そもそも、お金とは何なのかを学ぶ必要があると考えています。

日本の教育で決定的に欠けていると、以前から考えている部分です。

正しさと多様性

本作を見ていて、みんながそれぞれなりの正しさを基準に行動しているのに、それがすべての悲劇の原因になっていると感じました。

何が正解なのかわからない。
そもそも正解なんてない。
その中で、それぞれの正しさが、それぞれの正解になってしまっている。

つまり、自分の正解と違うものは間違いだという認識。
さらには、その間違いが悪であると認識されたことによる悲劇。

日本の、正解が一つに決まる教育の弊害はよく言われることですが、それをもっと多くの人が認識する必要があると思います。

世界でもっとも多様性を受け入れられないと言われる国民性も、根本はこのような教育から来ているのかもしれません。

とても複雑な、様々なことを問いかけてくる作品です。
新型コロナの真っただ中にある世界、ぜひ多くの人に見てもらいたい作品です。


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