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ある映画を観て

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青春の現実/「エイトグレード」ボー・バーナム監督作を観て

自分が好きで、自分が嫌いで。
変わりたくて、変われなくて。

映像や音楽の効果はとてもポップで映画らしい印象なのとは対照的に、ストーリーの展開はいたってシビアで現実的だ。

ものすごく不幸なわけじゃない。大きな障害があるわけでもない。ただ誰かに認めてもらいたくて、勇気をだしてみても報われるわけでもない。 期待したようには世界は変わらない。

YouTube、Twitter、Instagram、Sn

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ゴジラが歩けば大地は萌え海は凪ぐ/ GODZILLA King of the Monsters を観て

一言でいうとゴジラ教のプロパガンダ映画であった。
ゴジラが王であり神なのだ。これ絶対。
観る者は神を前に首を垂れるのみである。

とにかく全編をとおして監督がゴジラを愛していることがよく分かった。
キングギドラのこともキングコングのことも「ギドラ」「コング」と呼び絶対にキングとは言わない。なぜならキングはゴジラ唯一人であるから。
だいたいギドラが全然かっこよくない。なんか調子乗ってる感というか、重

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「Mommy」グザビエ・ドラン監督作を観て

『博士と彼女のセオリー』を観た時にも感じたことだが、映画のひとつの効果として「過酷な物語を軽やかにみせる」というものがあると思う。
軽んじるという事ではなく、重さのバランスをとるという意味で。

評判からつらい内容だというのは知っていた。

それでもポスターにどうしても惹かれて見ることにした。オンデマンドだから、いやだったらすぐ止めればいい。

始まってすぐに右手はタッチパネルから離れていた。

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こういうの、ズルをするって言うのよ/「罪の手ざわり」賈樟柯監督作を観て

ジャンクー監督の作品は初めてだった。
映画冒頭、倒れたトラックから大量のトマトが散らばっているシーンを見た時、ああこの映画を観てよかったと思った。
色の置き方、映し方。
最初から最後まで、映像が圧倒的に美しい。
それと並行に音の使い方も印象的だ。
外への暴力は過剰なまでに強く、内への暴力は呆気ないほど静かに。
劇中で、少女が金魚を放流する際の言葉が耳に残る。
「知ってる?こういうの、仏教では『ズル

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