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スタートアップで働きながら不妊治療を経て出産した話

この記事はUMITRON Advent Calendar 2023 6日目の記事です。


こんにちは!ウミトロンでHR・PRを兼任している佐藤ことあこてぃす(@akotisumitron) です。気がつけば、ウミトロンももう6年目に突入…現在は育休中です。

これまで書いてきたブログのほとんどがウミトロンの仕事やキャリアの話だったのですが、今回は私の人生における一大イベント「出産」に至るまでの話を赤裸々に書こうと思います。

スタートアップで働くにあたって仕事との両立を不安に思う方、また女性のキャリア支援や産休・育休取得を推進する企業人事の方々にとって、少しでも参考になることがあれば幸いです。

※子供を授かることが叶わなかった方にとっては、出産に関する内容は辛く感じることもあると思います。その場合、ここから先の内容はご放念ください。


はじめに

2023年11月15日に、第一子となる娘を無事出産し、33歳で母になりました。現在育休中で、来年4月入園が叶えば職場復帰予定です。
完全に親バカ状態なので、今はもう可愛くて可愛くて仕方ないのですが、元々は出産願望は強い方ではありませんでした。

生まれた時から親譲りの毛量を誇る我が姫

仕事が楽しくてやりたいことだらけで夢中で働いていたら、旦那さんとは週末婚状態(要は一緒に住んでいても平日はほとんど顔を合わせることもなく、週末だけ結婚生活送っているような状態)、プライベートも旅行やお酒が好きだったこともあり、今の生活を変えて仕事と両立しながら育児をするイメージも自信もありませんでした。

そんな私が「子供を産んで育てる」という、自分の人生を大きく変えるような決断をして出産まで無事終えることができたのは、

  • コロナ禍から現在まで全社で継続している「リモートワークベース・出社義務日なし」の働き方

  • フルフレックス(コアタイムなし)

  • 社内で長期産休・育休取得している先輩パパ・ママたちの存在

  • 休業中の業務を快くサポートしてくれるメンバーとカルチャーの存在

が本当に大きかったです。
以下、出産までの過程を振り返ってみます。

昔を振り返るような遠い目をする我が姫

仕事と育児の両立のイメージを持つ

前述のような働き方をしていた私にとって、子供を産むことによって「今までの働き方や勤務時間を大きく変える必要があること」「それによってキャリアを制限される可能性があること」は非常に大きな懸念でした。

子供の保育園への送迎、熱など体調不良時の緊急のお迎えなどを夫婦で分担するにしても、通勤があることによって勤務時間は必然的に制限されます。また、授乳(ミルク)や沐浴、大きくなってきたら離乳食や食事の用意など、ある程度子供に毎日割く時間も増えます。

「まだまだ思う存分働きたいし、やりたいこともたくさんある。が、産むなら35歳を一つの節目として産みたい」という葛藤を密かに抱えていました。

妊娠する確率や、障害などのリスクなども踏まえると、35歳という年齢は医学的にも一つの目安のラインとして言われています(もちろん、35歳を超えても母子ともに元気で健康に出産される方も大勢いらっしゃいます)。
キャリアと出産、大事な時期が女性にとっては被るのです。

ところが状況が一転、コロナをきっかけに始まったリモートワークが大きくライフスタイルを変えました。私の場合は、コロナ禍が明けた後でも夫婦双方ともにフルリモートワーカーになったのです。

通勤がなくなったことにより、保育園送迎後すぐに働くことができ、またお迎え時間ギリギリまで働けることで、勤務時間を通勤時と比較して+1~2時間程度多く確保できることが想定されました。
また、夫婦共にリモートワーカーになったことで、より家事や保育園送迎等の役割分担もしやすくなり、一気に子育てに対する心理的ハードルが下がりました。

また、ウミトロンがコアタイムなしのフルフレックス制であるため、例えば「朝早起きして働き、一旦保育園に送りに行ってから仕事を再開する」「一旦保育園にお迎えに行ってご飯を食べて、子供を寝かしつけた後働く」といったことも柔軟にできます。

「夫婦フルリモートワークでフルフレックスなら、私みたいにガッツリ仕事したいタイプでも、仕事と子育ての両立ができるかもしれない・・・」と自信が持てるようになったのです。

元々、旦那さんは子供が欲しくて父親になりたいと強く思っていましたが、改めてお互いのライフスタイルや子育てに対する価値観を話し合い、私自身の前向きな気持ちの変化についても共有した上で、「子供を産んで育てよう」という決断をしました。

不妊治療

決断をしたのは31歳のとき。35歳までを目安に出産を検討すると、あまり多くの時間が残されているわけではありません。1年に12回しか妊娠のチャンスはないのです(私の場合は排卵周期が長く、実質年に10回でした)。半年経っても妊娠しなければ、一度産婦人科で検査をしようと考えていました。

そして半年後、徒歩10分のところにあるクリニックを予約して受診しました。まず、初診の予約が3週間待ち、初診の所要時間4時間、その後も不妊の原因を特定すべく様々な検査を約1週間おきに約2ヶ月間受けました。
検査や診察にかかる時間はおおよそ5分程度なのに、平均して3時間程度、最長4時間程度病院での待ち時間がありました。

正直、検査の時点で病院での拘束時間の長さに心が折れそうでした。。。私は幸いにもリモートワークができたため、PCを持ち込んで病院の待合室(なんと病院に自由に使える会議室があった!!)で診察の順番を仕事をしながら待つことができましたが、不妊治療のためにクリニックに通っている世の中の女性の多くが、おそらく有給や時間給を使うか、有給が柔軟に取得できない職場であればキャリアを諦めるか不妊治療を諦めるかの選択を強いられているだろうと、容易に想像ができました。

実際に厚生労働省出典『不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル』では、不妊治療をしたことがある(または予定している)労働者の中で、仕事と不妊治療の両立状況に関して「両立できず仕事を辞めた(16%)」「両立できず不妊治療をやめた(11%)」「両立できず雇用形態を変えた(8%)」という調査結果が出ています。35%もの人が、仕事と不妊治療の両立が難しくどちらかを諦めざるを得ない状況です。

また、通院回数と拘束時間の負担もさることながら、日時指定での通院を強いられることも多々あります。排卵のタイミングに合わせて、病院から「明日か明後日のこの時間に来れますか?」と日時指定を頻繁にされるのです。これではいくら有給あっても足りず、かつ急に明日明後日の通院のために柔軟に休みを取得できる会社は非常に少ないでしょう。

フルフレックスでリモートワークができる環境に私自身は本当に助けられ、仕事と両立しながら通院して詳細な検査を受けることができました。そして実際に子宮内のポリープ切除や子宮内膜炎治療などを経て、通院開始から約1年で無事に子供を授かることができました。

妊娠がわかった時の超音波写真。まだ胎芽と呼ばれるフェーズ。

まだ1cm程度の大きさなのに、心臓の音が超音波で聴こえた時には、本当になんとも言えない不思議な感覚に包まれ、生命の神秘を感じました。

妊娠中

無事に不妊治療を経て妊娠したものの、妊娠期間中はずっと平穏で順調!というわけではなく、実際には常に不安な気持ちや、時に体調不良(主につわり)と隣り合わせで出産までの期間を過ごしました。

安定期に入るまでは流産、臨月に入るまでは早産のリスクを常に気にしながら生活を送り、また妊娠期間を通して食事や運動にも気を使わなければいけません。

産後に自宅で食べた出前の寿司。10か月ぶりに食べたら飛んだ。

また、何といっても一番しんどかったのはつわりでした。つわりは個人差が大きく、全く何もない人もいれば、吐きづわりで水も飲めなくなってひどい場合は入院が必要な人、においづわりで食べ物のにおいを嗅ぐと気持ちが悪くなる人、食べづわりで何か食べていないと気持ちが悪くなる人、など様々なタイプと重症度に違いがあります。

私の場合は主ににおいづわりで、台所や流し、冷蔵庫のにおい、料理のにおいを嗅ぐだけで速攻で「うっ!」っときてトイレにダッシュを繰り返していました。症状が軽い日でも最低2回、ひどい日には4-5回トイレに駆け込みました。

「自分の仕事部屋の隣がトイレで本当によかった…」「通勤中やオフィスで気分が悪くなった時に我慢できる自信がないし、そもそもトイレ埋まってたら詰んでるやん…」と、何度思ったことか。。。

また、通勤時の電車も、特に妊娠後期になると長時間荷物を抱えて立ったままの状態はかなりしんどくなります。ほとんどの人が車内でスマホを見ているので、マタニティマークをつけて優先席の前に立っていても気づいてもらえることはレアです(自戒も込めて、少なくとも優先席に座った時は、駅に停まったら必要な人が付近にいないか気を配るようにしたいなと)。また、そもそも満員電車では優先席まで辿り着くことすらできません。

不妊治療期間中だけでなく、妊娠期間でも心の底からリモートワークの有り難みを感じるとともに、世の中の働く妊婦さんへのリスペクトをひしひしと感じました。

出産(産休・育休)

妊娠33週に撮影したマタニティフォト。将来姫が大きくなったら見せたい。

妊娠8ヶ月頃から、産休・育休に入ることを意識し、自分が担当している業務やタスクの棚卸しと引き継ぎを始めていきました。

正直なところ、スタートアップで毎年事業成長・組織成長している状態の中で長期間抜けることへの抵抗感や不安感、スモールチームでそれぞれの業務もタイトな中で、さらに追加で業務の引き継ぎをお願いすることに対する申し訳さをずっと抱えていました。

しかし、社内でお手本となる産休・育休を取得している先輩パパママが存在していたことによる安心感、そして妊娠を一緒に喜んでくれて相談したら快く助けてくれるメンバーとカルチャーに本当に救われました。

ウミトロンはおめでたいことに近年ベビーラッシュで、育休を数ヶ月〜半年程度取得したパパが3名、産休・育休を1年前後取得したママが2名(内1名は取得中)います。
Slackでパパママチャンネルを作ったのですが、「泣き止まない時にどうやって泣き止ませたかノウハウ投稿するスレ」や「赤ちゃん用爪切りはハサミと電動どっちがいい?」「お昼寝時間に関する相談」など、色々先輩パパママに質問したり、写真付きで可愛い我が子自慢をしたりと、育児に関するコミュニケーションも気軽にできます(そして可愛い写真に癒されます…)。

先輩パパママのアドバイスで、爪切りは一旦ハサミにしたよ!

また、「サポートできることがあれば何でも言って!」「任せて!子育てだけに集中して!」と快く助けてくれている周りのメンバーには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ウミトロンの6つのValues(行動指針)の一つに「Raise your flags and support others' flags」というValueがあります。「自分が舵をとる船の帆を揚げる(=自分で自律・リード・挑戦する)、他のメンバーがそれをサポートし、応援し、感謝する」ことを表現しています。
産休・育休取得にあたっては、まさに「support others' flags」がウミトロン内に根付いていることをひしひしと感じました。

とはいえ、一般的な職場でよくある問題として、引き継ぎしたメンバーに追加で負荷がかかることで勤務時間が長くなってしまうのに何も支援がなかったり、給与も評価も変わらないことで不満が溜まってしまったりするようなケースもあります。
一部の大手企業では、産休・育休取得者がいる部署や引き継ぎ担当者に手当を支給し始めるなど、不満の解消に向けた取り組みも始まっているようです。

ウミトロンでは、上記の手当のようなものは支給していませんが、以下のように業務負担を減らす工夫を引き継ぎ時に意識してしているように思います。

  • 引き継ぎ業務の優先順位や、産休・育休中には「やらない(一旦止める)業務・タスク」を決める

  • オペレーションに関しては、極力効率化や自動化をする

特に「やらない業務・タスクを決める」というのは、意志を持ってやらないとできないことだと思います。
「やらなければいけないこと」「やった方がいいこと」「やらなくてもいいこと」があった時に、「やらなくてもいいこと」を切るのは簡単です。
一方、「やった方がいいこと」についてはそのままついつい継続してしまうことが多いように思います。また「やった方がいいこと」は、仕事をしていると「あれもやりたい」「これもやった方がいい」とどうしても増えがちです。
思い切って「これはやらない」「これは一旦止める」という選択を取ることが、事業上の優先順位の見直しにもなり、かつ引き継ぎ先のメンバーの負担を軽減することにも繋がると思います。

終わりに

「みんな、サポートありがとう☆」by 姫

私自身は本当にありがたいことに、働く環境や制度、メンバー、そしてカルチャーに恵まれていると思います。一方、どの会社でもそのような状況ではないことや、出勤や対面でのサービス提供が必須の方々にとっては現実味がないという場合もあるでしょう。

とはいえ少子化が急速に進み、2023年も過去最低の出生率を更新すると推測されているような状況下で、政策に頼るだけでなく民間企業側でも仕事と出産・育児の両立ができる社会を作っていく必要があります。働きたいのにキャリアを諦める女性が一定割合いるのは非常に勿体無いです。

有給や時間給取得の柔軟性の確保、不妊治療のための特別休暇の整備、通院や家庭の都合に応じて柔軟にリモートワークを認め切り替えができる制度、フレックス制など労働時間を柔軟に調整できる働き方、サポートする周りの人の負担軽減や評価につながる仕組みなど、男女関係なく仕事と出産・子育てが両立しやすい企業が今後少しでも増えたらと思います。

そのような企業であれば、社員も自然と長く企業に所属して働きたいと思え、企業そのものや周りの社員・組織に対するエンゲージメントも高まるのではないでしょうか。


ウミトロンでは一緒に働く仲間を募集しています(特にIPOを見据えて採用強化中のCFO候補、経理の方…!!)。
「持続可能な水産養殖を地球に実装する」というミッションの元で、私たちと一緒にexplore uncharted waterしましょう!!!⛵️🌊
残りのアドベントカレンダーのブログもお楽しみに!


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