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『(新)林間学校で死にかけた話』


令和4年10月20日に書いた記事を
リライトしました。
良かったら見てくださいね。


「手〜離せ〜手〜チギれる〜〜」

とムラッチは絶叫した。

「こいつ〜手離したら死ぬやないか〜
こいつだけは、絶対にゆ〜る〜さ〜ん」



崖の上から手を差し出すムラッチの右手を
私は右手一本でぶら下がりながら
心に強く思っていた‼️
(リポビタンDのCMの状況をイメージしてね。下が私です)


「皆さんは死にそうになった経験はありますか??」


私の人生最大のピンチがこの時だった。



説明しよう!
中学2年生になった私は、
林間学校で兵庫県の山奥に
行ったのである。



朝、学校からバスで出発して昼前に着いた。
昼食後、自由時間があったので
民宿から見える川を見て誰ともなく
「川の中に入って、
上流まで歩いて行けば面白そう」

と言い出した。



ワクワクドキドキ大好きな仲良し5人組は、
ビーチサンダルに半パンで川に入り
上流を目指した。



川はヒザくらいの深さで、
速い流れに足を取られてコケたり。。。
岩から岩へ飛び移ろうとして
川にハマってビショ濡れになったり。。。

お決まりのパターンに、 
私たちは大爆笑しながら進んだ。



1時間ほど歩いて、
これ以上先は行き止まりとなり、
どうしようかと思った。
K君という友達が、
「目の前の崖を登って道路に出よう」
と言い出した。



目の前には、
河原に続く高さ8メートルくらいの
崖があった。



崖の上を見ると道路で
車がビュンビュン走っていた。



落ちるということを考えない
怖い物知らずの5人。



誰が一番早くに道路まで登るか
勝負することになった。
何でも勝負したい年頃だった。



5人が横一列になり
一斉にロッククライミングの要領で
崖を登っていく。
もちろん命綱はない。



私の登った場所は凹凸があまり無く、
手を掛ける場所が少なかった。
草を持つとズボっと抜けたり、
途中で50センチくらいズリ落ちたりと
大苦戦をした。



他の4人は既に上に登り、
道路から私を見て声援を送っている。
みんなとの遅れを取り戻すために
急いでよじ登る。
もうちょっとで上の道路に届きそうだ。



その時だ!
ムラッチという友達が道路から
身を乗り出して右手を伸ばし

「アークン、
俺の手に捕まれ!」

と叫んだ。


心の中で
「ムラッチ、おまえは何ていい奴や!
俺たちは何があっても親友だ!」
と思い、右手をつかんだ瞬間に
私の足が崖から外れた。

『あっ危ない』

と誰かが叫ぶ!



右手だけで繋がり、
宙ぶらりんになった私。
下を見るとめちゃくちゃ高い所にいる
現実に気づき恐怖した。



「落ちたら死ぬ」と思い
力が抜けかけた時に、
ムラッチが突然

「手〜離せ〜手〜チギれる〜〜」

と絶叫したのだ。


これが、冒頭の言葉である。

『天使から悪魔に変身』

したムラッチに対して
私は怒りの感情が生まれた。

「コイツだけは絶対に許さん!」

と思うと不思議にも力がみなぎり
ムラッチの手を強く握りしめた。



すると、偶然にも足が崖に掛かった。
必死のパッチで道路までよじ登った。



「助かった〜」の思いと同時に
怒りの感情がメラメラと沸きあがった。


ムラッチに対して私は

「何が手〜離せやねん?
死んでまうやろ!」

と怒鳴った。


ムラッチは

「アホか、
俺が助けたってんやろ!」

と言い返してくる。



「何を〜」と掴み合いの喧嘩になり
皆が割り込んできて2人は止められた。



この件以降、
ムラッチを信じられず
同じグループではあるが
話さなくなった。



親友に裏切られた辛い思い出になった。
ちょっとした私の心の傷になったのだ。



中学3年生は
ムラッチとは別々のクラスになった。
それ以降話したことは1度もなかった。



20年以上が経ち、
長男が7歳の頃に一緒にお風呂に
入っている時のこと。



たまたま、この話をすると長男は

「ある意味、
ムラッチは命の恩人やな!」

と言った。

「どこがやねん‼️」

と思ったが、
確かにあの時、
ムラッチの言葉がなかったら
2人共、崖から落ちていたかもしれない。



ムラッチの言葉が怒りのパワーを生み
2人共に助かったのは事実だ。



結果的には、
長男が言うようにムラッチが
命の恩人になっていたのだと
気づかされた。


長男の風呂場での言葉が無ければ、
今でもムラッチを恨み続けていたかも
しれない。



長男の一言によって、
「親友に裏切られた辛い思い出」は
「親友の言葉によって助けられた思い出」
に書き換えられた。




長男は現在、
自分が言った言葉は覚えていないが。
その言葉により私の心が救われたのは
事実だ。



いつの日か、ムラッチにあった時には
酒の一杯も奢り

『ムラッチ、あの時は
本当にありがとう!』

と言うつもりだ。



最後まで読んでいただきありがとうございます‼


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