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【ショートストーリー】モーヴ色の朝焼け

若かった頃、
私は2人の男性を愛したことがある。
誠実で、私を心底愛してくれる恋人に
少し物足りなさを感じ、
ちょっと悪い雰囲気を持ったアイツにも
惹かれてしまったのだった。
夏が終わり、こんな自分にも嫌気がさして、
2人ともと別れようとした。

恋人にはどんなになじられても、
責められても、誠実に向かい合おうと思った。
でも彼はきっと、
裏切った私を許さないだろうと思った。
殴られるかもしれないと覚悟して、
すべてを話した。
2人と別れたいことも。

彼は静かに話を聞き、
「それは…その人と、
  男女の関係になったということか?」
と、意を決したように聞いた。
私は頷いた。
彼は絶望にも似たため息をつき、
目に涙をためて、
「わかった」
と言った。
「許すから、これからも一緒にやっていこう」
と、続けた。

私は許されるとは思っていなかったので動揺した。
でも、それは違うと思った。
許されて元の鞘に収まるのは違う。
私は疲れ切っていた。
アイツもなかなか別れてくれず、つらかった。
私は両方と別れたかった。
わがままだけど、一人になりたかった。

どうしても別れたいのだということを告げ、
私はその日は帰った。
でも3日後の夜中、彼から電話がかかってきた。
話し方がおかしい。
電話の向こうにいるのだろうけれど、
いないような儚い感じ…。
何かが違うと思って私はとっさに言った。
「今すぐ行くから、待ってて。絶対に」
私は部屋を飛び出して、電車を乗り継ぎ、
彼の家に向かった。終電車ギリギリだった。

彼はそこにいて、いないような、
透明感のある儚さを醸し出していた。
この人、死ぬ気だと悟った。
私は彼を死なせないよう、
言葉をつくし、抱きしめた。
朝までずっと…。
その時窓から見えた、
ピンクと紫が混ざり合ったような
モーヴ色の朝焼け。
彼は静かに言った。
「おまえに電話した後、死のうと思ってた」
私は、やっぱり…と思った。

朝焼けを見ると思い出す。
私が裏切ったために、
死なせてしまったかもしれなかった人のこと。
あの日のモーヴ色の空。
そして胸が痛む。
自分の気持ちのままに行動し、
傷つけた人たちのことを思い、
苦しくなる。

今もどこかで生きて、
幸せになっていて欲しいと、
朝焼けの空に願う。

©2023 alice hanasaki

※この作品は創作であり、
私生活とは関係ありません。

山根あきらさんの企画「朝焼け」
#青ブラ文学部 に参加させていただきました。
あきらさん、よろしくお願いします🙇🏻‍♀️

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