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【詩】飛ばした麦わら帽子

母は私に愛情をかけてくれたが
母親という立場の割にはクールな性格だった
自分のことは自分でやりなさいとよく言われた
そして長女の私はそのように育った

妹はちょっと違う
母は妹にはちょっとあまいところがあった
下の子はかわいいのだろう
姉として冷静に思い
焼きもちを焼いたこともなかった

小学生のいとこが遊びに来た夏
ひとつお姉ちゃんのいとこと私は
おそろいの麦わら帽子で
母と妹と4人でプールに出かけた

いとこが麦わら帽子を風に飛ばしてしまった時
母が真っ先に拾ってあげた
自分のことは自分でと言っていた母が…

それを見て私は
自分もわざと帽子を飛ばしてみた
でも母は振り向きもせず歩いて行く

私はもう一度飛ばしてみた
母は一度振り返って
道路に転がった帽子を見たのに
妹の手を引いたまま
前に向き直り歩いて行った

私はあきらめて自分で帽子を拾った
すごくみじめな気持ちだった
なんでいとこのは拾ってあげて
私のは拾ってくれないんだろう
でもそれを母にも誰にも言わずに
私は大人になった

母は預かっていた義姪に気を遣っただけだろう
今ならわかる
でもあの日のさみしさを
ずっと抱えて大人になった私を母は知らない

妹にあまいのは許せたが
いとこに優しいのは許せなかった
私はあの夜声を出さずに一人で泣いた
その時大声で泣ける子だったら
私は今頃こんなに
寂しがりやじゃなかったのかもしれない

©2023 alice hanasaki

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