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セリーヌ・ソン - パスト ライブス/再会(2023)Past Lives

2024年、ゴールデン・グローブ賞ドラマ部門作品賞、主演女優賞(グレタ・リー)、監督賞(セリーヌ・ソン)、脚本賞(セリーヌ・ソン)、非英語映画賞の5部門ノミネート。アカデミー賞でも作品賞、脚本賞の2部門ノミネートと、本作が長編デビュー作ながら、静かに華やかにデビューを飾ったセリーヌ・ソンの『Past Lives』。幼なじみとの24年ぶりの再会を描いた本作が、めちゃくちゃ人生といえる作品で大好きだった。監督の実際の経験によって、韓国生まれ、海外移住、夢を実現するために歩む人生と

    • アンドレアス・ドレーゼン - ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ (2022) Rabiye Kurnaz gegen George W. Bush

      第72回ベルリン国際映画祭銀熊賞(主演俳優賞/脚本賞)作品。『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(2018)のアンドレアス・ドレーゼン監督。米国9・11テロから20年以上が経過した今、グアンタナモ収容所のことを覚えている人はどれぐらいいるのだろう。『モーリタニアン 黒塗りの記録』が2021年だから、これをきっかけにまた調べたりした人もいるかもしれない。ドレーゼン監督は、無実の罪で5年もの間グアンタナモに収監されたムラート・クルナス本人の著作の映画化を計画するも、あまりにも悲惨

      • ジョナサン・グレイザー - 関心領域 (2023) The Zone of Interest

        カンヌ国際映画祭グランプリ受賞、アカデミー国際長編映画賞・音響賞受賞。アカデミー賞では、ジョナサン・グレイザーが、ガザへの連帯を表し、「ホロコーストをハイジャックして、無実の人々を巻き込んだ紛争の原因と占領の正当性を拒む人間としてここに立っています。」というスピーチが素晴らしかった。マーティン・エイミスの同盟小説を換骨奪胎し、収容所の真隣りで暮らす中産階級一家の日常を描き出す。 真っ暗な背景のなか、ミカ・レヴィの不協和音が流れ、タイトルが出るという始まり方は、この映画では音

        • ジェーン・カンピオン - エンジェル・アット・マイ・テーブル (1990) an angel at my table

          ジェーン・カンピオンの長編3作目。もともとはニュージーランドでのテレビ放映用として作られた作家ジャネット・フレイムの自伝3部作を映画化したもので、「To the Is-land」「An Angel at my table」「The Envoy from Mirror City」の3作のうち、リルケの詩をもとにつけられた「An Angel at my table」がタイトルになっている。感性が繊細すぎるがゆえに「統合失調症」と誤診され、8年間ものあいだ入退院を繰り返し、200回

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        セリーヌ・ソン - パスト ライブス/再会(2023)Past Lives

        • アンドレアス・ドレーゼン - ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ (2022) Rabiye Kurnaz gegen George W. Bush

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          タイカ・ワイティティ - ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル(2016) Hunt for the wilder people

          タイカ・ワイティティはどうしてこんなに優しいんだろう。「愛している」と言われること、愛されていると認識できること。そういったことを描いてきたティーンエイジャーの物語はこれまでもたくさん作られてきた/そして、これからもたくさん作られるだろうけれど、ワイティティのこの映画が特別な愛の映画として描くのではないまま、特別な映画になってしまったことに驚いてしまった(そして、それは瞬間によるかけがえなさに由来している)。なにより、13歳のリッキー・ベイカーを演じたジュリアン・デニソンの輝

          タイカ・ワイティティ - ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル(2016) Hunt for the wilder people

          アンドリュー・ヘイ - 異人たち(2023) All of Us Strangers

          大林宣彦監督が映画化した脚本家・山田太一による小説「異人たちの夏」(1988年)は、大林流の奇妙で不可思議な家族映画だった。一方、同小説のかなり自由な形でのアダプテーションといえるアンドリュー・ヘイ監督の最新作「異人たち」は、幽霊譚の枠組みを利用し、孤独と悲しみについて考察した作品だった。 奇妙な静けさをまとうタワーマンションに暮らす40代の脚本家アダムは、12歳のときに亡くした両親との思い出に基づく脚本を執筆している。ある日、幼少期に過ごした郊外の家を訪れると、他界した父

          アンドリュー・ヘイ - 異人たち(2023) All of Us Strangers

          エンリオ・カサローザ - あの夏のルカ (2021) Luca

          短編「月と少年」でアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされたエンリコ・カサローザ監督の初長編アニメーション作。ピクサー製作。一度配信で観ていたものの、劇場公開されるということで、劇場でもう一度観たら、こんなにもいい作品だったか、、、と映画のスクリーンから飛び出てくるエネルギーをふんだんに浴びて、めまいがした。 シー・モンスターと呼ばれる種族が海で暮らしていて、彼らは人間を恐れている。シー・モンスターである13歳の少年ルカも、両親から「人間には気をつけて!」「好奇心

          エンリオ・カサローザ - あの夏のルカ (2021) Luca

          濱口竜介 - 悪は存在しない(2023) Evil does not exist.

          2023年ヴェネツィア国際映画祭コンペティション選出作品。対話可能性と対話不可能性のバランスの危うさを描いているのはなんだか『ハッピーアワー』を彷彿させた。撮影に『ハッピーアワー』の北川喜雄が参加しているので、もう一度『ハッピーアワー』を観たくなる。 物語は、都心から3時間ほどにある自然のなかの村。冒頭、石橋英子の音楽とともに、木々を仰角で捉えるシーンからはじまり、ザクザクと雪を踏みしめる音がかぶさっていく。主人公のタクミは忘れっぽく、いつも娘ハナのお迎え時間を忘れ、ハナは

          濱口竜介 - 悪は存在しない(2023) Evil does not exist.

          キム・スイン - 毒親 ドクチン(2023) 독친/Toxic Parents

          『オクス駅お化け』脚色の新鋭キム・スイン監督長編デビュー作。もともとは脚本だけを任されたらしいけど、キム・スイン自身も監督志望ときいて監督にも抜擢されたらしい。女性監督がどんどんとおもしろい作品を作っていてうれしいね。愛についての考察。愛は押しつけるものではなく、見返りを求めないもの。家族でも友人でも恋人でも、どんな関係においても配慮と尊重が消えた愛はお互いを傷つけるということを、親子間の悲劇的な結末をもって描く。と同時に、個人の経験にとどまらず、社会の不条理をも照射する。優

          キム・スイン - 毒親 ドクチン(2023) 독친/Toxic Parents

          アラン・モイル - タイムズ・スクエア(1980) Times Square

          監督アラン・モイルが購入した中古のソファに詰め込まれていた路上生活をしていた女の子の日記をもとに書かれた映画らしい。本来はもっとレズビアン的な描写があったけれど、ポスプロの段階でカットされまくったとか。プロデューサーのロバート・スティグウッドとモイルは対立し、モイルは完成前に監督を降りたということだけれど、映画のなかの女の子たちの絆は、友情というには足らないほどの親密さにあふれていたし、男がいっさい介入しないプロットというところにもレズビアニズムは芽吹いているとおもう(実際、

          アラン・モイル - タイムズ・スクエア(1980) Times Square

          マルコ・ベロッキオ - エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023) Rapito

          エドガルド・モルターラ誘拐事件の一部始終を映画化したマルコ・ベロッキオ監督長編26作目。2023年カンヌ国際映画祭コンペ部門選出作品。 モルターラ家で使用人として働いていたクリスチャンである女性が、病気になったエドガルドが、受洗しないまま死んだら辺獄(リンボ)に行くという忠告のもとユダヤ人一家の両親に内緒で洗礼を行ったことに端を発し、1858年、キリスト教の権威のもとに両親のもとから強制的に離された(誘拐されて)という事件があったらしい(まったく知らなかった)。慈悲のもとに

          マルコ・ベロッキオ - エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023) Rapito

          メーサローシュ・マールタ - アダプション/ある母と娘の記録

          目覚まし時計と早朝の支度。シャワーを浴びる43歳の身体をゆっくりと捉えるオープニング。工場で働く彼女の身体につく木片。工場の様子を、主人公カタの身体だけでなく、そのほかの女たちの手つき(乾燥した手や腕、ひび割れた膝)を捉えることに、この作品が描く問題は主人公に特有のものではなく、さまざまな女たちの人生なのだということを物語っているように感じさせられる。夫を亡くし、現在では同じ工場に勤める既婚男性ヨーシュカと関係を持ち、相手との子を望む主人公は、しかし、相手には子を持つことを拒

          メーサローシュ・マールタ - アダプション/ある母と娘の記録

          メーサーロシュ・マールタ - ドント・クライ プリティ・ガールズ!(1970) Szép lányok, ne sírjatok!

          メーサローシュ・マールタ監督の長編3作目。劇場公開時はおそらく、残暑きびしい、蒸し蒸しとした日々のなかで、なんとか心を奮い立たせて映画館に行こうとしたものの、ぜんぜんだめで、ひたすら天井を眺めていたのをめちゃくちゃに覚えている。(気圧、湿気もろもろ、世界に左右されまくるあたしの身体🥲) 婚約者がいながら音楽家の青年と恋に落ちた女性の逃避行を、ドキュメンタリー風のカメラワークで瑞々しく映し出した青春もの。これまでは、そうやってふたりのあいだで揺れ動く主人公というのは男性とされ

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          アベル・フェラーラ - 天使の復讐(1981) Ms. 75

          アメリカのインディペンデント映画監督アベル・フェラーラの初期傑作。都市部にはびこる暴力を描くのは、ショッキングな内容でありつつ、これまでにあったレイプリベンジ・エクスプロイテーションものの扇動的な描き方からは距離を置いているように思える(レイプ=装置ではない)「レイプリベンジもの」で、ドラマ「EUPHORIA」で大好きなキャラクターだったキャットが、ハロウィンパーティーに派手なメイク+修道女姿に仮装して友人を戸惑わせるのは、この映画の主人公がモチーフとなっている(セリフにも出

          アベル・フェラーラ - 天使の復讐(1981) Ms. 75

          ジュスティーヌ・トリエ - 落下の解剖学(2023) Anatomie d’une Chute

          あの日、あの場所で、いったい何があったのか?第76回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞、第81回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ドラマ部門)、主演女優賞(ドラマ部門/ザンドラ・ヒュラー)、脚本賞、外国語映画賞の4部門にノミネートされ、脚本賞/非英語作品賞の2冠を獲得した。法廷劇ものではあるけれど、誰が「犯人」なのかということには焦点があてられず、「犯人」と疑われた個人のセクシャリティやジェンダー、キャリアによって「物語」が形成されていく。それは「偏見」による歪められた「物

          ジュスティーヌ・トリエ - 落下の解剖学(2023) Anatomie d’une Chute

          リドリー・スコット - テルマ&ルイーズ(1991)Thelma & Louise

          女性2人の冒険と友情を描き‟女性版アメリカン・ニューシネマ“と評されたリドリー・スコットの作品。性的被害を受けた‟女性の正義“というテーマや、友情か愛情かで議論が巻き起こった親友2人のラストシーンなど、公開から30年経った今も全く色褪せていないし、今日のように”性差”が考えられるようになった今だからこそ、生き生きと輝く一本だった。 平凡な主婦のテルマとウェイトレスのルイーズは週末のドライブ旅行に出発。その途中、立ち寄った店の駐車場でテルマが男に襲われそうになり、助けに入った

          リドリー・スコット - テルマ&ルイーズ(1991)Thelma & Louise