第九十八回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA「ドウェイン・ジョンソン」(前編)

この夏は“ワイスピ”の最新作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』が公開されましたね。

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『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(2021)

僕はまだ観てないですけど、シリーズのメインのほうなのに(ルーク・ホブス役の)ドウェイン・ジョンソンは出てないようですね。なんですが、今回はそのドウェイン・ジョンソン、語っちゃいましょうかね。

前回はここで『ラスト・アクション・ヒーロー』という映画について語った訳ですけど。

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『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993)

アーノルド・シュワルツェネッガー自らあの映画で、80年代から90年代初頭に押し寄せて盛り上がったアクションヒーローと、そのブームを終わらせてしまった訳ですけど。そのブームが去ってしまった後に、ネクスト・アクションヒーローとして出てきたのが、今ではみなさんご存知この人、ドウェイン・ジョンソンなんですよね。この人、シュワちゃんか(シルヴェスタ・)スタローンかっていったら、完全にシュワちゃんの後継者なんですよ。

僕は元々WWEがWWFだった時代、プロレスが大好きで、当時、海外のプロレスがとにかく好きで、ずっと観てたんですよ。その中で、ザ・ロック(ドウェイン・ジョンソンのプロレスラー時代のリングネーム)がいた時代のWWFって最強で、今から考えると“レベチ”で流行ってたんですよね。ドウェイン・ジョンソンのお陰で。当時の海外のプロレスブームを引っ張っていたのは間違いなくこの人で、めちゃくちゃ凄かったんですよ。ドウェイン・ジョンソン一強ぐらいの人気を博してて、その当時からスーパースター感がめちゃくちゃあったんですよね。

日本のプロレスと比べて何が違うかっていうと、WWFは俳優的な感じでパフォーマンスする部分が強かったんですよ。日本のプロレスって、リングで闘ってるところをメインに出して、たまにインタビューで「アイツうぜぇな」とか言ってるところを出すぐらいですけど、それに対してアメリカのWWFは、まず闘うまでの“ストーリー”がめちゃくちゃあるんです。

例えば、「アイツが俺の女を取った」とか、それで「その女と付き合い出した」とか「付き合わないで捨てた」とかっていう女にまつわる話から、「あそこでアイツが〇〇と喧嘩してた」というようなネタが、まず場内に映像で流れるんですね。そこからリングに出て行ってマイク・パフォーマンスをして、「じゃあ俺ら一緒にタッグを組んで、女に手を出したアイツに仕返ししてやろう」とか、リングに上がるまでのストーリーがちゃんと分かるようになっていて。
闘いに至るまでのドラマがいちいちあるんですよ。色んなドラマ背景があったうえでレスラーたちは闘っていくんですけど、その中で一番のヒーローだったのがドウェイン・ジョンソンだったんですよね。だから、元々プロレスラーでありながらも、俳優をやってたようなものなんですよ。そのドラマの流れの中で悪役になったりいいヤツになったり、そこを行ったり来たりするレスラーもいたんですけど、ドウェイン・ジョンソンは完全なるヒーローだったんです。

例えば、今までヒーローだったヤツが途中でストーリー的にいじめ役になったりすると、会場に出てきただけで、その日からいきなり客のブーイングを浴びるような存在に切り替わっちゃうんですね。いい人役だった人が突然ヒール役になっちゃったりするのはレスラーの人気ランキングとかも関わってくるんですけど。そこで常に人気のトップにいたんで、ドウェイン・ジョンソンは。だから、役柄的にヒール側になったりすることはほとんどなかったんですよ。リングに上がる前のドラマのストーリー上はずっとヒーロー的存在だった訳ですよ、あの人は。

そうして映画のシーンに目を向けると、前回『ラスト・アクション・ヒーロー』の回で語ったように、あの映画でシュワちゃんたちの筋肉ブームは終わっちゃったから、その後のアクション映画の盛り上がりはまったく無くなってたんですよ。映画業界の中でも、もうシュワちゃんのような華々しい筋肉タレントは出てこないだろうという感じだったんですが、それを一掃してくれたのがドウェイン・ジョンソンなんですよ。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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