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2月に読んだ本

こんにちは。namiです。

2月は転職活動をしながら人生初のニート生活を堪能していたので、個人的には結構本を読めたのではないかと思います。

転職できるかどうか不安で、なかなか本の内容が頭に入ってこないことは多々ありましたが...(^^;)

2月に読んだ本は9冊
冊数で見るとそれほど読んでいないような気がしますが、分厚い本や内容の重い本もあった為、1日あたりのページ数で見ると多めでした。

それでは、2月の読了本を紹介していきます📚🕊️

ペーター・カーメンツィント (ヘッセ)

最近読んだ本の中で最も強く印象に残りました。

社会に上手く馴染めず、孤独な魂を抱えた独身男性の生涯を綴った小説で、ヘッセの小説らしく(?)全体的に哀愁漂う仄暗い雰囲気ではあるのですが、読み終えた後は人生を歩むことの尊大さ、他者と関わりを持つことや、生きることの有り難みを強く感じていました。

物語の中で、障碍を抱えたボッピという人物が登場するのですが、主人公のペーター・カーメンツィントがボッピと過ごしたきらめく日々はあまりにも美しく、読みながら涙が止まらなくなりました。

この本について調べると、郷愁というワードを度々目にしますが、それだけの言葉ではとても語り尽くせない「人生」が鮮やかにに描き出された本だと思います。

怠情の美徳 (梅崎 春生)

恐らく誰の心の中にも潜んでいる「怠け欲」について、昭和の文豪にして怠けることが大好きな(?)梅崎春生の研ぎ澄まされた風流な文体で綴られた随筆です。

日本人は真面目に働き過ぎだとよく言われますが、みんなが頑張っている中で自分だけが休んでいても不安になるんですよね。

だけど、時には怠けることも必要。
「くよくよしても始まらぬじゃないか。とにかく一日一日が終ればいい。」(本文より)
このマインドは素敵だと思いました。

中でも「猫と蟻と犬」は色々な意味で衝撃的な話でしたので、興味のある方はご一読あれ。


エミール(中) (ルソー)

倫理や宗教観について多く語られている中巻は、上巻にも増して哲学の要素が濃いと感じました。
時を超えて読者に向けて強く語りかけるルソーの言葉に、はっとさせられる部分が度々あります。

優秀な子は他の子供たちから嫉妬されることが往々にしてあります。
エミールが他の子どもたちよりも優れた子であったとして、他の者を自分のレベルへ引き上げることは出来ないので、自分が下りていくことで崇高な感情が生まれ、信頼関係が築かれていきます。

人を愛さずとも生きていくことは出来ますが、豊かな人生を送ることは難しいのではないかと考えます。
他者の痛みを理解しようとする思いやりと、周囲に流されない芯の強さを持つ人こそが、真の幸福を掴めるのでしょうね。


嵐が丘(上・下) (E.ブロンテ)

光文社古典新訳文庫の小野寺健氏訳を読みました。

聞き手役であるロックウッドが嵐が丘を訪れる場面から物語は始まります。
しかしそれは、好奇心から聞いてしまったことを後悔するような、二つの家庭の崩壊の歴史でした。

上巻ももちろん面白く、引き込まれるのですが、下巻で幕を開けるヒースクリフによる更なる復讐劇の準備運動といった印象です。
自身の魂よりもかけがえのない存在を愛おしむ気持ちは、それが奪われたと感じた時に強い怨念へと変わります。
しかし、復讐を果たしたところで愛する人は喜んでくれるでしょうか?
亡霊となって彷徨い、涙を流しているのではないでしょうか。
残された家族たちの幸せをただ願うばかりです。


成瀬は天下を取りにいく

話題になっていたので読んでみましたが、期待を裏切らない面白さと爽快感。

囲の人々にプラスの影響を与えられる人間とは、きっと成瀬のような人なのでしょうね。
確固たる芯を貫き通し、真っ直ぐで揺らぐことがない。

成瀬は笑顔が少なく淡白な話し方をするので、一見すると冷たい性格だと思われるかもしれないが、本当は誰よりも情に熱く、周囲の人たちのことを考えている女の子です。
成瀬は彼女自身も気付かぬうちに、多くの人の思考や性格、人生そのものを良い方向へと変えていきます。

成瀬が沢山のことに挑戦すればするほど、その波は更に多くの人の所にまで広がっていくのでしょう。
正しく滋賀のヒロイン!
続巻も読もうと思います。


穴あきエフの初恋まつり (多和田 葉子)


こちらは再読本。言語の魔法使い、多和田葉子さんの短編集です。

時という激流に流されるまま、人々の頭の中からいつの間にか忘れられていく言葉。
それが何を意味していたのかさえ誰も思い出せず、全く別の言葉に変換されてしまうような語句を丁寧に拾い集め、現代社会が直面している“生きづらさ”の要因と結びつけて未来を憂う。

言語化できない痛みや違和感をあっさりと治してしまうかのような引き出しの豊かさに敬服の念を覚え、大人用の言葉遊びのような文の連なりに思わず笑みがこぼれます。
著者の書く辞書があるなら読んでみたい、読みながらそんなことを考えました。
きっとそれは、呪文が書かれた魔法の書のように見えるのではないかと思います。

ジニのパズル (崔実)

第59回群像新人文学賞受賞作にして、第155回芥川賞候補作となった衝撃的な小説です。

アメリカの学校に通う主人公、ジニがホームステイ先の絵本作家・ステファニーに、自身が日本の朝鮮学校に通っていた頃のことを語り始めます。

平和で安全な日本。だけどそれは、私たち日本人にとっての安全に過ぎないのかもしれないということを考えさせられました。
ミサイル発射のニュースや警報を恐ろしいと感じつつ見ていたけれど、ジニ達にとってはミサイルと同じかそれ以上に、レイシズムや心ない言葉の方が恐ろしいのでしょう。

痛烈な叫びに胸が痛むと同時に、ジニ達が抱えている問題について考えるには、自分はあまりにも多くのことを知らな過ぎると感じました。
私には何も出来ないかもしれないけれど、これまで考えようともしなかったことを考えるキッカケをこの本が与えてくれました。

セッちゃん (大島 智子)

最後は漫画です。が、淡く可愛らしい絵柄からは想像できないほど、胸に重く暗く沈殿していくような内容でした。

主人公は誰とでも寝る女子大生・セッちゃん。
この物語を読んで考えたことは「周りに合わせて自分の生き方や考え方を変えて、順応していくことが“上手に生きる”ということなのだろうか?」ということ。

SNSが普及した現代は、あらゆる情報が荒波のように押し寄せてきます。
その流れに流されていくことも出来ず、何処だかわからないような所を漂流しているセッちゃんたちは、一体どこへ向かえば良かったのでしょう。
興味が無くても、よくわからなくても、みんながデモを行っているならその列に加わることが正しいのでしょうか。
そんなことを思うセッちゃんたちは孤独です。

人の体温や与えられた物は、一時的には孤独を埋めてくれるかもしれないけれど、皆すぐに去って行ってしまう。
ようやく自分と似た人に出逢えたと思っても、その人でさえ明日居なくなってしまうかもしれない。
生きることの不条理や虚しさが胸に染みました。


長くなりましたが、2月に読んだ本の紹介は以上となります。
この記事の中に「読んでみたい!」と思う本があった方は、スキを頂けるととても嬉しいです( ¨̮ )

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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