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【コラム】海外協力隊体験~中編

今回は前回に引き続き、私が青年海外協力隊の栄養士隊員としてグアテマラ共和国へ派遣されたときの波乱万丈な体験談を中編としてお話したいと思います。

海外協力隊員として派遣された約2年の間の業務は、保健医療に従事する方々へ栄養教育を実施するため県内を巡回訪問し、年齢ごとに子どもの身長、体重をグラフ化した発育曲線の評価と考察・助言をしたり、地産食品を利用したメニューの開発、加工食品・乳幼児食の調理実習、36ヶ所の保健ポストに所属する教育係に対する教育実習の企画・運営をしたりしていました。

“県内を巡回訪問する”と言葉でいうのは簡単ですが、そのためには、まず自分が何者かということを関係スタッフに説明し、各保健ポストや栄養不良児のお宅を巡回する意味と目的と期待する効果を理解してもらわなくてはなりませんでした。その上、巡回で使える事務所の車は職員90名に対し3台ほどしかなく、スタッフの間で予約の奪い合いでした。なんとか予約ができたとしても当日ガソリン代がないという理由で使えないということも多くありました。

やっとの思いで初めて保健所や保健センターを訪れたとき、日本との大きな違いに驚きました。日本は予防施設である保健所・保健センター、治療施設である病院・クリニックといった具合にその役割がはっきりと分かれているのが特徴です。一方、グアテマラの保健所機能は日本で言う保健センターとクリニックを足し合わせた様な役割を担っていました。

場所によって分娩室がある保健所、24時間体制の保健所などもありました。
また、グアテマラではINCAPという中米、パナマ地域におけるWHO(=世界保健機構)のような役割の組織があり、他にも多様な保健・医療・健康に関する組織が機能していました。

そのため、立派な食品成分表や栄養所要量表、日本でいう食事バランスガイドのような指標がしっかりと定められていたという点や、国連や諸外国からたくさんの食料支援を受けているという点では、私の想像をはるかに上回るもので、ここでもまた驚かされました。

最初の数か月で感じたグアテマラの印象は、その土地ならではの民間療法が土地の文化とともに発展し、近代医学が普及しつつある現代でも新しいモノと古いモノが混在している国というイメージでした。プラシーボ効果 以外に期待できる要素が考えにくい民間療法も、宗教的・文化的要素が関与し、伝承され続けているように感じる場面にも遭遇しました。

このように、国としてきちんとしたガイドラインがあるにも関わらず、国が意図する情報が浸透しきれていない原因の一つとして、多民族・多言語であることや、道路状況の悪さなどの理由で情報へのアクセスが十分行き届かない遠方地域がたくさんあるという状況がうかがえました。

※この続きは最終編にて続きます。

Post by 太田旭

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