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「自然と生きる視点」と「自然に生きる視点」を重ねる sees schoolのこと

自然と生きるってなんだろう

農と森のインキュベーション施設「inadani sees」からsees schoolというカリキュラムがスタートする。sees schoolのテーマは、自然と生きるためのベースラインを体感するということ。

自然と生きるというと、とても難しいことのように感じる。だけど本当は私たちはいつだって自然の中に生きている。
命と自然は切り離すことができないもの。普段食べているものだって、自然が生み出したものだし、衣類のコットンやシルクも植物性か動物性。化学繊維と言われるものも多くは石油由来。石油も大昔の生命の痕跡。

日本の多くの風景は、自然の営みと人間の営みの間につくられている。例えば美しい田んぼが広がる里山やワイン用ぶどう畑の風景。秋になると一斉に黄葉する信州のカラマツ林。どれも人間の生産活動や経済活動の中でつくられているものだ。

「自然と生きる」というのは、そうやって少し意識を自然に寄せながら残したい風景に関与していくことから始めてもいいのではないかと思います。

例えば、美しいと思う地域のお米を食べるとか、どこのものかわかるものづくりのものを使ってみるとか。
そうやって暮らしの一部を変えていくことで、自然と人が生かし合う風景は続いていく。

伊那の田んぼ

その風景やものづくりに直接関与していくという選択肢ももちろんあります。
例えば、農林業やものづくりといった生産側を生業にしていく方法もあるし、作り手によってつくられたモノを届ける、売る、知ってもらうという媒介者として活動する方法もある。他にもいろんな方法で風景やものづくりに関わっていくことはできる。
地域の物語や資源を理解しなおして、新しい産業をつくるような大きなイノベーションを目指す方法もあるし、暮らしの中で自然の営みを取り入れるような等身大なものもある。重要なのは、その人が自然に生きられる視点はどこにあるか、ということ。

「生産者」と「消費者」や、「環境」と「ビジネス」や、「自然」と「人間」のように分けるのではなく、その間のグラデーションを意識していくことで見えてくるものがある。それがきっと「自然と生きる」視点であり、「自然に生きる」ために頭だけでなく身体で知っておきたいベースライン。違和感のない挑戦や暮らし。

具体と抽象を体験がつなぐ

自然と生きる視点を見つめるために、sees schoolでは、「抽象」、「具体」、「体験・経験」をテーマにカリキュラムを組んである。
世界や日本各地で実践されている事例やデザインや編集といった技術を学び、その上で伊那谷の風景に目を落とす。地域の風景を生かす仕事をする人たちの話を聞いて、そこから生み出されるものを味わったり、風景を眺めて体験をする。

抽象と具体を体験がつなぐプログラム。

このカリキュラムが大切にしたいことは、参加する人たちの中で自分の感覚や違和感を大事にできるようになったらいいなと思う。
周辺環境が人に与える影響はめちゃくちゃ大きい。だから、旅はその人の気持ちをニュートラルに近づけてくれる。
こんな世界もあるんだ、とか。この風景を見ていると嬉しい気持ちになる、とか。

旅みたいなカリキュラムにしたい。どこか遠くを仲間と旅をしたり、時には1人で旅をするような感覚。旅は、自分と出会う一つの方法。
旅をするように自然の中を歩き、その場で偶然出会った人たちと焚き火を囲んで価値観を交換する。そうすればきっとその人の中にある「気持ちの動く瞬間」や「違和感を感じる瞬間」が見えてくる。

標高1800mのキャンプ場で夕焼けと朝焼けをゆっくり眺めよう。
世界の話を聞きながら、地元の美味しい野菜を食べよう。

デザインや編集を軸にしながら伊那谷の自然と生きるを考える。

最高な講師の人たち

講師チームは本当に最高な人たちです。
Re:Sの藤本さんは、大尊敬する編集者兄さん。秋田からニッポンのびじょんを考えるフリーマガジン『のんびり』や著書「魔法をかける編集」は、デザイン事務所をはじめたばかりの僕にとってとても大切なバイブル。

花井さんが昨年共著で出版された「カルチュラル・コンピテンシー」もめちゃくちゃおすすめです。日本各地で実践されている風土・風景とともにあるビジネスを取材した一冊。その中の一節がとても痺れる。

新素材開発による伝統産業の更新、地域の自然資源を守りながらの資産化、産業が自発的に生まれ変われるだけの生活圏の形成など、持続可能な営みを目指すアプローチは数多あったが、共通していたのは、過度に奪い合わず「人が人として生き続ける」という目標を根底に据えていることだった。
単純な利益追求に腐心することなく、土地に根ざした文化背景に目を向け、ケアしながら働くような経済サイクルを創り出す能力こそが、「カルチュラル・コンピテンシー」である。

カルチュラル・コンピテンシー 花井優太、鷲尾 和彦

「inadani sees」というローカルインキュベーションが目指す方向はこのカルチュラル・コンピテンシーを高めることなんじゃないか、と思っています。

井上岳一さんは、日本の中山間地域の豊かさを「山・水・郷」の力強さの中にこそあると考え、日本列島回復論という本を出版。
日本中を取材し、地域のプレイヤーの繋ぎ役をされている井上さん。日本デザイン振興会と共に日本や世界で中山間地域とデザインを組み合わせて活動しているプレイヤーを紹介する活動も行っていて、山水郷チャンネルというyoutubeはめちゃくちゃ面白い。

島村菜津さんはイタリアのスローフードやアルベルゴ・デュフーゾといった地域の文化・文脈に誇りを抱く人たちを丁寧に取材しているジャーナリストだ。
島村さんのご著書を読んでいると、住んでいる地域の豊かさを思い出す。そして、それがどんどん失われていることにも、ふと気づかせてくれる。

そして、伊那谷で活躍する、シェフの渡邊さん、醸造家の冨成さん、自然ガイドの小口さんからは、伊那谷の自然と生きることを聞く。話を聞くだけでなく、地元農家さんの野菜をたっぷり使った食事を食べ、地域の農産物や森林資源をつかったクラフトビールやノンアルドリンクを飲み、自然を歩く。

Kurabe さんの料理
森林資源をビールの副原料にする冨成さん(右)と木こりチーム「森の座」の西村さん(左)

抽象と具体と経験を通して、自然と生きる「視点」をいくつも重ねるのがsees school。

伊那の蕎麦畑

7月26日は、事前説明会とトークイベント

SEES SCHOOLのことを色々と書いてきましたが、興味あるなーとかまずちょっと空気感を知りたい、という方はぜひこちらの説明会に参加してもらえると嬉しいです。
ゲストは長野県移住総合WEBメディアSuuHaaの編集長の藤原さん。藤原さんと一緒に自然と生きるをテーマにお話ししたいと思います。

2023年7月26日(水)
19:30〜20:30 プレ開校イベント「自然のしぜんな場づくり論」
詳細、お申し込みはこちらから!
https://seesschool2023pre.peatix.com/

SEES SCHOOLの本講座の詳細はこちらをご覧ください!
SEES SCHOOL

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