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書いては消えていく、ネット記事。

※10分間で書く、下書き・推敲なしのぶっつけ本番エッセイ。毎日更新30日目※

去年わたしは、新潮新書から初の著書を出版した。まだまだ実績が少なく、いたらないところが多いわたしにチャンスをくださった編集長には感謝の気持ちでいっぱいです。

でも最近、「本」にまつわるネガティブなニュースが多いですよね。本屋が劇的に減っている、若者が本を読まない、本が売れない、ネットで済まされてしまう……。書き手も、「印税は少ないから自分で書いたものをネットで販売したほうが儲かる」と主張する人もいます。

気持ちはわからないでもない。日常的に本を読む人が多くないのは承知しているし、本1冊書くってすごい労力だから、自分で売る自信があるなら出版社を通さず丸儲けしたほうが「得」かもしれない。

それでもね、思うんだよ。本っていいなぁって。

ネット記事って、ものすごく力を入れて、何時間も向き合って、考えうるさまざまな事柄全部調べて、ご飯食べながらもその記事のこと考えて書いたとしても、結局「消費」の対象でしかないんだよね。

たった1つのネット記事に救われた、人生変わった……そういう体験をすることもある。でも基本的には、ネットの海に日々流れ込む数えきれないコンテンツのうちの、ちっぽけなひとつに過ぎない。

1記事読むのは、まぁ1分か、せいぜい3〜5分くらい。ネット記事を、10分も20分もかけて読んで、吟味する人はかなり稀。

読んでなにか思ったらSNSでシェアするかもしれない。でもその10分後にはカフェの写真をアップしたり、趣味のつぶやきなんかをしたりして、その記憶はさーっと流れていってしまう。

1週間後、1ヶ月後。「またあの記事を読みたいな」と思うことなんて、多くの人はないと思う。たまたま見つけて、さらっと読んで、終わり。

そうやって気軽に楽しめるから、多くの人に届けられるっていうメリットもある。いままで100万回以上読まれた記事をちらほら書いてきたけど、「本」であれば、100万部はさすがに相当の追い風をうけないと無理だもん。

でもわたし、本にはすごい愛着があるんだよね。中学校のときに買った東野圭吾さんの『パラレルワールドラブストーリー』はいまも大好きで、留学中も、ドイツ移住の際も持ってきた。たぶん、50回は読んだんじゃないかなぁ。

気に入った本は、何度でも何度でも読む。ずっと手元に置いておきたい。表紙を見るだけでワクワクする。自分のなかで感想が少しずつ変わっていくのもまた楽しい。

本というのは、半永久的に楽しめる。本が歴史を後世に伝える役目も果たすのは、そうやって多くの人が大事に大事に手元に置いて、楽しみ、愛しているから。

でもウェブ記事だと、そうはいかない。1年前に書いたわたしの記事を見つけようとしたら、そこそこ手間がかかると思う。ましてや、手元に置いておこう、なんて思うことはないだろう。いや、置いておいてくれたらうれしいけどね?

すぐに忘れ去られてしまう。だからこそインパクト勝負になるのかもしれないね。

ネットという媒体、独特な世界は好き。でも、記事が消費されていくのがちょっとさみしいな、とも思ったり。

ま、ネットだろうが本だろうが、丁寧に書いて、多くの人に読んでもらえれば、それでじゅうぶん幸せなわけだけど。

じゃあ、またあしたね。

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