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起きられなくて、会社を辞めます。~失格会社員の退職エントリ~

来月半ば、まる2年勤めた会社を辞める。

退職のきっかけは、結婚でもキャリアアップでもない。度重なる遅刻に加え、居眠りがバレたのが致命傷だった。


まずは言い訳させてほしい

どうやら、私は極度のロングスリーパーのようだ。
できるだけ夜早く寝るようにしているが、最近は、日中まともに働くために、30分の昼寝を2回しないといけなかった。

かつ朝も遅刻スレスレに出社するので、当然傍から見れば「勤務態度が悪い社員」である。

しかし、こちらにしてみれば「遅刻スレスレ」どころか、本来起きるべき時刻の30分後にしか起きられない。
シャワーを朝に浴びることにして、その分早く寝ているのだが、肝心の朝、起きられないのである。

目覚ましを増やしても起きられない。
やっとこさ目を覚ましたとしても、ベッドから起き上がれない。
顔を洗いに行けない。
ようやく体が動くようになってから、大急ぎでシャワーを浴び、身支度をするものだから、髪の毛も生乾きのままだし、メイクも最低限。最悪ほぼすっぴん。

メイク大好き、時間に追われることが大の苦手な私が、出勤タイムアタックでストレスを抱えないわけがない。挙句、到着がギリギリになり、冷たい視線を浴びようものなら、申し訳なくていっそうキツい。

そして残念ながら、私はストレスで眠くなるタイプなのである。

~段落の最初に戻る~


先生!反例です!


出勤タイムアタックが始まったのは、最近のことではない。
1年前から、似たような状態だった。

当時、仕事と、家庭と、趣味の活動、それぞれでトラブルがあり、週7日走り回り、週7日悩んでいた。

朝起きられないどころか、あまりに心身ともに不調で、体がだるく、食欲もない。
精神科に通い始め、薬を服用していても、どんどん体調は悪化していった。

その時代のことで覚えているのは、とあるストレス対策本の内容である。曰く、

『三食食べるべし。毎日体を動かすべし。夜は早く寝るべし。それを実践していて、メンタル不調に陥る患者を見たことはありません』

ガクッと、全身が一層重くなった。

食事は、ストレス由来の食欲不振に負けず、三食食べている。
運動は、趣味の活動と毎朝の通勤ダッシュ(誤字ではない)で、書いてある時間を満たしている。睡眠も、取れている。そりゃあもう困るほどに。

そんな一見健やかな生活を送っていても、体調はどんどん崩れていくのである。


一度目は有給、二度目は休職、三度目の正直

そのときは有給休暇を取らせてもらって落ち着いたのだが、再発したのが半年前。

やはり、ギリギリにしか家を出られなくなり、電車遅延による遅刻を繰り返した。
体調がままならないストレスと、定時に出勤できないストレスで、過呼吸になりながら、それでも出勤していた。

仕事に余裕があったある日、雑談がてら人事の友人に相談したら、あれよあれよと休職が決まった。


会社にいる私は「全然出社できるのに」と思っていたが、いざ休んでみると、まる1日ベッドから起き上がれない。復職には1ヶ月半かかった。

復職後には、より早く着いて遅延しにくい通勤ルートを通ることにした。定期代補助からアシは出るが、遅刻は大きく減った。


しかし秋が深まるころ、朝の起きにくさに加え、日中眠くなることが増えた。
精神科の先生に相談したところ、「休職のときに増やした抗うつ薬の副作用かも」とのことで、少し薬の量を減らしてもらった。

それでも日が経つにつれ、起床時間は後ろにずれていった。
上司に会議室に呼び出され、「このまま続けて大丈夫なのか、身の振り方を考えては」と言われるころには、起床時間は復職当初の1時間後だった。

「すみません。仕事を辞めます」と返事をした翌週の診療で、薬の量はもとに戻った。


会社員失格

高校の卒業アルバムに、「10年後、自分はどうしているかの予想」を書く欄があった。
私が想像していたのは、パンツスーツにハイヒールを鳴らして颯爽と街を歩く姿だった。

その9年後の私は、遠目から見ればその姿通りかもしれない。
しかしハイヒールは埃だらけ、リップも塗れていないし、颯爽どころか猛ダッシュなのだ。
都庁前の駅をヒールを鳴らして猛ダッシュ。

今朝なんて、ダッシュの最中、すれ違う人が手に持つスタバの紙カップに嫉妬してしまった。
そんな奴が、颯爽としたビジネスウーマンにはもうなれないのだ。


猛ダッシュで会社に辿り着き、ボロボロのメイクでPCを開く。
私の仕事はインサイドセールスなので、一日に何十社と企業のサイトを見る。
それぞれの会社の夢の詰まったビジネス紹介、社長インタビュー、メンバー紹介の笑顔の写真を見るたびに、気が重くなる。

かつては私も、夢を抱いてベンチャー企業に就職した。
成長したい、バリューを出したい、そうして5年間走ってきた。
異動に次ぐ異動、コロナ禍による事業の閉鎖、「戦わなければ生き残れない」と良心を試されたり適応力を試されたり。

そんな「会社」という場所で生きていくには、私は弱すぎたのだ。
成長やバリューを出す以前に今や、会社で働くというステップに辿り着けていない(文字通り)。

幸いにも私には、転職のアテがある。義実家の、いわゆる家業。
「身の振り方を考えな」と言われて素直に「じゃあ辞めます」と言えることも、それで路頭に迷わないことも、まるで奇跡のようにありがたい。
なによりありがたいのは、退職理由を聞かれて「実は朝起きられなくて」と答えずに済むことだ。「家業を手伝うことになって」と言えばだいたい通る。

もとからお誘いを受けていたものの、実際に「家業を継ぎたい」と切り出した際には、この経緯を話した。それこそ、居眠りがバレて怒られたところから。
それでも断られなかった。なんなら酒を勧められた。あたたかい家である。

本当なら、あたたかい家に甘える前に、自分で飯を食えるレベルにスキルを磨いておきたかったのだが、時間切れは仕方がない。
仕事を辞めたら、まずは家業で戦力になれるよう、資格取得のための勉強が始まる。


まとまりのない文章になってしまったが


今回の退職について、「居眠り」が直接的原因だとしても、やる気の問題だとは思っていない。
過眠・眠気、朝起きられない・定時に来られない等諸問題は、ストレスが元凶である、と私は認識している。上司にもその説明をし、理解をしてくれている。

しかし、それでは、これまで1年以上積み重ねてきたストレスが悪いのか、あるいは私の気質の問題なのか、その気質は私がどうにかできたものなのか否か、など色々なことをグルグル考えてしまう。
そのグルグルを煮詰めたものがこの乱文である。

何を隠そう、この文章は退職が決まり、営業活動に参加できなくなり、暇と自分への失望を持て余すままに書いている。

まさか自分が、「朝起きられなくて」会社を辞めることになるとは、思いもしなかった。
しかし、これは「自分の身の丈(体力・精神的キャパシティ)に合った仕事をしなさい」というお告げに違いない。
「バリバリビジネスウーマンなんか目指さず、自分らしくやりなさい」ということだと思っている。

これまで剣士の修行をしてきて、剣を買ったり鍛えたりしていたのにもかかわらず、自分は剣士向きの能力値ではなかった。それに気づくきっかけが、今だったのではないか。

まずはゆっくり回復して、それから自分のジョブを見直そうと思う。

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