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「体験資産」なる考え方を広めたい・深めたい

先日、焼津でワーケーションしていて「体験資産」なる新たなマネジメントの考え方を発想しました。熱量冷めやらぬうちに、小さく発信しておきたいと思います(既に、周囲の有識者の皆さんと解像度を上げるための対話も始めています)。


1.きっかけは焼津での越境ワーケーション

2024年1月19日(金)、僕たちは焼津PORTERS(漁具倉庫をリノベしたコワーキングスペース、フードコート&イベントスペース)を訪問しました。
焼津市が実証実験中のモビリティ「つなモビ」を体験するため、そして仕掛け人である森田創さん(合同会社うさぎ企画 代表)に話を聞くためです。

当社あまねキャリアのメンバー(僕含めて3名)に加え、僕たちが懇意にしている静岡県西部の大手製造業の部課長と担当者、住宅メーカーの所長もご一緒し、「つなモビ」を体験しつつ(まず同じ景色を見る)、森田さんとお引き合わせしつつ、グリーンスローモビリティの可能性や地域課題・組織課題などをオープンにディスカションしました。まさしく越境学習型のワーケーションです。

森田創さんと、当社(あまねキャリア)のメンバー

「つなモビ」は、自転車およびそれ以下の速度で、街歩きの感覚で市内の公共機関や飲食店、ワークスペースなどをゆっくりと結ぶモビリティ。
クルマやバス・タクシーとは見える景色も異なり、ドライバーさんや乗客同士の会話も生まれます
車高、スピード、オープンな設えなども相まって、道行く地域の人たちと目線が近い。手を振り合ったり、自然と会話も生まれました

「つなモビ」で街歩き

この「つなモビ」、とにかく体験してみて欲しいのですが(2024年3月24日まで実証実験中)、僕たちは一言でいうなればグリーンスローモリティのコミュニケーション・ツールとしての意義と価値を見出しました。

「つなモビ」は2024年3月24日まで実証実験中。体験あれ!

「つなモビ」の試乗を終えた僕たちは、焼津PORTERSに戻って振り返りの対話をしました。振り返りは、個人の体験を組織の知に変えるために必須の言語化のプロセスナレッジマネジメントのSECIモデルを支える基盤です。(僕はかつて、日産自動車の海外部門でナレッジマネジメント担当だったこともあります)

その振り返りで「体験資産」なる言葉を僕が思い付きで発したところ、皆さんの食いつきが良く、解像度を上げて議論していこう、部署で取り組んで深めていこうとなったのです。
(やはり景色を変える、越境するって大事)

焼津PORTERSで企業を超えた(越境)対話とディスカッション

2.「体験資産」とは

体験資産(僕(沢渡あまね)の造語です)とは個人の多様な体験、およびその積(せき)である組織の体験を資産ととらえ、正しく評価(自己評価・他者評価)していく。そのような考え方です。

多様な体験は、組織の課題解決力も価値創造力も高めます。
今回で言えば、「つなモビ」の試乗体験と振り返りを通じて、僕たちはグリーンスローモビリティの価値や可能性を感じることができましたし、コミュニケーションのあり方についての新たな着眼点も得ました。この体験は、財産であり資産です。

多様な体験は、組織にさまざまな価値をもたらします。

たとえば……

・利用者体験が豊富な人が、利用者の視点にたった製品やサービスを生み出す
・サポートデスク経験のある人が、顧客や運用者にとってわかりやすい説明やインターフェース(ITシステムの画面など)を発想する
・大企業経験が長い人だから、大企業の顧客の意思決定プロセスを勘案した提案や動き方ができる
・スタートアップ企業の経験がある人だから、スタートアップの経営者や社員の気持ちがわかる
・育児の経験があるから、育児をしながら働く人のペイン(悩み、障壁)が分かる
・他社の人たちとワーケーションをし、(オフィスではない)カジュアルな場所でフラットな(上下関係がない)対話をしたことで、顧客やお取引先の気持ちを知る
・バスの運転を疑似体験したから、バスドライバーの大変さが分かり、バスドライバーが運転しやすいような行動を(利用者として)心がける
・ものを書いた経験があるから、作家の悩みや大変さが分かる

多様な体験がもたらす価値の一例

など。多様な体験は個人の発想や着眼点を豊かにするのはもちろん、組織の課題解決力および価値創造力のリソース(源泉)なのです。デザイン思考、マーケティング力と同義と言っても良いでしょう。

「つなモビ」進行方向逆向きのオープンな座席も実装。景色が変わると対話も弾む

一方で、他者の体験に悪気なく無関心、無頓着な組織も多い。

例えば中途で入社した人や、複業・兼業をしている人があなたの組織にいたとします。
その人の過去の経験や体験、複業・兼業先で培った経験や着眼点、人的ネットワークなどにはまるで関心を示さない。なかったように扱われてしまう。
また、役員や社員が新たな体験をすることに対して渋る(お金を出さない、時間を拠出しない、業務扱いしないなど)。

これは本人のエンゲージメントを下げるばかりでなく、組織として体験資産を活かせない/増やせない、きわめてもったいない状況であると言えます。

体験を個のフロー情報で終わらせず、組織の(引き出し可能、利活用可能な)ストック資産として評価および受け入れていく。それこそが、体験資産の考え方です。

ドライバーさんとも会話も楽しく

もうお気づきかと思いますが、体験資産の発想は、ダイバーシティ&インクルージョン、人的資本経営および社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)などの経営課題とも相互接続して意味づけできると考えます。

【追記2024.02.13→03.09アップデート】当社メンバーの松居菜津子さんが、(現時点での)体験資産の考え方を図にしてくれました!感謝!

体験資産の考え方(2024年3月9日時点)

ちなみに、僕たちあまねキャリアもこの考え方(体験資産を増やす)に基づいて、複業・兼業の実践および社会実装に向けた活動を(も)しています。

僕たちの複業・兼業の考え方については、以下もご参照ください。

3.(リ)スキリングだけでは不十分

昨今、リスキリングや能力開発の必要性が叫ばれ、取り組む企業も増えています。それ自体は素晴らしいことですが、一方で能力開発ばかりに重きが置かれ、経験がおざなりにされてはいないか。僕もそこにモヤモヤを感じていました。

知識ばかり詰め込んで、実践知がまるでない。発揮する機会もない。
あるいは今までの能力をダメ出しされて、新たな能力を身につけろと会社から言われる。本人にとっては気分の良いものではないでしょう。能力以外にも、貴重な体験や唯一無二の経験をしてきているのにリスペクトされない。なんともアンバランスであり不健康です。

僕は、組織力も個人力も、能力と体験の掛け算で示されるものだと考えています。

能力 × 体験 = 組織力・個人力

組織力および個人力を形成するもの

(リ)スキリングだけでは不十分。体験を評価するおよび新たな体験をするための投資をする。その両輪が、組織も個人も健全に成長させるのです。

4.「体験資産」を民主化する対話と議論を始めよう

僕は、「体験資産」なる考え方を本気で民主化したい、企業経営に実装していきたいです。

既に複数の顧問先(経営・人事部門・情報システム部門・デザイン部門・研究開発部門など)には話を始めており、企業単位または部門単位で体験資産の実装に一緒に取り組んでもらうよう行動を開始しています。
あいしずHR』など僕たちが主催をしている地域コミュニティや、『組織変革Lab』などの企業間越境学習プログラムでも、「体験資産」の考え方を投げ込んでいきたいと思っています。

また、田中弦さん(Unipos株式会社 代表)、石山恒貴さん(法政大学 大学院 政策創造研究科教授)、伊達洋駆さん(株式会社ビジネスリサーチラボ 代表)、松井勇策さん(フォレストコンサルティング経営人事フォーラム 代表)、米澤裕美さん(米澤社労士事務所 代表)、竹内義晴さん(特定非営利活動法人しごとのみらい 代表)、成瀬岳人さん(ナラティブ・エル・セッションズ合同会社 代表)、小川健三さん(株式会社NOKIOO 代表)、石田礼子さん(株式会社アルファドライブ 地域共創事業部)ほか、人的資本経営の有識者や、人材・組織・地域開発のオピニオンリーダー的な皆さんとの対話をし、前向きなコメントをいただいております。

【追記2024.02.13】一般社団法人 プロティアン・キャリア協会代表理事の有山徹さん、認定メンター&ファシリテーターの市川(鈴木)美和さんともディスカッションし、体験資産の普及に向けたアクションをご一緒することになりました。

ありがとうございます。

焼津と言えば魚。お寿司も最高の対話のツール

……というわけで、僕はしばらく「体験資産」をしつこく言うと思いますが、どうかご容赦ください。

以下、追加のブログ記事です。

今後も人的資本経営や人材・組織・地域開発の有識者、実践者ほかの皆さんと対話を重ね、解像度を上げていくとともに、体験資産の民主化と社会実装に力を入れていきたいと思います。組織の景色、変えて行きましょう!

賛同いただける方、対話しましょう(ただし暇つぶしや、「勉強になった」で行動しない人、周りに影響力を及ぼそうとしない人はお断り)。

今日は取り急ぎの、最初の発信をば(そうしないと、日々書くこともやることも多くて忘れちゃうので(苦笑))。

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