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採用・定着の要「オンボーディング戦略」

【ち:中途社員の居心地が悪い】

『職場の問題かるた』(技術評論社刊、作:沢渡あまね/絵:白井匠/CV:戸松遥)より。

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「中途採用した人が、なかなか定着しない…」
「最近異動してきたAさん、どうもウチの部署に馴染まないよね…」

中途で入社した人、他部署から異動してきた人に対するこれらの悩み、さまざまな職場で見聞きします。

「まあ、ウチの会社(部署)と合わなかったな。仕方ないよね…」

ちょっと待った!

もちろん、採用される側/異動編入する側(以下「新入者」と称します)の改善余地もあるでしょう。

しかし、新入者が定着しない職場を見ていると、受け入れる側にも大いに問題があります。今回は、新入者が定着する職場環境を創るために、受け入れる側がどんなことをできるか? 考えてみます。

1.着任後、3か月の「オンボーディング計画」を作成しよう

新入者の受け入れ、定着、活躍をスムーズに行うための活動や仕組みを「オンボーディング」と言います。

着任した新入者が戸惑わないように、受け入れる側が悩まないように、オンボーディング計画を作成しましょう。

オンボーディングの対象となる期間は、職場によりけりですが、3か月を目安にすると良いでしょう。1~2週間や1か月では、ひと通りの業務を経験しきれないかもしれません。3か月あれば、ある程度の業務を経験することができると考えます。

3か月スパンで、どの時期にどの業務の事前説明や教育を行い、どの時期に先輩社員や有識者とペアでその業務を体験し、どの時期に振り返りを行い、どの時期から一人でできるようにする。など計画を立てておくと、「何(説明資料や作業をするためのドキュメントなど)が足りない」「どの人の時間を確保すればよい」「この業務の内容を説明できるよう、事前に調べておいたほうが良い」など過不足や、必要な行動を前もって整えることができます。

「この機会に、既存の他の担当者にも自分たちの業務を説明しておこう」

こうして、部内への業務説明や勉強会を開催しても良いですね。既存のメンバーも含めた、業務の相互理解を深めるきっかけを作ることもできます。

2.「業務一覧」を作成し「何をする部署なのか」を明確にする

「そもそもウチの部署って、どんな業務があるのかしら?」

オンボーディングを計画しようとすると、このような疑問を持つことがあります。

特に日本の事務職にありがちなのが、「自分たちの業務を分かっていない。説明できない」。たとえばその部署に10人の担当者がいたとしたら、10人が10人、誰かから受けた仕事をとりあえずこなしている。あるいは、自分が得意な仕事、出来る仕事をひたすらこなしている。その結果、お互いが何をやっているのか分からない。部署全体で、どんな業務をしているのかが分からない。これでは、新入者の受け入れもうまくいきません。

あなたの部署に、どんな業務があるのか? この機会に、業務一覧を作成しましょう。

業務一覧は、新入者のオンボーディングのみならず、自分たちの業務を俯瞰して「無駄はないか?」「担当者ごとの業務量の偏りは大きくないか?」「属人化のリスクはないか?」などを、ひいては「自分たちは本来何をする部署なのか?」など価値を問いかけるきっかけにもなります。

3.必要に応じて、業務標準書や手順書などのドキュメントも作成して!

この際、必要に応じて、業務標準書や手順書などのドキュメントも作成しましょう。「そんなものなくても、いままで上手くいっていましたから」では、組織も個人も成長しません。

今までは、たまたま上手くいっていただけかもしれません。担当者がある日突然、病気で倒れたらどうなるのでしょうか? あるいは、「上手くいっていた」と思っていただけで、実は無駄が多いかもしれません。

従来の業務を、クラウドサービスなどITの仕組みに載せてスリム化するのも良いですね。クラウドサービスに載せてしまえば、そのワークフロー(仕事の流れ)に沿って仕事を進めることができますから、作業担当者が悩むことも少なくなります。つまり、新入者でも比較的スムーズに業務をこなすことができるようになるのです。

4.お互いの期待役割を明確にする

「私はこれができる」「あなたはこれができる」→「だから、あなたにこれを期待したい」「私は、この役割を果たす」

この相互認識と、相互の期待がうまくいっている組織は、立ち上がりがはやいです。

お互いが何をしている人、何ができる人が分からないと、どんな相談をしたらよいのか? 誰に何を聞いたら良いのかも分からず、新入者は悪気なく一人で仕事や悩みを抱えてしまったり、コミュニケーションも生まれなくなってしまいます。新入者が着任したなるべく早期に、相互理解の場を設けると良いでしょう。それは、既存メンバーの相互理解も促進し、チームの連携と一体感を高めます。

5.ちょっとした雑談や相談ができる「場」や「きっかけ」も大事

とはいえ、なにかしらの「場」や「きっかけ」がないと相互理解は進まないもの。新入者の着任時だけ相互理解の場を設けたとしても、その後は一切コミュニケーションがありませんではやはりうまくいきません。

・オフィスに雑談スペースやカフェコーナーを設ける
・定期的に、部内勉強会などを開催する
・定例会議の冒頭10分、お互いが今取り組んでいる仕事や関心のあるテーマを共有し合う
・1on1ミーティングを活用する

など、お互いを知る場やきっかけも作っていきましょう。

新入者が参画するタイミングは、従来の業務の問題や課題を見直し改善するチャンス、そして既存のメンバーを含めたチームメンバー全体の相互理解とコミュニケーションを活性化するチャンスです。「新入者のためにわざわざ…」ではなく組織全体をよりよくするために、このチャンスを生かしましょう!

▼『職場問題かるた』
https://gihyo.jp/book/2017/978-4-7741-9193-5

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▼新刊『バリューサイクル・マネジメント』
https://gihyo.jp/book/2021/978-4-297-12016-0

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