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【感想】君たちはどう生きるか

ジブリのババアキャラを愛する者として、開始数分でかわいいババアが7人も出てきた時点で、これはもう大ヒット間違いなしでしょ!?って思いました。グッズ化を期待しています。
いいか、鳥よりもだ!!
ババアをグッツ化せよ!!!

以下、ネタバレ感想です。
映像表現については、私が書けるほどのことはないので触れてません。


長尺に感じた理由

いきなりマイナス面から書きますが、本作、かなり長尺に感じました。しかし、上映時間だけ見ると、「もののけ姫」や「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」とそう変わらない。
なぜ、こんなに長く感じるのか、というと、事前情報がなかった点と、主人公の目的が明確になるまでの尺が長いからなんですね。
もののけだと呪いを解く、ナウシカだと谷を守る、ラピュタだと城を見つけるというわかりやすいストーリーラインが初手で示されるけど、君どう(これ、みんなどう略してんの)は「異界に迷い込んだ義理の母を助け出す」というのが出されるまでかなり掛かる。それまで、不思議生物アオサギとのやりとりで間を保たせているけど、「冒険」が始まるまでがともかく長い。このあたりが往年の作品と異なる。
でも、これ、わざとなんだと思う。物語のわかりやすさを捨てても、眞人少年を取り巻く環境(戦時下、母の死、義母の存在、疎開先での孤独など)を丁寧に描く必要があった。ここがあるから、最後の大叔父からの「あんな世界に戻るのか」に対する答えが生きてくる。

癖のある主人公

主人公の少年眞人。母親似ということで、美しい顔立ちをしてますが、この手の「美形」に描かれるキャラは、ジブリ作品では「正統派」に属することが多かった。アシタカ然り、ナウシカ然り。過ちは犯しても、基本的には「正義側」の人で道理がある。故に、感情移入しやすい。キャラを追っていて、不快ではない。
今回の少年は、しかし、ちょっと癖がある。というのも、冒頭で新しい学校の子どもたちと大喧嘩し、そのあと石で自傷するシーンがある。のちに本人も言うように、あれは悪意のある行為で、「学校に行かなくていい理由」「父親の関心を引く行為」等、さまざまな彼の思惑が絡んでのことだったと察せられる。あのシーンをいきなり見せられた側として「ん? なんでそんなことする?」となるが、物語が進むにつれ、この少年の性格というのがかなり難だぞとわかるとスッと入ってくる。目的のためには盗みも犯すし、かなり喧嘩っ早いし、引っ越し初日に謎の塔にグイグイ入っていく大胆さもある。出された飯をまずいとまで言う。根はいいこだけども、基本的にはクソガキである。
ジブリでそういうことをするのは、こういう「美形」が担うキャラではなかった。仮に「美形」がやるとしても、それまでに表情を崩すエピソードが入る。それがまぁ、ない。
だから、「あ、この子、慇懃無礼なだけだな」とわかるまで、一見普通のよいこに見えるため、こっちの気持ちが入りにくい。クソガキだとわかれば、大好きになるけどね!

彼岸と此岸の描かれ方

今回、わかりやすく此岸(異世界)が、生まれる前の世界、生と死が混沌とした空間であることがかなり初手から示される。
しかしながら、往年のジブリ作品と異なり、世界観のコンセプトがわかりにくいため、人によっては「夢」、しかも「悪夢」寄りのやつと感じるだろうし、実際そうした気持ち悪さや不安は強い。
そうした不思議世界においても、理はちゃんとあるのがおもしろいところではある。
白くてまるい謎生物にたくさん食べさせて、空に浮かせて、上に戻ると人間になるとか。鳥の嘴の穴は開けた本人にしか防げないとか。こういう謎ルールが平然とあって、迷い込んだ側としては一方的にそれが示されるのみなのが居心地が悪い原因でもあるが。

彼岸でまた母親に出会う

ポニョの時にも言われていたけど、死を意識する年齢になったせいか、監督の、ともかく母に会いたい、彼岸で巡り会いたいという思いが強い。
今回、おもしろいのはこの「母」が、実母と義母とに重ね合わされている点。眞人が新しいお母さん、夏子さんを受け入れるまでの物語とも見える。そして、本当のお母さんとさよならする話にも。でもこの「さよなら」はまた出会うための「さよなら」だから、決して後ろ向きではない。
例え、死ぬことがわかっていても「あなたを産めるなんて素敵(うろ覚え)」と言って、彼女は元の世界へ帰る。その言葉を胸に、実母を失った世界へ、眞人も戻ることができる。
このあたり、あまりにもあっさり描かれているんだけど、とても大事なことだと思った。

友達を作ります

ここも、とても大事と思った。
「会いたい」の代表としての「母」だけど、きっと先立った戦友の存在もあって、それがアオサギに通じているような気がする。眞人と彼の奇妙な友情は、少年少女のロマンスを描くことが多かった宮崎作品において、結構珍しい部類なのかもしれない。すごく丁寧に描いている。
もしかしたら、真っ当にこういう少年の友情を匂わせるような作品、宮崎駿としては初ではないか?
出会った時、あれほど敵対していたアオサギと友情を結ぶことができた。この経験があるから、元の世界に戻って「友達を作ります」と宣言できる。初日に喧嘩したあの学校へ、彼は戻ることができる。
今までのジブリの主人公たちに、「友人」が描かれることってあまりなかった気がする。基本は孤高の人というか。それはある意味で「天才」である監督の反映だったのかもしれない。

「好き勝手に生きた」とかいわれているけども

宮崎駿の自伝的な作品であり、映像やモチーフの要所要所に、これまでの作品の一端を見ることができる。往年の作品がエンタメとして完成され過ぎてて比較されてしまいがちだが、こんだけ好き放題に作っておいて、ちゃんとおもしろいの、さすがとしか言えない。
突然、新劇の悪口を言いますが、あれは庵野監督が自身に振り返って作り直した結果、長年愛されてきたキャラクタを殺した作品だと思っている。
あれに比べれば(比べることも失礼だが)これだけ王道に立ち返って──そもそも宮崎駿自身が敷いた王道であるよ──「エンターテイメント」として成立させているの、すごいよ。
自伝的であろうと、そこには「祈り」とか「願い」があって、鼻につかない。気にならない。そうだね、お母さんだね。生まれてくる子も祝福したいね、って素直に思える。
あと「友情」の話。避けていたのか、必要なくて失念していたのかはわからないけど、こんな晩年になって「母」と一緒に、「友情」の話をぶっ込んで来るの、面白過ぎでしょ…。
ごちゃごちゃ言うてますけど、私はあまり監督自身のパーソナルなところはよく知りません。彼ほどの人なのでいろいろなところで取り上げられて、だから、もはや作品と作家の人格は切り離してもらえないのだと思うけど、それでもおもしろいからすごい。


最後にもう一度

頼むから、婆さん7をグッツ化してくれ。
劇中のあのお守りをセットで出してくれ。
ジブリのババアキャラが大好きなんだ…!

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