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白い娘と菜根譚

遅れている電車。
いつもより混んでいる車内。
それでも運良く座れた。
ほっとして菜根譚を読む。
道や徳というものに仏教的視点を取り入れた最高の書物だ。
座ったのはボックス席。
前にヘルプマークを付けた女子学生が座ってきた。
肌が異様に白い。
マスクも白く、ブラウス、ソックスまでも白い。
私は彼女の前で菜根譚を読む。
『潔白』『純白』
そういった言葉がよく出てくる。

私の前に突然現れた白い娘は菜根譚そのものだったのかもしれない。
まだ社会の穢を知らない純白な心。
私は社会の穢で汚された欲望にまみれた凡人。
自分なんて小さなこだわりは捨てなきゃなと思うのだった。

いつの間にか電車が遅れていたことなど忘れていた。
貴い出会いだなと思いながら、終点駅に到着したのだった。

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