魔物使いの娘Ⅰ(下)あとがきと裏話

 本に載せる時間も余裕もなかったのでnoteに書いてみるものとする。

 全部読んだ人向けになります、ネタバレゴロゴロ

◆三章

 実は締切一ヶ月半ぐらい前に完成していた三章「殺すということ」があったのです。

 70Pぐらいで、悪魔と魔女の設定をつらつら並べ、リーンが妖精を使役して三人の容疑者から魔女を当てて告発する、という内容でした。

 上巻で評判の良かったリーンとハクラの掛け合いメインでサクサク進めてぱっぱと終わらせて四章に入ろうと思ってたし、実際一度完成したんです。

 そちらにはルーヴィもデルグもジーレも出なかったし、エリフェルですら冒頭で「レストンの件は魔女の件で魔女の仕業だと認定されたので魔女を仕留めてくださいね、ハクラあんた魔女狩りでしょ?」というだけの役でした。クラウナも幽霊として出てくるわけではなかった、だってお前成仏したじゃん。

 一応仕込んでいたどんでん返し要素としては、本に載ってるオチの通り、『エリフェルがコーメカを告発するつもりで最初からリーンを動かしていた』という部分で、「お前澄ました顔して怒ってたんじゃん」みたいな所を一応、仕込んでおいたんです。

 ただいざ四章書く前に読み直してみたら、設定が多くて話としてあんまり……? だし、これに金払ってもらうのか? というのもあったし、何より驚きや『あー!』みたいなものを、自分でも感じることができず、じゃあ何か追加できる要素はないかなと思いつつ、いろいろとフォルダを漁ってると。

 そこに居たのは、首飾りを悲しげに見つめるこもりさんの書いてくれたエリフェルでした。

 『エリフェルの表に出さない激情によって魔女の告発を行う』というシナリオを、この表情を浮かべる女が主軸だというのに、こんな淡々と終わらせていいのか?

 そう思った瞬間、一度書き上がった三章をなかったことにすると決めて、プロットを練り直し、現在の形になりました。


 結果としてこっちのほうが良かったんじゃないかと思います。かなり話にアラがある(教会にバレたら火炙りですって言ってる割に割と躊躇なく幽霊を呼び出したりしてる)のはその辺のいじりそこねの結果なんだけどまぁ笑って許してほしい。

 一応裏話としては、エリフェルもアレンの事が好きだったので、故郷の様子を知ってもらうためにレストンへの仕事を斡旋したらそこでクラウナとフォーリンラブしやがったので、『駄目なクラウナめ! ……でも、二人共幸せになってほしいから手伝うしかないか』とあっさり自分の恋を諦めて親友の応援をすることにしたのだった。いい女。

 リーン達が去った後、エリフェルの日常とかデルグとのお礼デートみたいな話はちょっと思いついてるので合間あったら書きたいなと思ってます。いえい。


◆四章

 某人に「視点が目まぐるしく変わるけどアオ視点は構成上必要ないのでは?」ということを(もっと善意寄りの感想だったけど)言われていたのですが、その理由は四章で二人が一旦離ればなれになることが決まっていたからです。

 ハクラ側とリーン側、どっちも描写する必要があるんで、アオの視点で動くのを最初から入れておこうという感じ。

 結果三章でリーンとアオが別行動を取るという想定外の事態が起こりまたいろいろ問題があったんだけどそれはさておき。



 四章も三章を受けて結構展開が変わったり増えてたりしてて、おかげでユニコーンとの戦闘シーンがマジであっさり終わってしまった。本当はもっと時間とページ数を費やしたり、リーンがアグロラにキレ気味に説教するシーンがあったんだけど、全部ページ数が悪いんや。


 ジーレ視点での話は書くつもりがあんまりなかったというか、ビアトルを描写するつもりが本当はまったくなかったんだけど、ユニコーンがぶち壊す街のことを描写する必要はあるなと思って、じゃあ助けられる少年ぐらいは考えたほうがいいだろう、でもそうするとジーレとどうやって関わるんや? 小汚い新人冒険者を屋敷に入れるんか? せや、テトナでばらせたろ、歳近いし丁度ええやろ、みたいな感じになり、結果として登場キャラオールスター、みたいな感じになった四章でした。あの三人のやり取りは書いててめちゃくちゃ楽しかったので、こっちもなんか書きたい。


 旅モノは現地の人と離れ離れになってしまうから、再登場させ辛いのが難しい所なので、次以降も出れるアクの強いキャラがほしいな、という所もあって生まれたのがルーヴィ。三章で偶発的に生まれて、四章にまでいい具合に殴り込んで来てA級と言いながら基本的に敗北し続けている。

 一応世界観的に言うとまじで世界で十本の指に入るぐらい強い奴ではあるので、ちゃんと活躍させてあげたい……次巻以降な。


 四章の目的はリーンとハクラの関係性の見直しで、二人共手放しで素直にお互いを受け入れられないから、下手くそで屁理屈な理由をつけて、一緒にいるだけの理由を探す、という話。

 リーンが一言、あの場で「ハクラは私のものなので勝手に持って行かないでください」って言ってれば多分あんなことにはならなかったと思います。日頃好き勝手やるくせに肝心なときにそれができない辺りが面倒くさい女。

 ハクラもハクラで、「お前たち俺置いて逃げただろふざけんな」ってキレてればよかったんだけど、お人好しなので結局アグロラ達と合流しちゃう。リーンと一緒に居たいと認めるのも癪だし……みたいな。面倒くさい男。

 話的にはまず「ユニコーンのエピソード」→逆算して「ライデア」「レストン」と順番に思いついていたからこそちゃんとブレずに着地できた所がある。普段ならもっとこう、大変なことになってたはず。

 追加要素ってルーヴィとビアトルぐらいだ……結構あるな。


 そんな感じで、魔物使いの娘Ⅰ(下)でした。ギリギリまで校正手伝ってくれたはいくさん、素敵な表紙とちょっとえっちな口絵(大事)を書いてくださったそばやさん、ありがとうございました。またよろしくおねがいします。


 次は火山の街ラディントンで、温泉とかに入る話です。

 またちょっとえっちな口を頼まねばならぬ。

 早ければ5月のコミティアになると思います、待っててね。

 

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