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短歌・俳句 採用作品(2023年)

友常甘酢の筆名で、短歌・俳句・川柳、エッセイやコラム、キャッチコピーなどを書いています。2023年に各公募賞・投稿欄で採用された短歌をこちらに記載しております。2023年の途中でX(旧Twitter)に採用作を投稿しなくなってしまいましたので、備忘録としてこちらにまとめておくことにしました。(新聞歌壇は別にまとめます。または、のちほど追記します。)


【短歌】

■NHK短歌


 2023/1/20 2月号 〈佐佐木定綱 「味」〉佳作秀歌
 味なんてわからなかった 煮込まれてぼろ布みたいな牛丼を食む

 2023/1/20 2月号 〈栗木京子 「イベント」〉 佳作
 このご時世試食もできず会場で迷ってばかりで開かずの財布

 2023/1/20 2月号 〈江戸雪 「プレゼント」佳作秀歌
 「何色のリボンにします?」とたずねられホームに立つ君を思い出す

 2023/1/20 2月号 〈笹公人「スイーツ」〉 佳作
 我思う今のあなたに足りぬのは根拠のない自信とチョコレート

 2023/2/20 3月号 〈佐佐木定綱 「折」〉 佳作
 パタパタと雛鳥のごと腕を振る子の長き袖を手首まで折る

 2023/3/20 4月号 〈栗木京子 「先輩 後輩」〉 佳作
 後輩の方が上手いとスタメンを譲った先輩の大声援

 2023/3/20 4月号 〈江戸雪 「未練 」〉佳作
 スケジュール帳は空欄なのにまだ気付いてしまう君の誕生日

 2023/3/20 4月号 〈笹公人「ラーメン」〉佳作
 エベレストのように聳えるラーメンのもやしへ二本のピッケルを刺す

 2023/3/20 4月号 〈佐佐木定綱 「火」〉 佳作
 休火山みたいな人の口数が減っているのに皆気付かない

 2023/4/20 5月号 〈栗木京子 「卒業」〉佳作
 卒業はしたくなかった永遠に陽の射す廊下が続く眼裏

 2023/4/20 5月号 〈江戸雪 「元カレ元カノ」〉 佳作
 スケジュール帳は空欄なのにまだ気付いてしまう君の誕生日

 2023/4/20 5月号 〈佐佐木定綱 「黒〉 佳作
 美男子の高級そうなワイシャツにずっととまっている黒い蝿

 2023/5/20 6月号〈吉川宏志 「春の草」〉 佳作
 バス停で待つ人々が小さき子の菫のような鼻歌を聴く

 2023/5/20 6月号〈岡野大嗣 「待ち合わせ」〉 佳作
 手を振っているのに君は気付かない 私を探してくれてうれしい

 2023/6/20 7月号〈岡野大嗣 「あくび」〉 佳作
 隠さずに大きなあくびをする子らに問5を解かせている塾の夜

 2023/7/20  8月号〈山崎聡子 「悔やんでること」〉 佳作
 その人の悲しみ全部呑み込んで口から虹を出すべきだった

 2023/7/20 8月号〈吉川宏志「 峠」〉 佳作
 落ち込んだ夜に観たインド映画では峠で滝で男女が踊る

 2023/8/20 9月号 〈川野里子 「海」〉佳作秀歌
 靴下を脱いで膝まで裾を上げ太平洋を思い切り蹴る

 2023/8/20 9月号〈吉川宏志 「ゆらゆら」〉 佳作
 止まりなさいゆらゆら揺れる吾の胸の水平器にある空気の玉よ

 2023/8/20 9月号〈岡野大嗣 「見上げる」〉佳作秀歌
 低すぎる天井にずっと貼られてた年表と茶のセロハンテープ

 2023/9/20 10月号 〈川野里子 「ガラス」〉佳作秀歌
 間に合わず歪んだままで固まった硝子の風鈴みたいな四十路

 2023/9/20 10月号 〈山崎聡子 「怒っていたこと 」〉佳作
 表情に怒りを出さず謝罪する額に眠る角が生えそう

 2023/10/20 11月号 〈川野里子 「手」〉 佳作
 「おーい!」って白く光って揺れる手は夏の野原に咲く百合の花

 2023/10/20 11月号〈吉川宏志 「店員」 〉佳作
 店員が店員を叱りつけているまだ空いている鮮魚売り場で

 2023/10/20 11月号〈岡野大嗣 「疑問符」〉 佳作
 言わずとも分かるだろう?という顔をわかりませんという顔で見る

 2023/11/20 11月号〈 吉川宏志 「車窓」〉 佳作
 少し硬い銀のレバーを二人してつまんで開けた昭和の車窓

 2023/12/20 1月号 〈川野里子「 天」〉佳作秀歌
 めくるめく天地乱れる世界へと子は鉄棒をぐっと握って

 2023/12/20 1月号 〈山崎聡子 「友達のこと」〉 佳作
 ママ友と親の介護の話して買い物袋のチョコを分け合う

 2023/12/20 1月号 〈吉川宏志 「切る」〉
 丁寧にキリトリ線を手で裂けば切れ目に生まれる産毛やわらか


■NHKラジオ「文芸選評」短歌の回

 2023/1/14 〈選者:野口あや子 テーマ「でも」〉
 でもとても美しいよね。わかってる、それはいけないことなんだよね

 2023/2/18 〈選者:奥田亡羊 テーマ「朧」〉
   朧なる月の光に包まれて裏へと回る夜間面会

 2023/4/29 〈選者: 加藤千絵 テーマ「元号が入ってる歌」〉
   昭和らしい私の家と友達の平成らしい家の温度差

 2023/9/2 〈選者:梶原さい子 テーマ「宝石」〉
   燃やされて宝石になれるプランあり死ぬのも悪くないなと思う

 2023/9/30 〈選者: 川野里子 テーマ「フォーク」〉
   先輩とフォークの代わりに割り箸でケーキを食べた木の味がした

 2023/10/28 〈選者:佐佐木頼綱 テーマ「パラスポーツ」 〉
 その球の触り心地は優しいが易しくはないボッチャの命中

 2023/12/9 〈選者:笹公人 テーマ「昭和レトロ」 〉
 キッチンへ入る時にはジャラジャラと滝行のように暖簾を浴びる

 2023/12/23 〈選者:遠藤由季 テーマ「甘い食べ物」 〉
    お汁粉がありますよって冬の夜の裾を照らしてくれる自販機

■新聞歌壇(毎日歌壇、読売歌壇、東京歌壇)

2023/1/8 東京歌壇 選者: 佐佐木幸綱 8席
舞う雪が溶けて消えゆく温泉の湯に許されてゆく心地する

2023/1/9 毎日歌壇 選者: 伊藤一彦 5席
食べられる花のサラダをのみ込めば芽吹くようなる我の指先

2023/1/16 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 4席
「ねえ、見てて」子は逆立ちも背泳ぎも練習をしたこの寝室で

2023/1/22 東京歌壇 選者: 東直子 5席
箱庭の砂が手に付く 置いてゆく野にあるはずの大いなる樹々

2023/2/6 毎日歌壇 選者: 加藤治郎 10席
前を向くことができずにつま先と空を交互に見つめてバス停

2023/2/14 毎日歌壇 選者: 加藤治郎 1席
見上げれば光る水面(みなも)は揺らめいて暗いオフィスに錨(いかり)を降ろす

2023/2/14 読売歌壇 選者: 俵万智 4席
数という概念を捨て僕たちは二人暮らしを菫に変える

2023/2/27 毎日歌壇 選者: 伊藤一彦
わたくしの教祖であった泣き止まぬ子を笑わせるアンパンマンは

2023/3/14 読売歌壇 選者: 俵万智 5席
何をしに梯子をのぼってゆくのだろう俎板の字に居るお二人は

2023/3/20 毎日歌壇 選者: 加藤治郎
焼きたてのパンの香りのような人「おはよう」って僕に手なんか振って

2023/3/20 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子
こんなにも穴が大きくなっていた耳搔(か)きしやすくなった子の耳

2023/4/3 毎日歌壇 選者: 加藤治郎 10席
すき焼きの社会じゃ君は卵だろういろんな奴(やつ)に絡んでゆけて

2023/4/9 東京歌壇 選者: 東直子 10席
透き通る雨でも街を黒々と塗り潰せるよ君も雨だよ

2023/4/24 毎日歌壇 選者: 水原紫苑 3席
海だって渡れる綺麗な切手たち鍵の壊れた小屋にまだいる

2023/4/24 毎日歌壇 選者: 加藤治郎 8席
どうやって励ますべきだったのだろうただ香(かぐわ)しく散りゆく花に

2023/5/1 読売歌壇 選者: 俵万智 1席
叱られて部屋に籠って出てこない子の夕飯のラップが曇る

2023/5/1 毎日歌壇 選者: 伊藤一彦 1席
悲しみを蹴って歩いている君が立ち寄る甘味処(どころ)になりたい

2023/5/8 毎日歌壇 選者: 加藤治郎
うっすらと輪郭だけが見えていた遠い岬が脆く崩れる

2023/5/8 毎日歌壇 選者: 水原紫苑
ひびだらけの土鍋の肌を見つめおり働いてゆく壊れぬ限り

2023/5/15 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子
ハンカチは折るものだとはつゆ知らず丸めてばかりの子の逞(たくま)しさ

2023/5/28 東京歌壇 選者: 佐佐木幸綱 3席
折り紙の角と角とを合わせない子供が作る丸い折り鶴

2023/6/12 毎日歌壇 選者: 水原紫苑 9席
耳だけが覚めて車が雨を轢く音とかすかな寝息が重なる

2023/6/26 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 4席
早起きをすればひとりになれるから そんな理由で五時のリビング

2023/6/27 読売歌壇 選者: 俵万智 10席
チョコチップクッキーなのにほぼチョコが入っていないような役職

2023/7/17 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 4席
正直に言わずに嘘をつく方が大変だったね優しかったね

2023/7/23 東京歌壇 選者: 佐佐木幸綱 8席
こんなにも大きな星に住みながら小さな部屋でゆく本の旅

2023/7/31 毎日歌壇 選者: 水原紫苑 7席
蔓薔薇(つるばら)を両手でむしり取るような気の鎮め方しかできなくて

2023/8/6 東京歌壇 選者: 東直子 9席
太陽系第三惑星にっぽんの草の香り吸い塵になる

2023/8/7 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 8席
鉛筆の音硬く鳴るテストにて子らの隠さぬあくびやわらか

2023/8/15 読売歌壇 選者: 俵万智 2席
子供らに公園の水は伸ばされて真夏の空は口を開けたり

2023/8/15 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 5席
許すべきだった盗んだ吾の金で吾にプレゼントを買ったあの子を

2023/8/28 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 3席
子にりんご剥きつつ思う この軸は樹と実を繋ぐ臍の緒なのね

2023/9/4 毎日歌壇 選者: 加藤治郎 1席
待ち合わせできる気がする君となら夢の西口改札前で 

2023/9/4 毎日歌壇 選者: 水原紫苑 8席
悲しみを飲み干してみた全身が真っ青になり海になってた

2023/9/18 読売歌壇 選者: 俵万智 2席
二次的を虹的と吾は聞き違えひとり佇む美しき橋

2023/10/9 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 5席
昼休み終わる間際の雑談に上司は父の顔で笑えり

2023/10/15 東京歌壇 選者: 東直子 7席
総務課の友とコミック読み交わす職場の昼は少し学校

2023/10/16 毎日歌壇 選者: 加藤治郎 2席
心から言っていないとあなたにはばれていたんだ靴に滲みる雨

2023/10/23 毎日歌壇 選者: 水原紫苑 4席
文字盤も針も見えない透明な時計がこの空に隠れてた

2023/11/6 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 2席
カフェに寄り窓辺に座る 母を脱ぎ向かいの席にすべてを置いて

2023/11/12 東京歌壇 選者: 東直子 10席
詰めすぎて回らぬミキサー頑なに譲らぬ人が目を合わせない

2023/11/27 毎日歌壇 選者: 米川千嘉子 5席
負けそうになれば子どもは泣きじゃくりダイブし暴れたかるたの上で

2023/12/4 毎日歌壇 選者: 加藤治郎 3席
将来は介護施設で懐かしのパンクロックを聴き眠るのか

2023/12/11 毎日歌壇 選者: 加藤治郎 6席
サラダバードリンクバーで深夜まで友と見えない夢を見ていた

■ダ・ヴィンチ 短歌ください

〈2023年4月号  選者 穂村弘  〉
惑星の形のチョコを渡したらあなたは地球をきっと食べない

■伊丹歌壇

〈2023/2/28 33号 選者 尾形まゆみ〉
積み上げて夢をようやく叶えれば小さき箱から出された心地

■クローズアップ現代

〈2023年5月放送 選者 東直子〉
憂鬱な確定申告終えた今サティの曲が春をふちどる

■月刊うたらば

〈選者 田中ましろ〉

2023/1/22 月刊うたらば
青、緑、白は野原の色らしくファミリーマートに迷い込む蝶

2023/3/21 月刊うたらば
これだって畑でとれたものだぞと祖父はタバコに火を近づける

2023/5/20 月刊うたらば
じゃあ次は入道雲も真下から見てみたいねと花火の夜に

2023/7/22 月刊うたらば
水色の着火剤へと火が移り儀式のような旅館の小鍋

2023/9/24 月刊うたらば
クレパスの青だけ小さかったからその子に選んだ空色の靴

2023/11/25 月刊うたらば
できるだけ長めの穴子天を取りうどんに添える明るい食堂


■第10回あいのうた~出会いから子育てまでの短歌コンテスト~

 〈応募数:3,152点 選者:俵万智 田中章義〉

 入選 
ふんわりと道は生まれる幼子がピィと囀る靴で歩めば

こちらは、これまでの10回分の採用歌が書籍化されているそうです。amazonにもありました。歌人の俵万智さんと田中章義さんの選は、心があたたまる歌がたくさんありました。
俵万智 田中章義・選 あいのうた短歌集


■令和5年度 第24回若山牧水青春短歌大賞

 〈応募総数:2万4667点 選者:坪内稔典 永田和宏 永田紅〉

審査員特別賞 早稲田大学賞 【永田紅 選】
くたびれたクリアファイルは傷ついて不透明だね僕らみたいに

歌人の永田紅さんの名が冠された賞、選んでいただけてうれしかったです。永田紅さんは、私と年齢が近く、生化学研究者でもあります。私も生物学を専攻していたので大変勝手ながら親しみを感じておりました。歌集も読んでみたくなりました。


■第8回富士山大賞2023

〈応募総数:不明 選者:三枝昂之 穂村弘 東直子〉

優秀賞
子の背中見えなくなりて来た道を戻れば朗らかな白き富士

授賞式には残念ながら参加できなかったのですが、Youtubeで東先生に講評をいただけてとても嬉しく、勉強になりました。
https://youtu.be/IeK5Ib3umaQ?si=7W9IHgMPK0Djk1Hk


■『群像』2023年2月号 『現代短歌ノート二冊目』

〈著者 穂村弘〉
過去の私の日経歌壇の歌を誌面で引用していただきました。

サラリーマンの夫が真似するサラリーマンすごく似ていた芸人並みに


【俳句】


■伊丹俳壇

〈伊丹新聞に掲載 選者 坪内稔典〉

2024/2/29 36号 (テーマ 春の川)
歯医者から自転車を漕ぎ春の川

2023/10/31 35号 (テーマ 天の川)
軽トラの荷台にのぼり天の川

2023/2/28 33号 (テーマ あのね)
あのねって浮かんだ柚子を沈めたり


■文芸選評(俳句の回)


2023/9/11 〈選者 高柳克弘〉
に団栗だけが入ってる

2023/1/22 〈選者 小澤實〉
折りたたみ椅子を広げて冬の草

2023/1/7 〈選者 池田澄子〉
子が書ける高さに掛ける初暦


■NHK俳句

2024年4月号 〈選者 夏井いつき テーマ 入学試験〉
弁当の固き結び目受験の日

2024年3月号 〈選者 村上鞆彦 テーマ 悴む〉
真っ直ぐに悴む指が押す汁粉

2024年1月号 〈選者 夏井いつき テーマ 七五三〉
袴からミニカー発進七五三
(袴からミニカー落ちて七五三 と投稿した気がするのですが、記憶が不確かです。添削していただいた可能性もあります)

2023年11月号〈選者 夏井いつき テーマ 秋刀魚〉
ざっくりと氷をどかし秋刀魚の目

2023年9月号〈選者 山田佳乃 テーマ 日向水〉
ぷかぷかとプリンのカップ日向水

2023年8月号 〈選者 夏井いつき テーマ 蝸牛〉
2Bでなぞるひらがな蝸牛

2023年4月号〈 選者 高柳克弘 テーマ 猫の子〉
世界ほど広い和室に猫の子と


■東京俳壇


〈2023/5/10 選者 小澤實〉
デコピンで肩の毛虫が飛んで行く




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