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コメディドラマの主人公が大統領にー“Servant of the people”(国民/人民の僕)

(写真はcinta.comより転載)

ゼレンスキー演じるドラマの大統領は、高校の歴史の教師である。ひょんなことから政治をこき下ろす動画を生徒にアップロードされる。「ピー」と何度も音が入るほど下品な動画で、校長も学校の品位を落としたとカンカンになって怒るほど。だが、それが多くの人に支持された。

生徒たちは大統領選挙に立候補するよう薦める。大統領候補の申請料が、生徒たちによってクラウドファンディングで集められ、彼の元へ届けられる。
「国民が集めた金です。先生の好きに使って」と。

ある朝、ドアを開けると首相が立っていた。「大統領、初めまして!」老獪な首相は、どんな手で申請料を手に入れたのかとたずねる。(この言葉は、この国の実態を端的に表している。この国は汚職と賄賂まみれの国なのだ)「クラウドファンディングです。」と答える彼だった。

このドラマのタイトルが、現実にそのまま彼の所属する政党名「国民/人民の僕党」になった。ドラマと現実が交差する。見ている我々も不思議な感覚を覚える。ニュースで語りかけるゼレンスキー大統領とドラマの大統領。その主張は変わらない。

大統領就任の演説は、首相により準備されていた。しかし、彼はそれを退け自分の言葉で語り出す。

「普通こういう場では約束をするものでしょう。でも僕は約束はできない。それは嘘だし、嘘はつけない。しかし、僕は人間として恥じない行動を、子供たちに、親たちに、あなた方に、Ukraine の皆さんに約束する」

こちらは、現実の大統領のスピーチです
「子どもたちに受け継がせたいのはUkraine の威信です。私たちがどう行動したかという記憶なのです。世界中の人々が我々がとった行動を記憶に刻むことでしょう。その記憶がUkraine の子どもたち孫たちを助ける力となるのです。新たな国難の際にも」(NHKドキュメンタリー「戦時下のゼレンスキー」より)

大統領になっていざ改革に乗り出そうとしても、役人は一向に動かない。何か行動を起こそうとしてもそこに障害が立ちはだかる。

国土建設大臣に道路補修を工期1年間で10億の費用で行うよう指示をする。大臣は次の部下に5億で指示をする。伝言ゲームのように末端にたどり着いた時は一千万になっていた。しかも実際に工事を行う監督は「給料が4ヶ月も未払いなのにそんな工事はできない」と上司に告げる。そして今度は上むきの伝言ゲームで伝達され大統領のところに届いた回答は、工期2年間で20億になっていた😱

そもそもこの国の政治は、大統領を中心に動いているのではないのだ。「この国は3頭の鯨の上に乗っている」と首相に言われたように、3人の大富豪によって動かされているのだ。首相もその一味だった。彼らは、何もできずに大統領が失脚するのを待っている。

大統領は現在の閣僚を解任し、新たな人材を指名する。それが全員彼のクラスメイトーこんなところはマンガチック。でも、少なくとも信頼ができるということは最大のメリットだ。白昼夢のように、ジュリアス・シーザーも登場して「信頼こそ重要だ」と彼にささやき支持する(が、後ろを向いたとたん、背中にはたくさんの剣が突き刺さっていた。「***よ、お前もか」、未来を暗示するかのように)

正義と公平と民主主義の理念を持って、腐敗し堕落した政府の立て直しにコミカルに奔走する。盛りだくさんのジョークは、“Mr.Bean”を彷彿とさせる。

エピソードの中に、Russia やプーチンに対する皮肉や揶揄が散りばめられる。
一方、EUや西側に対しては熱い好意を寄せる。このドラマはロシア語で語られている。もしプーチンが見ていたら、さぞかし彼の神経を逆撫でしたことだろう。

この人は、自分をコケにした自国の番組の放送局のオーナーを逮捕し、その放送局を国営放送の傘下に入れてしまった人だから。「笑いは、独裁者の最大の敵」とは、チャプリンの言葉です。

プーチンは、きっと見ていたに違いない。だからゼレンスキーがUkraine の大統領であることに我慢がならないのだ。ウクライナ侵攻は、意外にもこんなプーチンの憤りから始まってたりして。

エピソード1の最後は以下のように終わる:

「Russia の大統領から電話です」
「プーチンか?」
「いえ、別の方です」😂


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