起業家という道を経て、今は二作目の出版を目指している橋本なずなです。

人の死が与えるものって、とてつもなく大きい。
そんなことを思う近頃。

母の死から三ヶ月、死亡にともなう事務的な手続きもひとしきり終えた。
引っ越し作業も落ち着いて、初めての一人暮らしに、数々の新しい出会い。
季節柄か寒かったり暑かったり、天気にも翻弄されて。

きっと私だけじゃない。
今は世間の誰もが、ソワソワとした気持ちを抱いている頃だろうと思う。

今日は、何もできずに陽が沈んだ。悪い気はしなかった。

❝ やる気が起きない… / でも起こしたらかわいそうだよな、気持ちよく寝ているんだから… ❞
という #うないいちどう さんの言葉がXで流れて来て「 あぁ、めっちゃ良いなその考え 」と思って、私もそれに則り部屋でごろごろと過ごしていた。

頑張り屋さんの私たちには “何もしない” にも勇気が要るよね。

ゆっくりと、陽の傾きを感じながら、時折 遠くで聞こえる車の走行音や人々が生活を営む音に耳を澄ませてみる。

この一ヶ月、私の心と身体は安定しなかった。
母を亡くした直後とは違った不安定さがあった。

母を亡くした直後は息を吸うのも精一杯で、生きた心地もしないで、流れるように時が過ぎて行った。

対してこの一ヶ月は、毎日をきちんと咀嚼していた。
春を告げる桜や蝶々を、ぬくもりを含んだ夜風を、空の青さを、私は確かにこの目で見ていた。

けれど心はまるで春の天気の様で、一日置きに躁と鬱を行き来していた。
体調も優れず、一ヶ月のうちに二度も寝込んだ。

苦しみの中で考えるのは、母が死んだという事実。

母の死以降、何もかもが変わってしまったような気がする。

正しいと思っていたことが間違いに思えたり、幸せよりも不幸せばかりに目が行ったり。
お酒を飲んだり、甘いものを食べたり、心のエネルギーチャージはこまめに行っているのに、翌日にはもう残量切れを起こしたり。

私はハタチで起業して以来、周りからは「 そんなに生き急がなくても 」とよく言われた。
生き急いでいるつもりはなかったけれど、“若くして成功すること” に対するこだわりはあったと思う。

早く、見返したかったから。中学時代のクラスメイトや教師たち、母方の祖父母ら、そして兄を。

早く、なりたかったから。母の自慢の娘に。

この三年間で、私は個人事業からサービスを立ち上げて、新聞で取り上げていただいて、テレビやラジオにも出演させていただいて、会社を設立して、出版もさせていただいた。

起業という道を経て本を書くというお仕事に出逢って、表現者で在りたい、作家一本で生きて行きたい、そう思って覚悟を決めた。
その矢先、母が死んだ。

生き急いで良かった、と思っている。
曲がりなりにも “起業家の娘” を、メディアに取り上げられている姿を、本を出すという活躍を見せられたと思うから。

けれど今、確かなことは、母が亡くなったことで失速しているということ。

モチベーションを失った、と形容することもできるけれど、どちらかと言うと「 原点に回帰している 」そんな気持ちがする。

私は何を、何の為に、いつまでに、どうしたいんだろう。

母という大きな光と原動力を失って、私のノートは白紙に戻った。

作家一本で生きて行きたいことは変わらない。
けれど、前のように急ぐ必要はないのかもしれない。

私は “若くして成功すること” へのこだわりを、今、この手から宙に放つ。

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